人事データがもたらす組織イノベーション

人材・組織 人事

近年、人事の領域でも注目が高まっている「データの活用」。テクノロジーの発展により、人事の業務においても、データを使い、業務の効率化や成果アップにつなげられることが分かってきました。さらに、社会とビジネス環境の急速な変化にともない、人事の役割は、個々の人材が能力を最大限に発揮し活躍できる状況をつくり出すことで経営に貢献するといった、より戦略的な方向にシフトしてきています。こうした背景から今、注目されている人事の「データ活用」について、具体的な手法やメリットなどを見ていきます。

人事領域における「データ活用」とは

人事データとは、企業の持つ人材にまつわるすべてのデータです。社員の氏名や学歴、所属や給与情報といった基本的な情報から、その人のスキル、これまでの業績に加え、適性検査や360度評価など何らかの目的のために収集された情報などが含まれます。

 
(表1:テンプナレッジマガジンvol.79『人事データを課題解決に活かす』参照)

これに加え、近年のテクノロジーの進化により可能になったウエアラブルセンサー、映像などを通して得たデータなど人事データは、今後も多様化していくことが考えられます。

人事データ、どう活用する?

それでは、実際に人事データを活用してどのようなことができるのでしょうか。最近の人事課題のトレンドに応じていくつか紹介します。

1.採用

自社にマッチした、活躍できる人材を採用したい――今、多くの企業で持たれている課題です。そんな時、人事データがそろっていれば、現在、社内に在籍しているハイパフォーマーのデータを分析し、「活躍している人」とはどんな特徴を持った人物なのか、なぜ、活躍できているのか、採用時にどんな特徴を示していたのか、といったことを分析できます。それにより、採用すべき人物要件を明確化し、採用精度を向上させることができるのです。このように、それぞれの企業の考える「活躍する人材とは?」という根源的なテーマに対して、データを活用するメリットがあります。

2.離職防止

上記であげたハイパフォーマー分析と同様に、「辞めていく人はどのような人か」をデータから読み取り、傾向を掴むこともできます。データが活用できれば、実際に人が「退職」という行動をとる前に表われる特徴、前兆やサインのようなものを事前に把握することも可能になるでしょう。そうすれば新たな離職“予備軍”を見つけ出し、ケアに当たることで実際に離職が起きる前に防止する、といった取り組みにつなげることができます。具体的には、勤怠情報や、適性検査などのデータが用いられますが、在籍者と違って退職者のデータは揃えるのが難しい点が課題になります。

3.適所適材配置

データを使わず、人の直感を頼りに、その人の適性をどこまで正確に見極められているでしょうか?複合的なデータの活用はバイアスのかからない客観性、公平性をもたらします。これまでの日本企業に多かった玉突き人事ではなく、その人の能力が最大に発揮され、組織のパフォーマンスにつながる、戦略的な人事。つまり“適所適材”といった配置のためにも、データは欠かせないのです。データを用いることで、あるポジションでは振るわなかった人材が、配置換えにより目を見張るような成果を上げることは珍しくありません。

4.人材育成

様々ある人事データが一元的に紐づけられ、データベースで一元管理されていれば、従業員の実績やキャリアプランなどが一望でき、一人ひとりに必要な研修、能力開発を個々に実施することができます。また、従来は、研修などの実施後の効果測定は行われないことが多かったですが、研修後のデータを実施前後で比較することで、一人ひとりに合わせたより適切な育成プランを検討することができます。

以上のことから、人事業務のデータ活用で見込まれる効果には次のようなことがあると言えます。

【人事におけるデータ活用のメリット】

  1. 現状を正しく把握できる
  2. 属人的でない客観的、合理的、公平な判断ができる
  3. 従業員一人ひとりに合わせた育成プランを立てることができる

組織運営にあたって「採用すべき人物像」「離職者の兆候」「研修受講とその後のパフォーマンスの因果関係」など、人材のポイントとなる事象をデータ化して適切に認識しておくことは、今後の対策や改善策を練るためには必要不可欠となります。また、評価や人事異動の決定プロセスに透明性が高まり、社員の納得感が得られることにより、モチベーションやエンゲージメントの向上にもつながります。人事業務のデータ活用によって、このような複合的なメリットが見込まれるのです。

人事データの活用は人事領域にとどまらない

実は、人事データは、人事部門以外にも活用するメリットがあります。
例えば、経営層が人事部門と共有している人材への課題――優秀な人材を確保し続けること、経営幹部候補の発掘、働き方改革など――について、必要なデータを必要な時に見ることができれば、意思決定のスピードアップにつながります。また、現場とデータを共有することで、現場でのマネジメントの改善が見込まれ、離職防止や人材育成に活かすことができます。人事にとっては、現場の状況をモニタリングすることで、これまでは現場止まりになっていて、吸い上げられていなかった情報を収集することにも役立ちます。

 
(表2:テンプナレッジマガジンvol.79『人事データを課題解決に活かす』参照)

個人情報の塊である人事データは、セキュリティ上、「どのデータを、誰に対して公開するか」といった線引きが、必須になります。しかし、公開可能なデータに関しては共有をすることで、組織を横断した人事データの利活用ができるという非常に大きなメリットがあります。また、人事データを人事部門だけで運用するのでなく、それぞれの役割に応じたデータのアウトプットとインプットがシステム的に統合されることにより、データの蓄積量は増え、データ分析の精度をより高めていく循環が生まれます。

人材をマネジメントする意義

これまで見てきたように、経営資源としての「人」の価値が高まっている現代、人材一人ひとりのスキルや経歴、特性、キャリア志向、モチベーションや健康状態など、その人の持つあらゆる情報を勘案することが大切になってきています。そういった一人ひとりに沿ったマネジメントにより、パフォーマンスを最大化させ、成長できる機会を与え、長きにわたって活躍してもらえるような人材・組織マネジメントを行うことは、自社の事業戦略の実現に非常に重要な役割を担っているのです。こうした、戦略的で効率的な人事活動を行う手段として、人事データを活用するというアプローチは非常に有効だと考えられます。また、最近では、こうした人事データの組織横断的な活用とカスタマイズされた人事・組織マネジメントを行うための「タレントマネジメントシステム」というシステムにも注目が高まっています。

*パーソル大企業向け「タレントマネジメントシステム」

https://rc.persol-group.co.jp/hito-talent/

人事データを活用するためには、ただ単にデータを集め、集結すれば済むという話ではありません。なぜなら、データを活用するのは、戦略的な人材マネジメントを行い、組織経営に貢献することが目的だからです。目的のないデータ管理を人事部門だけの閉じた領域で行なっても人事管理の域を出ることはありません。
人事データを目的に沿って使えるようデータを収集し、一元的な管理システムを構築することは労力もコストもかかることです。しかし、これからの時代、人事データはいかにあるべきかを考え、上流から一体となって取り組むことが、企業の成長を支え、競争優位性を左右するポイントとなるのではないでしょうか。

<参考>

特別号『HITO REPORT 』VOL.3(2018年)
https://rc.persol-group.co.jp/research/hito/hito-report3.html

『HITO』vol.10(2016年)
https://rc.persol-group.co.jp/research/hito/hito10.html

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