「紙」と「ハンコ」がキーワード。法務のテレワークはデジタル化で推進

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2020年からのコロナ禍で、テレワークを急ぎ導入することになった企業が多かったと思われます。しかし、テレワークを実際に経験し、「法務のテレワークは難しい」と感じた法務担当者は多いのではないでしょうか。この記事では、法務のテレワークの課題と解決のためのポイントを解説します。

目次

テレワーク導入の壁は、法務と関連深い「紙」と「ハンコ」

新型コロナウイルス感染拡大に伴い、多くの企業がテレワークを導入しました。内閣府の調査によると、地域や業種で差はありますが、定期/不定期にかかわらずテレワークを導入した企業は、全国平均で3割近くになりました。

地域別 テレワーク実施状況

 

【出典】内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」

業種別 テレワーク実施状況

 

【出典】内閣府「新型コロナウイルス感染症の影響下における生活意識・行動の変化に関する調査」

実際にテレワークを経験し、どのようなことがテレワークの定着・拡大に必要と感じたか。東京都が2020年9月に行った「テレワーク導入実態調査」では、「ペーパーレス、はんこレスなどの決裁の社内手続きの簡素化」や「コミュニケーションツールの導入・充実」が上位となりました。

テレワークの定着・拡大のために必要なこと

 

【出典】「東京都 テレワーク導入実態調査」

会社に届く、もしくは会社から送付する紙書類の処理や対応は、テレワークを阻む大きな要因です。ハンコも同様に、テレワークの阻害要因として挙げられています。

本調査は法務担当者に限ったものではありませんが、押印と法務は切っても切り離せない関係にあります。紙にまつわる問題も、法務業務に大きく関係します。過去の契約書などの資料確認は業務を進める上で欠かせませんが、紙で保存されていたり、データ化されていても社内閲覧しかできなかったりすることも多数。リーガルリサーチにおいても、紙資料に頼る場面は多々あります。

調査では、「コミュニケーションツールの導入・充実(Web会議ツール、チャットツールなど)」も、テレワーク定着・拡大の重要な要素に挙げられています。社内外との折衝や交渉も、業務を進める際には不可欠です。これらを対面と変わらない品質で行えるかは、法務担当者の気になるところでしょう。

テレワークで可能な業務はありつつも、「スムーズかつストレスのない業務遂行のためには、出社を前提にせざるを得ない」。それが法務担当者の本音なのではないでしょうか。

法務担当者のテレワークを阻む4つの壁とは?

法務担当者のテレワーク実施を困難にする大きな要素は、以下の4点です。

(1)押印
(2)契約書類の社外への持ち出し禁止
(3)会社にある参照情報が活用できない
(4)社内外とのコミュニケーションが取りづらい

それぞれについて解説します。

(1)押印

押印は法務担当者のテレワーク実施において、最も大きな壁といえるでしょう。しかし、2020年6月、政府は契約書などの文書の押印について、「特段の定めがある場合を除き要件としない。押印しなくても契約の効力に影響は生じない」との見解を示しました。

そもそも、法的には押印がなくても契約は成立します。しかし、契約成立を客観的に証明し、のちの訴訟リスクを減らすという点で押印は安心材料であり、その慣習は根強いものです。社内においても、各種申請や決済に押印を義務付けているケースは多くあります。この慣習の見直しは日本全体で課題になっています。

(2)契約書類の社外への持ち出し禁止

契約書には重要な企業情報が盛り込まれています。紛失や盗難などによる情報漏洩、誤廃棄といったリスクをなくすため、社外への持ち出しや閲覧を全面的に禁止している企業も少なくありません。

また、持ち出しに関する規定がそもそも存在しないということがあります。そうなると、出社して業務にあたる以外に選択肢はありません。

契約書類の社外への持ち出しは、セキュリティとコンプライアンスの両面でリスクの高い行為です。持ち出すのではなく自分が出社した方が安心、と思う担当者も多いのではないでしょうか。

(3)会社にある参照情報が活用できない

法務の業務遂行にあたって、どのような法律が関係してくるのか、どのような解釈がなされてきたのかを広く詳しく知るためには、専門書や過去の判例など、さまざまな書籍や資料、文献の参照が欠かせません。インターネット上で多くの情報が手に入る時代ですが、欲しい情報が必ずしも存在しているとは限りません。

では、書籍や資料の持ち帰りが可能であれば自宅で作業ができるのでしょうか。できそうにも感じられますが、複数人が同じ書籍を必要とした場合、また、追加の資料が必要になった場合には、結局会社に出向くということになるでしょう。そうなると、出社して仕事をした方が効率的、という考えに至ってしまうのではないでしょうか。

(4)社内外とのコミュニケーションが取りづらい

簡単な打ち合わせはWeb会議ツールなどの各種コミュニケーションツールで可能になってきました。しかし、交渉事など、微妙なニュアンスが大事になってくる場面では、対面でのコミュニケーションで綿密に進めたいところです。また、後身の育成を行う際にも、対面の方が細やかに指導できることが多いでしょう。

法務担当者注目の、便利なデジタルサービス

従来通りの業務進行の場合、テレワークでの法務業務は確かに困難といえます。しかし、テレワークへと移行している企業があるのも事実です。

法務担当者のテレワーク実現に欠かせないのが、「デジタルツール・サービスの活用」です。デジタル化で紙とハンコでのアナログ業務を減らすことができれば、自宅でできる作業が増えます。

契約書作成、押印の悩みは……「電子契約サービス」で解消!

「電子契約サービス」とは、契約書自体をサービス上で作成、閲覧できるサービスです。押印の代わりに、電子署名や電子証明書、タイムスタンプ、不可視署名などさまざまな手段、契約を締結できます。法務担当者がテレワークを行う上では必須のサービスといえるでしょう。

法務担当者以外の社内関係者が書類を確認することも可能で、ペーパーレス化と情報共有を一度に推進する手段にもなり得ます。

導入時に気になるのが、電子契約の法的効力です。2000年に制定、2001年4月に施行された「電子署名及び認証業務に関する法律」、いわゆる「電子署名法」の第二条、第三条には、以下のように記載されています。

電子署名及び認証業務に関する法律

第二条 この法律において「電子署名」とは、電磁的記録(電子的方式、磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない方式で作られる記録であって、電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下同じ。)に記録することができる情報について行われる措置であって、次の要件のいずれにも該当するものをいう。
一 当該情報が当該措置を行った者の作成に係るものであることを示すためのものであること。
二 当該情報について改変が行われていないかどうかを確認することができるものであること。
2 この法律において「認証業務」とは、自らが行う電子署名についてその業務を利用する者(以下「利用者」という。)その他の者の求めに応じ、当該利用者が電子署名を行ったものであることを確認するために用いられる事項が当該利用者に係るものであることを証明する業務をいう。
3 この法律において「特定認証業務」とは、電子署名のうち、その方式に応じて本人だけが行うことができるものとして主務省令で定める基準に適合するものについて行われる認証業務をいう。

第三条 電磁的記録であって情報を表すために作成されたもの(公務員が職務上作成したものを除く。)は、当該電磁的記録に記録された情報について本人による電子署名(これを行うために必要な符号及び物件を適正に管理することにより、本人だけが行うことができることとなるものに限る。)が行われているときは、真正に成立したものと推定する。

【出典】「e-Govポータル 電子署名及び認証業務に関する法律」

さらに、政府は「押印についてのQ&A」の中で、「文書の成立の真正を証明する手段」として、電子署名について以下の見解を示しています。

文書の成立の真正を証明する手段

電子署名や電子認証サービスの活用
(利用時のログインID・日時や、認証結果などを記録・保存できるサービスを含む)

【出典】内閣府 法務省 経済産業省「押印についてのQ&A」

このように、契約の成立を証明する手段はいくつかあり、電子契約サービスもその一つに含まれるため、安心して利用することができます。
ただし、電子契約サービスは、提供会社により、扱うことのできる契約書の種類、署名の種類が異なります。選定時にはいくつかのサービスを比較検討し、自社にあったものを選ぶことが大切です。また、セキュリティ面が担保されているかも、必ずチェックしましょう。

紙資料の閲覧、共有についての悩みは……「文書管理サービス」で解消!

各種書類などをデジタル化して管理するのが「文書管理サービス」です。クラウド型のサービスであれば、いつでも、どこからでも、社内資料を確認することができます。

悩ましいのは、これまでに溜まった社内の紙資料の扱いですが、なかには紙資料をPDF化する際に、すれて見えにくい文字もデータ化し、文書をテキスト検索で探すことができるサービスもあります。最初は書類のデジタル化に時間と労力を使うことになりますが、一度行ってしまえば社内資料の検索性・総覧性が高まり、ペーパーレス化が一気に進むでしょう。

こちらも、さまざまなサービスが登場していますので、使い勝手やセキュリティなどを比較しながら選びましょう。

参考資料が見られない問題は……「書籍閲覧サービス」で解消!

法律分野に特化して、書籍などを公開するサービスが登場してきています。有料利用となりますが、サービスによっては、絶版本を読むことができたり、参考文献となった書籍を簡単探すことができる機能があったりとさまざまな利点があります。

リーガルサーチのための出社を減らす効果があるのはもちろんですが、入手困難な資料や最新資料を探すことができるということは、業務効率・品質の向上という点で大きなメリットにもなるでしょう。

また、地域図書館の中には、電子書籍の貸し出しサービスを行っているところがあります。蔵書のバリエーションは各施設によって異なりますが、上手に活用できれば便利です。

打ち合わせや情報共有がしづらい問題は……「グループウェア」で解消!

オフィスにいるときのような気軽な声掛け、反応を実現するコミュニケーションツールも増えています。Eメールや掲示板、スケジュールやワークフロー管理などさまざまな機能が1つに統合されたソフトウェアである「グループウェア」の中には、チャットツールなどのコミュニケーションツールを搭載しているサービスもあります。

社内だけではなく、権限を設定することで社外のパートナーなどと一緒に使うこともできるサービスもあり、使い方次第で業務効率を高めることができます。

グループウェアの強みは、データをはじめとする情報共有が行いやすいこと。オンラインで提供されているサービスも多く、パソコンやモバイルツールで簡単にアクセスできること、導入が簡単でコストを抑えられることなども魅力です。

デジタルサービスを活用することで、テレワークしやすい環境をつくることができます。予算や機能、セキュリティに留意しつつ、取り入れてみましょう。

デジタル化と両輪で、業務フローも見直そう

デジタルサービスの導入と合わせて必ず行いたいのが、業務フローの見直しです。

テレワークでは対応できない作業も出てくることでしょう。また、デジタルツールやサービスは、自社導入だけで完結できるものもあれば、取引先やステークホルダーなど社外との連携が必要なものもあります。便利なツールであっても、関係先に導入を依頼するのが難しい場合も多く、従来どおりの対応を継続せざるを得ないケースもあります。

大切なのは、無理にすべてをテレワーク化してしまうのではなく、自社の現状を鑑みて「できる」「できない」の線引きを明確にすることです。その上で、自宅でできる作業に取り組む日はテレワーク、そうでない日は出社と、メリハリをつけた運用を行いましょう。

業務フローの見直しと整理、作業のタスク化を進め、できないことは各種サービスでできるようにしていくと、過大な負担なく、テレワークの比率を上げていくことができます。

効率アップも狙う生産的なテレワークを法務に!

法務業務におけるテレワークは、取り扱う情報や書類の性質上、かつては困難なものでした。しかし、テレワーク推進の動きの中で法務を取り巻く国の制度も変わり、快適なテレワークを支えるサービスも増えてきています。

テレワークでもオフィスにいるときと同等かそれ以上のパフォーマンスを発揮できる体制を整えておくことは、今や危機管理対策としても重要です。自社の状況や環境を踏まえ、できるところから着手し、一過性ではないテレワーク体制を構築していきましょう。

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