いま求められる営業力とは何か?コロナ禍における営業力強化策

コロナ禍の影響もあってテレワークが普及し、非訪問型営業(インサイドセールス)の必要性が高まってきました。企業には改めて営業力とは何かを考え、営業力をいかに強化するかの方策が求められます。テレワーク時代の営業力強化策をやさしく解説します。

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テレワーク環境下での営業活動や、組織マネジメントについてお悩みではありませんか?経営者・人事・マネジメント層の方々に向け、【営業プロセス&営業組織マネジメントガイド】をお届けします。

資料では、オンライン商談のポイント、営業プロセス・営業チームのマネジメント、オンラインの営業スキルを高める方法についてご紹介しています。

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目次

営業力とは何か

「営業」という言葉を聞くと、一般的に顧客と直接会って商品やサービスを売り込むスタイルを思い浮かべます。しかし、働き方改革や新型コロナウイルス感染防止対策といった背景もあり、非訪問型営業(インサイドセールス)の必要性が高まっています。このような状況だからこそ、改めて営業とは何か、営業力とは何かを再確認する必要がありそうです。

多面的な活動を含む「営業」

「営業」という概念は日本独特のもので、そこには「英語で言う Sales(販売)、Business(事務、業務)、Operation(作業、活動、運営)、Trade(商売)など多くの意味)が含まれている」とされます。このことから「日本の企業活動では、営業をマーケティング、セールス、顧客サービスが包含された活動」として使われていることが多いようです。

では改めて、「営業力」とは何でしょうか。

「営業」がマーケティング、セールス、顧客サービスといった多面的な活動を指すのであれば、顧客をしっかりとリサーチ・分析し、顧客の課題や悩みを顧客の立場に立って考え、その最適な解決策を提供し、その後も信頼関係を継続できる力、ということができます。


【出典】小須田庸平「企業の営業力向上についての考察―インターナルマーケティングアプローチの視点から―」兵庫県立大学大学院 経営研究科

営業力強化が必須となる背景

いま、改めて企業活動には営業力が求められています。その背景にあるのは、働き方改革や、新型コロナウイルス感染防止対策の観点による顧客との対面機会の減少です。

2020年4月、2021年1月の2回にわたって政府から出された緊急事態宣言では、企業に対し「出社7割減少」が求められ、従来のような訪問型営業の実質的なストップが余儀なくされました。

「営業」という職種は、テレワーク時の生産性が落ちていると認識されているようです。

パーソル総合研究所が、職場に出勤して仕事をするときの生産性を「100%」とした場合のテレワーク時の生産性の評価を聞いた調査によると、職種別では「営業」の生産性は81.1%となり」、職種全体平均の数字(84.1%)よりも低くなっています。

他の職種と比べても、生産管理・製造とほぼ同等(81.2%)、経理や人事など間接部門(85.6%)より低くなったと認識されていることが分かりました。

テレワークにおける生産性[職種別]

 

【出典】株式会社パーソル総合研究所「第4回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」

インサイドセールスだからこそ営業力が問われる

営業力は、訪問型営業であろうと非訪問型営業(インサイドセールス)であろうと、求められるものは同じです。コロナ禍で訪問型営業が行えない状況だからこそ、営業力が企業活動において大きな意味をもってきます。ここで足踏みをせず、ICTツールやインターネットの力も活用して営業力を強化することが企業には求められています。

営業力とは何か、その具体的な中身を見てみましょう。

ヒアリング力

顧客が抱える悩みや課題を聞き出す力です。ヒアリングは商談で最も重要なプロセスです。顧客はどんな課題を抱えているのか、何を求めているのかだけでなく、予算はどれだけ確保されているのか、意思決定者などキーパーソンは誰か、といった点も引き出すことが求められます。

コミュニケーション力

顧客と信頼関係を得ることが営業のコミュニケーション力です。顧客の立場に立って相手を尊重し、どんな言葉にも耳を傾けることができる謙虚さと我慢強さが求められます。コミュニケーション力は「この営業担当者は自身の悩みを親身になって聞いてくれる」と相手に感じさせる能力、と言い換えることもできます。

課題分析力

自社の商品やサービスを売り込もう、という考えが先に立ってしまっては、顧客の課題解決にはつながりません。顧客は自身や自社の持つ課題を解決する方法を、いっしょになって考えてくれるビジネスパートナーを求めています。そこに必要なのが、課題を分析する力です。

課題を分析する力を磨けば、顧客自身が把握していなかった課題も明らかになるかもしれません。その結果、自社の商品やサービス購入を決めてくれる可能性が増します。

タイムマネジメント力

営業という仕事は一般的に外出が多い仕事です。しかし「外出」の中身を見てみると、移動時間やアポイント前の余った時間が多いことが分かります。このような時間を有効に活用し、業務の効率化を図ることが求められます。

余剰時間にインターネットを活用して見込み客のリサーチをする、チャットなどを活用して同じチームのメンバーと情報交換を行う、経費精算などの雑務を行う、といったことが可能です。このような工夫ができるかどうかが営業成績に反映する可能性は十分考えられます。

営業力をより強化するために必要なこととは

テレワークが普及しつつあるいま、営業力を強化するために必要なこと、改善できることには何があるのでしょう。「会社」「チーム」「個人」それぞれについて見てみましょう。

会社全体で強化すべきこと

テレワークでの営業の生産性を高めるには、営業のオンライン化に対応した企業側の工夫が必要です。

オンラインを活用した顧客フォローと顧客開拓を行う

テレワークに対応しながら営業の生産性を維持、向上させるには営業活動をオンライン化し、機能させることが不可欠です。顧客フォローでは、電話やメールなど従来の方法に加え、Web会議システムによる「オンライン商談」や「オンライン商品展示会」などを実施し、非訪問型営業(インサイドセールス)のマイナス面をカバーしましょう。

顧客開拓では、オンラインセミナーの開催などが有効です。メールなどを使って積極的に見込み客を呼び込みましょう。

サテライトオフィスやシェアオフィスを活用する

営業活動をテレワークで行うには、在宅勤務だけでなくサテライトオフィスやシェアオフィスを活用しましょう。インターネット環境も整備されており、在宅よりも情報漏洩リスクの少ない環境で顧客とのやり取りが可能です。「職住分離」と「職住近接」を同時に実現することができれば、在宅勤務における生産性ダウンのリカバリー効果も期待できます。

情報共有できる仕組みをつくる

テレワークにおける大きな課題の一つが「情報共有」だといわれています。

テレワークでは従業員個々の営業活動が見えにくくなり、企業にとってもマイナスです。例えば「A社へのアプローチ状況は田中さんでないと分からない」といった属人化の弊害が顕在化する可能性もあります。

情報共有できる仕組みをつくっておけば、スムーズな業務引き継ぎや顧客への適切なアプローチが実現します。具体的な情報共有の仕組みの一つが、ビジネスチャットなどコミュニケーションツールです。例えば、ビジネスチャットを利用すればリアルタイムで相手と連絡が取れます。文章だけでなくPowerPointで作った資料などのデータも送れるので、情報共有のムダがありません。

営業支援ツール(SFA)を活用する

営業支援ツール(SFA:Sales Force Automation)とは、顧客リストや案件管理、予実管理、日報・週報などといった営業活動に関わる情報をリアルタイムで共有し、営業活動をより円滑に進められるようにするための支援ツールです。

一般的に顧客関係管理(CRM)システムの一部をなし、販売プロセスのすべての段階を記録します。個々の営業担当が行った特定顧客とのすべてのコンタクト、その目的や必要なフォローアップを追跡できるため、テレワーク環境下で活用できる上、プロジェクト管理・営業スタッフ管理に使用できるものもあります。

チーム単位で強化すべきこと

チームで強化・改善すべきことも少なくありません。具体的には何があるでしょう。

定期的にミーティングを開催する

効率的・効果的に営業活動を行うには、チーム内の情報共有が不可欠です。しかし、テレワークではコミュニケーション不足の懸念があります。これを防ぐためには、ビジネスチャットやメールでのやり取りだけでなく、定期的なミーティングを開催すると良いでしょう。

Web会議システムを活用したオンラインのミーティングでも良いですし、新型コロナウイルスによる感染を避けるため、メンバー同士適度な距離を確保できるのであれば、オフラインのミーティングも検討してみましょう。オフラインのミーティングはビジネスチャットやメールと比較すれば情報量に大きな差があります。メンバーの表情や声色などが分かる点もチームワーク再確認に役立ちます。

定期的なミーティングは、チームの営業力アップに大きな効果が期待できます。

目標設定を確実に行う

チームには目標設定が欠かせません。目標とすべきゴールが曖昧だとチームとしての成果を出すことはできません。また、目標自体が間違っていると、メンバーが誤った目標に向かって業務を遂行することになり、努力も水の泡となる可能性も否定できません。

テレワークでは、その目標設定を綿密に行うことが求められます。その理由は、テレワークではチーム内の情報共有やコミュニケーションが希薄になりがちなため、メンバーのモチベーション低下が起こりやすくなる可能性があるからです。「何を目標にするのか」「いつまでに達成を目指すべきか」「なぜその目標にするのか」。この3つをリーダーは明らかにし、明確な言葉でメンバーに伝えることが求められます。

オンラインミーティングを積極的に活用する

チームのメンバーがテレワークになると、対面でのミーティングが開催しづらくなります。営業会議もオンラインで行うことも多くなるでしょう。

その一方、オンラインミーティングには「場所の手配が不要なので手軽に会議を開催できる」「在宅勤務だとメンバーのスケジュールが合わせやすい」「会場費がかからない」などのメリットがあります。通常だと外回りなどで全員が顔を合わせることが難しい営業チームでも、オンラインミーティングならそのハードルも解消されるでしょう。

Web会議ツールを使えば、ミーティングだけでなく営業研修の実施も可能です。Web会議ツールには録音・録画機能があるので、研修中に聞きそびれたことがあっても、後で確認することができるので便利です。

個人で強化すべきこと

営業力の強化は、企業、チームだけでなく個人にも求められています。できること、改善すべきポイントは何でしょう。

情報収集をまめに行う

営業力を構成する要素として「コミュニケーション力」「課題分析力」があります。これを発揮するためには顧客と対等か、またはそれ以上の情報や知識、発想力が求められます。営業力強化のためにインプットを増やすことは、重要だといえるでしょう。

情報や知識を得るソースとしては

・新聞や経済誌などのWebサイト
・経済専門家などのブログ
・書籍

などがあります。これらの情報源から

・自社を含む業界の動向や今後の展望
・顧客を含む他業界の動向や今後の展望
・マクロ的な経済全体の動向
・AIはじめ新しいテクノロジーの動向
・効果的なマーケティングの手法

などを得るようにしましょう。

名著と呼ばれる経済書や自己啓発本を読むものおすすめです。

Webセミナーやオンライン研修を受講する

コロナ禍の影響もあり、Webセミナー(ウェビナー)やオンライン研修の開催が増えています。

従来であればセミナーや社外開催の研修は、ほとんどが有料でした。しかし実際の「会場」での開催ができない状況下にあって、これらのセミナーや研修を無料で受けられる機会が増えてきました。

Webセミナーやオンライン研修は、スケジュールを調整し、交通費をかけ会場まで足を運ぶ必要がありません。自分の都合に合わせ、自宅などで気軽に受講することができる点が大きなメリットといえるでしょう。

Webセミナーやオンライン研修の情報を得るには、経済誌のWebサイトに会員登録し、メールマガジン配信の設定をします。そうすれば、定期的にセミナー開催のお知らせなどが送られてくるため、情報を得ることができます。

トークスクリプトの改善と強化を行う

トークスクリプトとは、顧客の課題に沿った解決方法を事前に用意する「スクリプト(台本)」を指します。トークの始め方、商品やサービスについての説明、トークの展開、顧客の質問への回答、成約などを一つの流れとしてまとめたのがトークスクリプトです。

移動時間がほぼなくなり、余剰時間が生まれるテレワークを活用し、トークスクリプトの改善や強化の時間に充ててみましょう。トークスクリプトを磨き上げれば、非訪問型営業(インサイドセールス)にもきっと活かせるはずです。

営業力強化の企業事例

従来の訪問型営業でも、テレワーク導入によるテレワークによって非訪問型営業(インサイドセールス)のウエイトが大きくなる中、営業力強化に向けて工夫を凝らし、テレワークのハンデをリカバリーしている企業があります。

旭化成ホームズ株式会社|文書共有ができるWeb会議システム導入で営業力強化

住宅メーカーの旭化成ホームズでは、働き⽅改⾰の⼀貫でモバイルワークを推進しています。

営業社員全員にiPadを配布し、旭化成ホームズグループの展⽰場や全国にある拠点を利⽤したサテライト勤務を推進し、⽣産性を高めています。一部の営業所では先行してリアルタイムに文書共有ができるWeb会議システムを導入。テレワークであっても「リアルタイム・双方向」の文書共有を実現しています。

打ち合わせの内容を営業がその場で書き込んだ文書は設計部門と共有され、そのまま設計依頼へとつなげているとのこと。営業部門と設計部門の連携など、営業本部全体で業務改革と営業力に取り組んでいます。この取り組みは全社に広がっているそうです。

【参考】総務省「働き方改革のためのテレワーク導入モデル」(平成30年6月)

株式会社アキュラホーム|モデルハウス営業を無人化し全国から顧客を呼び込む

木造注文住宅のアキュラホームでは、2020年 4 月 1 日から、さいたま市内のモデルハウスでAI(人工知能)や、さまざまなモノがインターネットとつながることで制御可能になるIoT技術、ロボット技術を取り入れたシステムで運営される無人モデルハウスをスタートさせました。

次世代モバイル通信システムである5Gの広がりを見据えた取り組みで、モデルハウスの来場者をロボットが案内するほか、遠隔地のモデルハウスも案内できる最先端のスマートモデルハウスとなっています。

同社はこの無人モデルハウスを全国に展開中。今後は、先端技術を駆使した近未来型の「無人モデルハウストータルリモートシステム」を事業展開し、顧客の自宅などいつでもどこからでも接続して全国のモデルハウスを利用できるようにしていきたいとのことです。

【参考】JETRO「地域・分析レポート/「コロナ禍」での事業拡大事例を見る(その6)」

まとめ|非訪問型の営業力強化が必要な時代。企業・チーム・個人レベルで営業力強化の努力を続けよう

テレワークを導入する企業が増える中、非訪問型営業(インサイドセールス)における営業力強化の必要性が高まっています。企業、チーム、個人それぞれが営業力を強化する努力を継続することが「勝てる営業」実現には欠かせません。営業力強化を怠らない企業は、「ニューノーマル」といわれる時代であっても収益向上を可能にするでしょう。

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