定着を妨げる2つのキーワード「賃金」と組織に対する負の感情「組織シニシズム」
DX推進にはITエンジニアが欠かせない。しかし、ITエンジニアの獲得競争は年々激化。さらに、「採用したいが、社内水準の賃金と合わない」「エンジニアに経営理念を浸透できない」といった人材マネジメントにおいても多くの課題が存在する。パーソル総合研究所では、ITエンジニアの就業意識について調査を実施。調査結果から、ITエンジニアの人材マネジメントにおける課題を整理するために、「賃金」と「組織シニシズム」の2つをキーワードとして挙げた。
まず、「賃金」について。調査により以下が明らかになった。
・希望の年収と実際の年収のギャップが大きく、他の職種と比較すると8.7万円も多くギャップを感じている
・年収が低いほど転職を考えている
つまり、ITエンジニアは年収と転職意向に相関関係があることがわかった。賃金に不満があると「外部」に視線が向きやすいといえる。
そして、もう1つのキーワード「組織シニシズム」について。組織シニシズムとは、組織に対する否定的な態度のことを言う。「会社が公正に扱ってくれない」「職場の人が冷ややかな態度だ」といった組織に対する負の感情を持つことで、組織とはたらく個人の心に距離が生まれている状態だ。調査によると、ITエンジニアは他の職種より組織シニシズムの高さが転職意向に強く影響することがわかった。ITエンジニアの組織シニシズムを高める要因は、大きく2つある。
(1)社内における立場の弱さ
他の組織からエンジニア組織が疎まれているように感じる、ロールモデルとなる上司・先輩の不在、他部門から無理難題を押しつけられる
(2)顧客に対する立場の弱さ
プロジェクトの一部にしか携わることができず、下請けの立場が多い、顧客の言いなりになってしまうことが多く、対等な関係になっていない
つまり、ITエンジニアは社内外の「ポジショニング」に敏感であるといえる。ITエンジニアの比率が低く、社内における立場が弱い、マネジメント・育成体制が整っていない組織では、組織シニシズムが高まり、結果転職に直結してしまう。
シニシズムが低い組織と高い組織の比較
