業界初のテナント採用支援。復興のシンボル「イオンモールいわき小名浜」開業における大規模人材発掘プロジェクト

人材派遣・採用支援 流通・小売 5,001名~

イオンモール株式会社様 / 業種:小売 / 設立:1911年

純粋持株会社イオン株式会社と国内外300を超える企業で構成されるイオングループの中核を担う商業ディベロッパーとして、グループのインキュベータ(起業に関する支援者)の役割を担われています。マーケット調査から企画・開発、テナント誘致、運営・管理に至るまでトータルで行い、2007年8月には、同じ商業を専業とするディベロッパーの(株)ダイヤモンドシティと合併し、新生イオンモールとして新たなスタートをきりました。国内ナンバーワン商業ディベロッパーとしての揺るぎない地位を確保し、「輝きのあるまちづくり」をコンセプトに、地域社会と一体となった“まちづくり型”の開発を展開しています。

2018年6月に開業した「イオンモールいわき小名浜」(福島県いわき市)は、イオンモール株式会社(以下、イオンモール)が運営・管理する、専門店数126店舗を有する福島県内最大規模のショッピングモールだ。同モールがある小名浜は、いわき市南部の海沿に位置し、水族館「アクアマリンふくしま」をはじめ、マリンスポーツや豊富な海産物も楽しめる県内有数の観光スポットであり、東日本大震災では町一帯が津波の被害を受けた地域でもある。「イオンモールいわき小名浜」は、地域の復興とにぎわいの創出、そして災害時に地域の人々を守る「防災モール」機能など、地域貢献の役割も担っている。

イオンモールでは「イオンモールいわき小名浜」の開業にあたり、パーソルグループ(以下、パーソル)との協業によるテナント店舗の人材採用支援プロジェクトを実施し、大きな成果をあげた。労働人口の縮小から、働き手の確保がテナント出店時に懸念となる中、イオンモールとパーソルは、出店するテナントの確定前から「イオンモールで働きたい人」を募集し、集まった人材情報をデータベース化して活用し、各テナントの人材採用を支援するという、業界初の試みにチャレンジした。

なぜイオンモールがテナントの人材採用支援を行うのか?

イオンモール株式会社 リーシング本部 新店統括部 リーシング企画部長 小林 純一氏は、今回のプロジェクトの背景について、次のように話す。
「イオンモールでは、年に数件のモールを新規に出店していますが、まず出店いただく専門店を誘致するテナントリーシングから始まります。しかし、近年では出店に慎重なお声をいただくことも多くなりました。理由としてはマーケットの変化などさまざまな要因がありますが、中でも“働き手を本当に確保できるのか?” という懸念が非常に大きいのです。全国的な人口減少と高齢化の中で、テナント企業の皆様にとってアルバイトを含む従業員の確保は大変難しく、オープニングスタッフはもとより、開店後もテナント企業の本部からのサポートで運営を賄うケースも珍しくありません」

いわき小名浜規模の新たなモールの開業には、1,000名以上の採用が必要になる。モール内に出店するテナントは、出店確定後、開業の3~4か月ほど前から各テナントが個別に人材の募集・採用を行うのが一般的だ。

イオンモール株式会社
リーシング本部 新店統括部 リーシング企画部長
小林 純一 氏

「同地域では震災以降、労働人口が大都市へ流出していることもあり、従来のやり方では、モール開業時にテナントの働き手を十分に確保できないのではないか、という懸念がありました。私たちのミッションは、リーシングという部署名が示す通り、モールに出店いただくテナントの皆様の課題や不安を解消することにあります。そこで、業界でも前例のないチャレンジングな試みではありますが、出店いただくテナントの人材確保という命題に、ディベロッパー自らが取り組むことを決意したのです」と小林氏は強調する。

イオンモールとパーソルの「人材データベース構築による採用支援プロジェクト」

イオンモールから相談を受けたパーソルホールディングス グループ営業本部の北本 裕史は、採用アウトソーシング(採用代行)、人材派遣/紹介、採用ホームページ構築、求人メディアなどグループ5社でプロジェクト体制を構築。綿密な現地調査を実施した上で、イオンモールに対する支援プログラムを立案し、提案した。

1)プロモーション支援 ・出店テナント確定前の時点から「イオンモールで働きたい、興味のある人材」の募集を実施
・告知用Webサイトの制作と運営、登録応募の受付、登録説明会の実施

2)人材データベースの構築
・1)で集まった人材の属性情報をデータベース化、イオンモールと情報共有
・属性情報:正社員/パートなど雇用形態、飲食/アパレルなど希望ショップジャンル、勤務可能日数、希望時間帯など(個人情報は除く)

3)テナント採用支援
・出店が決定した各テナント企業からの依頼を受け対応
・スカウティング、推薦、面接調整などの採用支援

イオンモール株式会社
リーシング本部 新店統括部
山田 和徳 氏

イオンモール株式会社 リーシング本部 新店統括部 山田和徳氏は、本プロジェクトについて次のように解説する。
「現地調査の結果から、遠方に働きに出ている若い世代の多くが年末年始を利用し帰省することがわかりました。そのため、2017年の11月頃から年末にかけて、求人広告掲載、求人向けWebサイト開設、登録説明会の開催を実施しました。出店する店舗をはじめその時期に、公表できる情報には限りがある中での募集でしたのでとても不安でした。パーソルとプロモーションの仕方などを協議しながら、多様な従業員特典や保育園完備などのイオンモールで働くメリットを主に訴求していきました。採用説明会も建設中の現地の近くで開催して、働くイメージを具体的に持っていただく点にも留意しました」

<イオンモールで働くメリット>
・多様な従業員特典
・通勤しやすい職場環境
・充実の従業員専用休憩室
・保育所完備
・生活スタイルに合わせた働き方
・研修や福利厚生も充実
・オープニングスタッフとして活躍

人材データベースの目標登録者数は500名。パーソルは苦戦することも想定し、以降も市の広報誌、求人誌への広告出稿や新聞への折り込みチラシ、近隣の大学内での告知など、さまざまな募集施策を準備していた。しかし結果は想定外に良いものだった。

人材データベースを早期構築、リーシングを加速

この2017年末のプロモーションは大きな反響を呼び、開始からわずか数カ月で人材データベースへの応募人数が目標の倍近くとなる1,000名を突破。そのため、広告など販促予算は当初想定より大幅に下回るという結果となった。

加えて、人材データベース登録者の属性情報も想定よりも理想的なものだった。山田氏は「実施前は比較的高齢の方が多いのでは、と想定していましたが、結果は20~30代の女性が全体の6割となりました。また、出勤可能日数も週4日以上が全体の7割と最も多く、希望のショップジャンルも偏りはありませんでした。加えて皆さん真剣に、そしてしっかりと働きたい意欲の高い、20~30代を中心に幅広い世代の方のご応募が集まるという結果でした。Webサイトでの申し込みから説明会へ来られる方の割合も、非常に高く推移していました」と評価する。

登録者の属性グラフ

このデータベースは、並行してイオンモールが行うリーシング活動にも活用され、約50のテナントが今回の採用支援の仕組みに参画。各テナントはそのデータベースを利用でき、依頼をすればパーソルがスカウティング、推薦、面接調整などの行ってくれるため、あとは面接日の指定や実際の面談を実施するだけでよく、人材確保の手間とコストを大幅に削減できるメリットがある。

小林氏も、もたらされた成果は大きかったと話す。「理想的なデータベースが早期に得られたことは、驚くと共に、嬉しかったですね。既に1,000名もの人材の登録ができているという事実は、出店を検討される専門店企業の皆様の不安を払拭し、出店を促す効果は非常に大きなものがありました。また、実際にこれだけ多くの方々が、この施設で働いてみたいという興味を寄せていただいていることは、我々にとって運営のモチベーションになりました。さらに、モール自体の認知度向上とマーケット創出にも寄与するという副次的効果もありました」

開業時の働き手の確保、という不安が払拭されたことも後押しとなって、テナントの出店も順調に進み、「イオンモールいわき小名浜」は予定通り2018年6月に開業。東北地方初出店13店舗、福島県初出店57店舗を含む、126の専門店を有する県内最大規模のショッピングモールとして、連日、多くの来店客で賑わいを見せている。

協業により生まれたイノベーション。今後も継続して実施を

山田氏は、今回のプロジェクトを次のように評価する。「両社にとって初の試みでしたが、パーソルさんは人材領域における豊富な知見とソリューションを有するパートナーとして一緒に仕事しやすかった、というのが率直な印象です。全国にある拠点網を生かし、現地での密着した支援をいただけた点もパーソルさんならでは、と感謝しています。我々が不慣れな人材採用という領域において、パーソルさんの持つ知見は非常に良い学びとなりましたし、開業を通じて、地域に貢献できたことは大きな成果です」

続けて小林氏もパーソルへの期待を語る。「パーソルさんは、我々と一緒にチャレンジして、共にイノベーションする、という意欲を高く持って取り組んでくれました。前例のない取り組みにも次から次にアイデアを出してくれる姿勢など、さすがパーソルさん、と感じた瞬間も多くありました。人材不足という課題は今後もともにタッグを組み、さらなる課題解決に取り組み、継続して実施していきたいと考えています。近々では埼玉県に開業するイオンモールでの実施を進めています」

全国的な労働人口の縮小の中、商業施設テナントの人材確保という難題に果敢に挑んだイオンモールとパーソルは、初の試みながら成果に確かな手ごたえを感じている。両社の協業の新たな展開に期待が高まる。

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