2023年09月26日
2025年03月17日
IT全盛の時代であり、DX推進が盛んに叫ばれる昨今においては、企業にとって業務効率化や課題解決の手段としてのITツールやシステムの導入が欠かせません。しかし、システム開発・導入の流れや費用に関する知見が少ないことを理由に、外注に踏み切れない企業も多いのが現状です。
本記事では、システム開発の概要や主な開発手法、それぞれの特徴に加え、費用の相場や適切な外注先の選び方について詳しく解説します。
【お役立ち資料】DXをリードする人材育成のポイントとは?
あらゆる企業においてDXは不可欠となっていますが、DXを推進するための人材が不足している企業が多いため自社でDX人材を育成する企業が増えてきています。
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DX人材の育成・採用にお困りの方はぜひご活用ください。
目次
システム開発とは、デジタル技術によって特定の課題やニーズを解決する仕組みを構築することです。例えば、工数削減を目的とした会計システムの開発や、顧客データを一元管理できるシステムの開発などが挙げられます。
システムの開発方法には大きく分けて以下2つの方法があります。
スクラッチ開発は拡張性や自由度が高い反面、開発期間やコストがかかります。一方、パッケージ導入は比較的低コストかつ短期間で導入できるものの、カスタマイズの自由度には制限があります。
「システム開発=新規のシステムの構築」ではなく、目的や予算に合わせて最適な開発方法を選択することが重要です。
【お役立ち資料】業務効率化のためのノーコード開発活用BOOK
DXの入り口としておすすめなのが、ノーコード・ローコード開発によるバックオフィス業務のシステム構築です。本資料では、ポイントや事例について詳しく解説していますので、ぜひご活用ください。
システム開発は、以下のような工程で進められます。
要件の整理から設計、実装、運用に至るまで各工程が適切に管理されていなければ、完成後に不具合が発生したり、期待する機能が実現できなかったりと、運用でトラブルが発生するリスクがあります。そのため、各段階での綿密な計画と確認作業が重要です。
システム開発の最初のステップでは要件定義です。業務の課題や改善点を明確にし、システムで実現すべき機能や性能を決定します。この工程では、関係者へのヒアリングで必要な要件を整理し、システムの全体像を描くことが求められます。要件定義が曖昧だと、開発途中で仕様変更が発生し、コストやスケジュールに大きな影響を与える可能性があります。
要件定義を基に、システムの大まかな構成を設計するのが基本設計の工程です。画面のレイアウトやデータの流れ、外部システムとの連携など、システム全体の骨組みを決めます。この工程では、ユーザーがどのようにシステムを利用するかを考慮しながら、直感的で使いやすいユーザーインターフェース(UI)の設計を行います。
なお、設計内容が固まった段階で、基本設計書を作成します。記載する内容は、機能一覧、システム構成図、業務フロー、画面設計図、帳票設計書などです。
基本設計をより具体的に落とし込み、システム内部の処理やデータベースの設計、アルゴリズムの選定などを行います。この工程では、プログラムの仕様を詳細に記述し、開発者が実装しやすい状態にすることが目的です。システム内部を設計することから「内部設計」と呼ばれることもあります。設計が不十分だと、開発時に手戻りが発生し、プロジェクトの遅延につながる可能性があるので注意が必要です。
設計内容がある程度固まったら開発に向けて詳細設計書を作成します。これはシステム開発・構築を担当するエンジニアに向けて作成する「開発指示書」としての役割を果たします。詳細設計書には、クラス図、モジュール構成図、アクティビティ図、シーケンス図、テスト計画書などを盛り込むのが一般的です。
詳細設計に基づき、実際にプログラムを開発する工程です。システムの種類や開発者のスキルに応じてプログラミング言語を選定し、ソースコードを作成します。開発時には、誰が見てもわかるようにソースコードを整理しながら記述することが重要です。また、設計通りに動作するかを確認しながら進めることが求められます。
開発が完了したら、システムが仕様通りに動作するかを検証するテストを実施します。万が一、システムリリース後に重大なバグや故障が見つかるとユーザーに影響が出てしまうため、念入りにテストを行う必要があります。 この工程では、単体テスト、結合テスト、総合テスト、受け入れテストといった段階的なテストを行い、不具合がないかを確認します。特に、実際の利用環境を想定したテストを入念に行うことで、リリース後のトラブルを防げます。
システムを本番環境に導入し、業務で運用を開始すると、予期せぬトラブルが発生することがあるため、迅速に対応できる体制を整えることが重要です。加えて、システムは導入後も継続的なメンテナンスが必要となるため、機能の追加やセキュリティ対策といった保守作業によって、安全かつ安定した稼働を維持できます。
システムが機能し続けるよう監視・管理し、必要に応じて修正や改善を行うことで、システムの信頼性を高め、長期的な活用が可能になります。
システム開発には複数の手法があり、それぞれ特徴や適性があります。そのため、開発の目的や要件に応じて、自社に最も適した手法を選択することが重要です。
特に代表的な開発手法として「ウォーターフォール型」と「アジャイル型」があり、それぞれ対照的なアプローチを取ります。さらに、近年では「プロトタイピング」や「スパイラル」などの手法も注目されています。
ここからは、各手法の特徴や適用シーンについて解説します。
ウォーターフォール型は、伝統的なシステム開発の手法で、システムの完成形を最初に定義し、設計、開発、テスト、導入といった一連の開発工程を段階的に進行させる手法です。計画に沿って段階的に進めるため、進捗管理がしやすく、開発コストやスケジュールを事前に把握しやすいというメリットがあります。
この手法は、開発中に大きな仕様変更が生じにくい社内向けの基幹・業務システムの開発に適しています。また、内部統制にかかわる業務のように堅牢性が重視される場合や、計画通りに開発を進める必要性の高いプロジェクトに採用されるケースが多い傾向にあります。
ただし、ウォーターフォール型は一度決定した仕様の変更が難しく、開発途中での修正や追加対応が発生すると手戻りのコストが大きくなる点が課題です。トラブル発生時の手戻りに手間がかかるだけでなく、ユーザーの声を途中で反映させた仕様変更ができません。
なお、ウォーターフォール型では、明確に定められているプロジェクトの要件や範囲に基づいて成果物と納期を定めることが可能です。雇用形態としては、各成果物に対して報酬を設定する「請負契約」が一般的に採用されます。
アジャイル型は、短期間で開発とリリースを繰り返しながら、仕様を柔軟に調整する手法です。クライアントの要望や市場の変化に迅速に対応できるため、主にWebサービスやアプリ開発など、変化の激しい分野や社外向けのシステム開発に適しています。
しかし、アジャイル型は開発の柔軟性が高さが要因となり、プロジェクト範囲が膨らみやすく、コストや工数が想定以上に増えるリスクがあります。また、開発サイクルを頻繁に繰り返すことで、情報共有が疎かになったり、テストや品質保証が十分でなかったりする場合もあるので注意が必要です。こうしたトラブルを防ぐためには、発注側がプロジェクトマネジメントを行い、テストや品質保証に積極的に関与することが求められます。
そのため、契約形態としては、仕様変更などによる業務の追加に柔軟に対応できるよう、作業時間に応じて報酬が発生する「準委任契約」が多く採用されます。
プロトタイピングとは、完成前に試作(プロトタイプ)を作成し、ユーザーのフィードバックを得ながら開発を進める手法です。実際の画面や機能を試しながら仕様を決めて検証と修正を繰り返すため、最終的なイメージを共有しやすく、開発途中での認識のズレを防げます。特に、要件が明確でない新規システムの開発や、ユーザーインターフェース(UI)の設計を重視するプロジェクトに適しています。
ただし、試作を繰り返すことで開発期間が長引いたり、コストが増加したりする可能性があるため、適用範囲を慎重に見極めましょう。
スパイラルモデルは、ウォーターフォール型とアジャイル型の中間的な開発手法です。システムを工程ごとに開発し、その都度依頼側へ試作品を納品することで、段階的に改良を加えながら全体の完成を目指します。開発の各フェーズでリスク分析を行い、必要に応じて仕様変更を加えるため、品質を確保しながら柔軟な開発が可能です。大規模システムや、要件の変更が想定されるプロジェクトに適しています。
ただし、管理が複雑になりやすく、開発工程が長期化する可能性があるため、適切なマネジメントが求められます。
システム開発といっても、開発可能なシステムは多岐にわたります。大別すると、社内業務を支援する「社内システム」と、顧客向けの「社外向けシステム」の2種類です。さらに社内システムは、企業の中核業務を担う「基幹システム」と、特定の業務をサポートする「業務システム」に分類できます。
利用者 | システムの種類 | 概要 | システム例 |
---|---|---|---|
社内 | 基幹システム | 企業の主要業務を支える中心的なシステム。データの一元管理や主要な業務フローを担う | ERPシステム、会計システム、人事システムなど |
業務システム | 特定の業務を支えるシステム。タスクごとの個別的なニーズに対応する | 顧客管理システム、ワークフローシステム、コミュニケーションツールなど | |
社外 | ユーザー向けシステム | 自社外のユーザー(顧客)が使用することを前提にしたシステム | ECサイト、EDIなど |
基幹システムは、会計、人事、販売、生産管理など、企業の経営や業務運営の中核的を支えるシステムを指します。代表的なものには、ERP(Enterprise Resource Planning)があり、販売・在庫・製造・財務などのデータを一元管理することで、業務効率化や迅速な意思決定を可能にします。部門ごとに管理されていたデータを統合することで、全社の状況把握や情報共有を促進します。
一方、業務システムは企業の特定の業務を効率化するためのシステムです。例えば、顧客管理システム(CRM)、ワークフローシステム、社内コミュニケーションツールなどがあり、部門ごとの業務プロセスを最適化する目的で導入されます。
どちらのシステムも、自社の従業員がユーザーとして想定され、社内業務の効率化と安定運用が求められるため、信頼性の高い設計が必要です。開発には、パッケージソフトの導入やカスタマイズが多く採用されるほか、レガシーシステムのモダナイゼーション(マイグレーション)によって最新の環境へ移行するケースも増えています。
また、長期運用を前提とするため、開発手法はウォーターフォール型が適していることが多く、デザインより機能性を重視する傾向があります。近年では、「ローコード」や「ノーコード」開発を活用し、エンジニア以外の担当者でも簡易的なシステム構築を行うことがあります。
【お役立ち資料】業務効率化のためのノーコード開発活用BOOK
DXの入り口としておすすめなのが、ノーコード・ローコード開発によるバックオフィス業務のシステム構築です。本資料では、ポイントや事例について詳しく解説していますので、ぜひご活用ください。
【関連記事】ローコード開発とは?メリット・デメリット・ノーコードとの違いを解説
ユーザー向けシステムは、社外の顧客が利用することを前提に開発されるシステムで、ECサイトやスマホアプリ、Webサービスなどが代表的な例として挙げられます。
対外的なサービスとして提供する以上、ユーザー向けシステムは企業のブランドイメージやユーザー体験(UX)に直結するため、デザイン(UI)や利便性の追求が欠かせません。特に、使いやすいさや視認性、捜査の直感性などが、サービスの利用率や売り上げに大きな影響を与えます。
ユーザー向けシステムは、利便性やデザインなど、ユーザーの購買意欲を促進するポイントを考慮した上での設計が求められます。そのため、開発時には市場の変化や顧客ニーズに柔軟に対応できるアジャイル型が多く採用されます。プロトタイピングを活用し、ユーザーテストを重ねながら機能改善を進める手法も採用されます。また、開発後も継続的なアップデートや保守が重要となるため、運用フェーズを見据えた設計を行うことが大切です。
システム開発を検討する際、開発期間や費用相場がどれくらいかかるかは重要なポイントです。しかし、開発コストやスケジュールは一律ではなく、企業の規模や要件、システムの複雑さなどによって大きく異なります。
具体的な例として、社内に新しく会計システムを導入する場合を考えてみましょう。従業員100名以下の小規模企業であれば、既存のSaaSやパッケージ製品を利用することで、50万円程度の費用でシステム導入を完了できるケースもあります。この場合、カスタマイズ不要であれば短期間での導入・運用が可能です。
一方、大手上場企業のように多くの従業員を抱える企業では、必要な機能やデータ管理の規模が大きくなるため、1億円以上の開発費がかかることも珍しくありません。これは、部署ごとに異なる業務フローを統一する必要があり、システムのカスタマイズや追加機能の開発が不可欠になるためです。プロジェクトの規模によっては、開発に年単位の時間を要する場合もあります。
システム開発の予算を検討する際には、企業の年間売上に対するIT投資の割合を参考にする方法があります。業界や企業規模によって異なりますが、一般的な目安として年間売上高の1%~2%がIT投資に充てられる傾向があります。ただし、近年のDX推進やデジタル化の加速に伴い、この比率は上昇傾向にあります。
【調査レポート】ITツール導入・活用に関する実態調査
パーソルグループではツール導入に携わる1,000名を対象にITツールの実態調査を行いました。ITツールの導入予算から課題、導入後の効果などレポートで詳しく紹介していますので、ぜひご活用ください。
システムを内製するのが難しい場合は、外注を活用する必要があります。既存のITベンダーがいる場合は、複数の企業から提案を受け、比較検討するのが一般的です。しかし、新たに外注先を探す場合には、以下の方法が選択肢として考えられます。
それぞれの方法には特徴があり、単独で選ぶのではなく組み合わせて活用することで、有望な候補を効率的に見つけられるでしょう。選定の際は、単なるコストや技術力だけでなく、長期的に良好な信頼関係を築けそうな会社を選ぶことが大切です。
手軽な方法としておすすめなのが、システム開発専門のマッチングサイトの活用です。予算や開発内容に応じた開発会社を検索でき、さらに諸条件にあわせて、自社に適した開発会社を紹介してくれます。また、マッチングサイトには数多くの開発会社が登録しているので、登録情報を比較したり、相見積もりを取ったりすることで、自社の要件に適した開発会社を効率的に絞り込めるのがメリットです。不動産サイトや転職サイトのように、条件を指定して候補を探せるマッチングサイトを連想すると、分かりやすいかもしれません。
複数のシステム開発会社が参加する展示会や交流イベントに参加するのもひとつの方法です。こうしたイベントでは、開発会社の担当者と直接対話できるため、会社の雰囲気や対応力を肌で感じられるのがメリットといえます。ただし、会場では多くの企業が出展している場合があり、その場で自社に最適な企業を見極めるのは容易ではありません。あらかじめ出展企業の情報をリサーチし、候補を絞ってから参加すると、より効率的に選定を進められます。
信頼できる取引先や知人から紹介を受けるのも有効な手段です。特に、自社と同じ業界やビジネスモデルの企業からの紹介であれば、要件にマッチする開発会社と出会える可能性が高くなります。また、実際に開発を依頼した経験のある企業の意見は、単なるネット上の評判よりも信頼性が高いでしょう。ただし、紹介経由だと選択肢が限られるため、ほかの方法と併用しながら慎重に検討することが重要です。
システム開発・導入を検討する際、重要なのは「目的ではなく手段である」と意識することです。
「システムが古くなってきたから新しくしよう」「DXやAIが話題だから何かツールを導入しよう」といった理由でシステム開発を進めると、本来の目的を見失い、期待した成果につながらない可能性があります。結果、導入したものの活用しきれず、かえって管理コストが増大するなど、費用対効果の悪い投資となるケースも少なくありません。
そのため、システム開発の依頼を検討する前に、まずは社内で「本当に新しいシステムが必要なのか?」と議論しましょう。現在ではSaaSの普及により、多くの業務領域を既存のサービスでカバーできます。また、システムを新たに開発するのではなく、既存の業務プロセスを最適化するだけで十分な効果が得られる場合もあります。
システム開発を検討する際には、単に新技術やトレンドに飛びつくのではなく、自社の課題を正しく把握し、本当に必要な解決策を選択することが不可欠です。
【お役立ち資料】DXをリードする人材育成のポイントとは?
あらゆる企業においてDXは不可欠となっていますが、DXを推進するための人材が不足している企業が多いため自社でDX人材を育成する企業が増えてきています。
・DX人材を育成する環境を整えたい
・どのようにDX人材育成を進めるか知りたい
そのような方に向けて、DXをリードする人材育成のポイントについてまとめた資料を公開しています。
DX人材の育成・採用にお困りの方はぜひご活用ください。
システム開発を成功させるには、企業規模や目的に応じて適切な手法を選ぶ必要があります。開発するシステムの種類はもちろん、開発手法の選択、外注先の選定など、自社の状況や要件に応じた判断が求められます。
システム開発は、単なるツールの導入ではなく、ビジネスの成長や業務の最適化を実現する手段です。目的を明確にし、適切なプロセスを踏むことで、IT活用の効果を最大限に引き出し、組織の活性化につなげましょう。
パーソルプロセス&テクノロジー株式会社
システムソリューション事業部
営業部 ゼネラルマネージャー
福山 健一郎
2009年、パーソルプロセス&テクノロジー株式会社の前身にあたる会社へ新卒入社。SEとして顧客課題解決に従事したのち、ソリューション営業へ転身。2010年よりパーソルGのシステムソリューションを範囲とした営業責任者として従事。「ITは課題解決の手段にすぎず、本質的なお客様の課題を解決する」をモットーとして、多くのお客様のDX化・IT課題解決を実現。