2021年11月11日
東洋炭素株式会社
“Inspiration for Innovation”をコーポレートスローガンに掲げ、半導体、自動車、宇宙航空、医療など最先端テクノロジー分野に幅広く利用されるカーボン製品のパイオニアメーカーとして世界トップシェアを誇る企業です。1974年に大型等方性黒鉛材料を量産化して以来、世界最大級の素材製造設備と、追随を許さない加工技術を武器に成長を続け、国内13拠点、海外子会社・関連会社16社を展開しています。
黒鉛・カーボン関連の幅広い製品を取り揃え、エレクトロニクス、環境・エネルギー、冶金など多様な産業分野に提供している東洋炭素株式会社。今回は、台湾における人事・組織面での課題と次世代リーダー育成の取り組みについて、東洋炭素株式会社 人事部部長の杉岡 誠氏と、同社の台湾法人である精工碳素股份有限公司 總經理の角田 秀樹氏にお話を伺いました。
東洋炭素株式会社 人事部部長
杉岡 誠 氏
精工碳素股份有限公司 總經理
角田 秀樹 氏
杉岡氏:当社は業界に先駆け量産化した「等方性黒鉛」をはじめとする特殊炭素製品の開発、製造、加工から販売までを一貫して内製で迅速に対応できる点が強みです。技術革新が進む半導体分野、環境にやさしい新エネルギー分野、精度を極める金型分野、高い信頼性を要求される原子力分野などのさまざまな産業分野で優位性が認められ、市場を拡大して来ました。現在も、独自の優れた高純度技術や各種コーティング技術との相乗効果により、リーディングカンパニーとして成長を続けています。
角田氏:お客様の需要に迅速かつ柔軟に対応するために、国内で製造した素材の在庫を一定程度持ち、台湾にてお客様のニーズに合わせて加工等の付加価値を加え、販売しています。地域に密着してニーズを正確に把握し、迅速かつ円滑な製品の提供により、お客様との共栄を図るのがミッションとなります。台湾拠点の従業員は約60名で、数名の日本人と現地採用の人員で構成しています。
角田氏:当社の事業はどの地域もそうですが、中でも台湾は世界でも最先端の工場が多く、成長スピードも非常に速い地域です。半導体など高い技術力を持ち、要求レベルも非常に高く、中小規模の企業では即断即決を求められるお客様企業が多いと感じます。また、お付き合いする業界も幅広い中で、お客様との対話でニーズを正確に把握し、社内の開発・製造部門に伝達するためには、高いコミュニケーション能力が求められます。加えて台湾の人々の特性として、離職率が高いことと報連相の意識が低いことが挙げられます。そのために個々のパフォーマンス向上だけではなく、チームを束ね、本社とも連携して事業を推進する組織力の向上も課題でした。
角田氏:パーソルが開催する無料セミナーに参加し、個別相談の場で社員教育プログラムの提案を受けました。本社の理解と協力も得られ、実施することに決めました。パーソルとはかねてから人材採用でお付き合いがありました。当社が求める日本語が堪能で業界に精通した方、そして少人数の組織でマルチに活躍いただける方といった要望に応えて、人材をご紹介いただいていました。
杉岡氏:本社としては全面的に協力する考えでした。海外の現地法人は地域性や成長度合いなどが異なり、抱えている課題もさまざまであり、グローバル一律での社員教育にはどうしても限界があります。グローバル企業としての統制はもちろん重要ですが、地域ごとに最適な教育プログラムを自発的に実施する意義は高いものがあると思います。
角田氏:管理職の約10名を対象とした、リーダーシップと部下の指導を学ぶ能力開発トレーニングです。実施前にDISC分析*を行い、各人の性格や期待される役割などを見える化した上で、その傾向を基に人材育成および部下のフォローと管理の「指導」、問題分析と解決の「改善」、部門外とのコミュニケーションの「関係」、業務内容の配分と責任、会社貢献の「業績」の4つのカリキュラムを2か月ずつ、約半年間かけて学んでもらっています。
*DISC分析:性格診断検査で広く用いられている手法。DISC性格類型検査により従業員が自分自身を理解し、自身の行動、社内コミュニケーションやパフォーマンス、リーダーシップスタイルの改善などに用いられる。
角田氏:前述の通り台湾は離職率が高い地域です。当社はお付き合いする業界も幅広く、少数精鋭ですので離職されると非常に大きなダメージとなります。さらに我々の事業ではお客様に寄り添い、声を拾い上げて提案していくために必要な幅広い知識を身に着けることはもちろん、お客様と将来に渡ってよりよいパートナーシップを築くための提案力も求められます。そこでまずは各ポジションのキーマンとなる次世代のリーダーを育成することで、組織全体のパフォーマンスを高め、維持向上することが狙いでした。
角田氏:参加者も当初は日々の多忙な業務に追われる中、長時間拘束されることに疑問を抱く部分もあったと思うのですが、いざ受講すると非常に前向きに参加してくれました。講師の方の人柄もあり、明るい雰囲気で取り組めるのは外部研修ならではの良さと感じました。
角田氏:今回の取り組みは本社が理解を示し、全面的に協力してくれたことが非常にありがたかったです。こういった研修で目標達成の意識であるとか、考え方のメソッドを学ぶことで組織としての共通理解が生まれ、拠点内だけでなく本社の開発部門との間など、組織内のさまざまな意思疎通がスムーズになる期待があります。また、外部研修を行うことが初めてでしたが、社員に対するインパクト効果はあったように思います。社員にも自分に投資してくれることで、会社から期待されていることが伝わったのではないでしょうか。まずは今回の研修でどのような成果が出るのか、しっかり検証してからではありますが、今後は他のポジションの社員にも展開していければと考えています。
杉岡氏:当社としては今回の台湾での取り組みを、他の拠点にも横展開したいと考えています。当社では海外拠点と本社側の人員が集う国際会議の開催など、グローバルで同じ方向を向いて事業を推進するためのさまざまな取り組みを行っていますが、海外拠点にはやはり現地でしかわからない事情がたくさんあります。そのため、本社からの押し付けではなく、自発的な取り組みを大事にしていきたい。パーソルにはこれからも、人数や成長度合いなど各現地法人のさまざまな事情に最適な、人材の採用と育成についての総合的な提案に期待しています。