社外取締役の確保とその活用戦略を問う

株式会社日本総合研究所様 / 業種:システムインテグレーション・コンサルティング・シンクタンク / 設立:1969年

シンクタンク・コンサルティング・ITソリューションの3つの機能を有する総合情報サービス企業。「新たな顧客価値の共創」を基本理念とし、課題の発見、問題解決のための具体的な提案およびその実行支援を行う。また、個々のソリューションを通じて、広く経済・社会全体に新たな価値を創出していく「知識エンジニアリング」活動を、事業の基本としている。

創立来50年にわたって培ってきたITを基盤とする戦略的情報システムの企画・構築、アウトソーシングサービスの提供をはじめ、経営戦略・行政改革等のコンサルティング、内外経済の調査分析・政策提言等の発信、新たな事業の創出を行うインキュベーションなど、多岐にわたる企業活動を展開している。

【特別対談】コーポレートガバナンス強化に向けた企業の葛藤

2015年度に施行されたコーポレートガバナンス・コードでは、一定数の社外取締役を起用することが求められているが、多くの上場企業がこの社外取締役について量的・質的な確保に苦慮している。コーポレートガバナンス関連での政策提言とリサーチ・コンサルティングを手掛ける日本総合研究所と、経営幹部の人材紹介をはじめとする総合人材サービスを担うパーソルホールディングスのトップにそれぞれの観点から、今後の展望と解決策を語ってもらった。

コーポレートガバナンス(CG)が重要視される中で、企業サイドの対応はどのような状況でしょうか。

株式会社日本総合研究所
代表取締役社長
渕崎 正弘氏

渕崎氏:企業のガバナンス対応の状況を一言で言うと「葛藤」という言葉に尽きると思います。各社ともCGコードの趣旨は理解しているものの、制度自体が欧米を範としているため従来の日本型の経営との間にギャップが存在することに原因があると思われます。

欧米型の仕組みは、経営人材の流動性が高く、執行を担うプロの経営者を中立な立場の社外取締役が監督するという構造が前提条件となっています。それに対し、日本企業の場合は、内部昇格を主体とした取締役が中心の体制となっています。

このギャップにより、日本では取締役会に実質的な監督機能を付すことが難しい現状にあります。さらに、日本の場合、監督の内容は統制やけん制が主となり、企業価値向上の議論といった、いわゆる「攻め」の観点が薄いということも言えます。

パーソルホールディングス株式会社
代表取締役社長 CEO
水田 正道

水田:CGコードは、社外取締役の人数として最低2人、望ましい水準として取締役の3分の1を掲げています。機関投資家や議決権行使助言会社の中にはこの人数要件だけで企業のガバナンスレベルを形式的に判断するケースもあるようです。

弊社も社外取締役を任用したことで取締役会での議論がより緊張感を伴ったものとなり、社外取締役を活用する意義はよく理解しているつもりですが、日本全体で約4000社ある上場企業が全てCGコードの要件を満たそうとすると、社外取締役は圧倒的に不足してしまいます。

攻めのガバナンスを担う社外取締役人材の不足が顕著

渕崎氏:ガバナンス改革の端緒は「執行と監督の分離」にありますが、それを実現するためには、まず社外取締役の量的な確保と、質的な向上を進める必要があります。

量的な課題については、直近の調査において複数の社外取締役を置く上場企業が9割を超えるなど前進してはいますが、社外取締役の独立性や、役割に応じた多様性、複数社を兼務している社外取締役が多いという状況を考えると、質を伴った量の確保という面ではまだまだ十分ではないと思われます。

単に形式的な要件を満たすだけでなく、実質を伴ったガバナンス改革を行うには、質的側面を考慮した社外取締役を選任することが大事です。

水田:弊社は総合人材サービスを担う企業グループですが、質と量の両面から社外取締役をどう確保するかというニーズは確実に増加していると実感しています。特に、中堅や地方の上場企業、IPO(新規株式公開)して間もない企業からは、切実な問題として相談を受けることが増えています。

具体的には、会計や財務、法務などのバックグラウンドを主体に「守り」のガバナンスを担う人材もさることながら、特に渕崎さんが指摘された「攻め」のガバナンスを担う人材へのニーズも高く、これらの人材の不足が顕著になりつつあります。

良質な社外取締役を確保するための企業間競争が今後激しくなりそうです。

渕崎氏:まさしくその通りだと思います。社外取締役には、企業経営の経験があることが望ましく、さらには指名・報酬委員会などを担う社外取締役はそれなりの見識が必要です。

これらの人材を早期に確保するためには、企業サイドでも、あらかじめ社外取締役の「要件定義」を行う必要があります。社外取締役といっても監査等委員や指名・報酬委員など、さまざまな役割が存在し、それぞれに必要な権限と責任が付与されます。これらを踏まえて、どのようなバックグラウンドを持った人材が適切なのか、会社として明確なイメージを持つことが重要なのです。

実際のマッチングにおいては、これらの「要件定義」に基づいた期待役割と責任範囲、そして報酬水準などの条件を示すことになります。

約1万人の登録者の中から要件定義に見合う人材を紹介

労力をかけて確保した社外取締役に期待役割を果たしてもらうために、企業サイドとしてすべきことは何ですか。

渕崎氏:ガバナンス重視の時代において、社外取締役がその役割を果たすためには、社外取締役に対して業務に必要な情報を適切なタイミングで提供することや、社外取締役間の連携を支援するなどのサポート体制を構築することが欠かせません。

特に監査等委員を担っていただく社外取締役が限られた時間の中でその役責を果たしていくためには、内部監査部門とのより緊密な連携が必要になると言えるでしょう。また、期待役割に対しての適切なフィードバックを実施することも、優れた社外取締役として定着いただくために重要なプロセスだと思われます。

水田:さらには、社外取締役に現場を見てもらう機会を設けることも大切です。

取締役会に出席しているだけでは企業の経営実態は分かりません。実態を肌で感じなければ企業の中で起きている異変に気付くことはできませんし、「攻め」のために自信を持って背中を押すこともできません。

ガバナンス強化に向けて社外取締役を戦略的に活用するためには、入念な人材の「要件定義」と、受け入れ態勢の構築が重要であることが理解できました。
両社はこの分野での提携を発表されましたが、今後どのようなソリューションを提供していく予定ですか。

水田:日本総合研究所と弊社は9月27日、社外役員(社外取締役・監査役)の提供サービスに対する業務提携の覚書を締結しました。具体的には日本総合研究所のCG関係のリサーチ・コンサルティングで蓄積したノウハウをベースに、社外役員の「要件定義」と受け入れ態勢の整備を進めるとともに、検討した「要件定義」に基づいて弊社が提供する高度人材サービスのプラットフォームである「HiPro Biz」を活用した「HiPro Biz独立役員紹介サービス」をご利用いただくことで、よりニーズにマッチする候補者を提示いたします。

パーソルグループ全体では約850万人の求職登録者があり、「HiPro Biz」だけでも登録者数は約1万人、取引社数は約1700社に上ります。「要件定義」に見合う社外取締役候補者をご紹介することで、上場企業のガバナンス強化のお役に立ちたいと考えています。

【出典】ダイヤモンド・オンライン(2018年10月15日公開)より転載

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