特定技能とは?新設在留資格の意義と採用フロー、受け入れ企業が注意すべき点

特定技能は特定産業分野での人材不足解消に向け新設された在留資格です。一定の技能・日本語能力の試験等による確認を経た外国人の雇用が可能です。それだけに受入機関が満たすべき要件や準備が必要です。

本記事では、資格の概要や注意点を含め解説します。

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目次

特定技能とは?

一定の専門性・技能を有し、即戦力が期待できる外国人の在留資格として、新たに設けられたのが「特定技能」です。2019年、改正出入国管理法に基づき創設されました。特に人材不足が深刻な一定の産業に限り、受け入れることが可能です。

特定技能の種別

特定技能には、特定技能1号と特定技能2号という2種類の在留資格があります。

特定技能1号・2号の違い

 
【出典】出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」

まず「特定技能1号」は、特定産業に属する相当程度の知識・経験を必要とする技能を要する業務に従事する外国人向けの資格です。日本語能力と特定産業分野での技能水準が試験によって確認されますが、同等分野の技能実習2号を良好に修了した人は試験が免除されます。

「特定技能2号」は、特定産業に属する熟練された技能が必要な業務に従事する外国人向けの資格です。技能の習熟度は試験によって確認されますが、日本語の試験を受ける必要はありません。また在留期間に上限が設けられておらず、要件を満たせば配偶者・子を帯同することができます。新たに創設された資格であることから2021年2月現在ではまだ2号を取得した者はおらず、2021年度から建設分野、造船・舶用工業分野の2分野に限って試験が開始されることになっています。

特定技能2号は、熟練した技能を持つことが要件であり、1号から2号への移行には試験に合格することなどが必要です。つまり、特定技能1号から自動的に2号に移行できるわけではありません。一方、高い技能を持ち、試験で確認できた場合などは、1号を経ずに2号を取得することは可能です。

いずれにせよ1号・2号とも即戦力として期待されるため、一定程度の日本語力や技能水準がそれぞれ求められます。在留期間や受け入れ条件などで、1号と2号は以下の違いがあります。

特定技能ではたらける産業分野

前述のとおり、特定技能を持ってはたらくことができる産業は一定のものに限られています。1号・2号で以下の産業分野が定められています。

・特定技能1号
介護分野、ビルクリーニング分野、素形材産業分野・産業機械製造業分野・電気/電子情報関連産業分野、建設分野、造船・舶用工業分野、自動車整備分野、航空分野、宿泊分野、農業分野、漁業分野、飲食料品製造業分野、外食業分野

・特定技能2号
建設分野、造船・舶用工業分野

【出典】出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」

技能実習制度との違い

従来から行われてきた技能実習制度は、開発途上国などの外国人実習生を日本で一定期間受け入れた後、技能を移転する、国際貢献のために創設された制度です。しかし、日本での劣悪な就労環境や低賃金、外国人実習生の失踪など、多くの課題が発生しています。

対して、特定技能の制度は、労働力確保を目的としています。特定の送出機関や受入監理団体を介さずに外国人労働者を雇用することができ、かつ技能実習制度と異なり転職も可能です。18歳以上であれば他に必須の要件がないため、受け入れ側には満たすべき一定の条件や準備しなければならないことはあるものの、資格取得を目指す外国人にとって比較的利用しやすい制度になっているといえます。

技能実習と特定技能の違いは、以下のようにまとめることができます。

技能実習と特定技能の違い

技能実習(団体監理型) 特定技能(1号)
外国人の技能水準 なし 相当程度の知識または経験が必要
入国時の試験 なし
※介護職のみN4レベルの日本語能力要件あり
技能水準、日本語能力水準を試験等で確認
※技能実習2号を良好に修了した者は試験等免除
送出機関 外国政府の推薦または認定を受けた機関 なし
※送出国により認定送出機関を通す必要あり
監理団体 あり
※非営利の事業協同組合等が実習実施者への監査その他の監理事業を行う。主務大臣による許可制
支援機関 なし あり
※個人または団体が受入機関からの委託を受けて特定技能外国人に住居の確保その他の支援を行う。出入国在留管理庁による登録制
外国人と受入機関のマッチング 通常、送出機関と監理団体を通して行う 受入機関が直接海外で採用活動を行う、または国内外のあっせん機関等を通じて採用することが可能
受入機関の人数枠 あり
※常勤職員の総数に応じる
なし
※介護分野、建設分野を除く
転籍・転職 原則不可
※ただし実習実施者の倒産等やむを得ない場合や、2号から3号への移行時は転籍可能
可能
※同一の業務区分内または試験によりその技能水準の共通性が確認されている業務区分間において

【出典】出入国在留管理庁「新たな外国人材の受入れ及び共生社会実現に向けた取組」

特定技能が創設された背景

少子高齢化により生産年齢人口は年々減少し、人材不足は深刻な課題となっています。

中小企業庁の調査では、従業員数が「過剰」と答えた企業の割合から「不足」と答えた企業の割合を引いた「従業員過不足DI」が、昨今は一定の産業で0を大幅に下回っています。特に建設業での人材不足感は顕著であると見て取れます。

このため、国としても一定の専門性を持った外国人材を広く受け入れる仕組みの構築が必要となり、一定の産業に限って相当程度の知識または経験、技能を要する業務に従事する外国人に向けた在留資格を創設するに至ったと考えられます。

生産年齢人口(15〜64歳人口)の推移・推計

 

【出典】総務省「国勢調査」、総務省「人口推計」、国立社会保障・人口問題研究所「日本の将来推計人口」(平成29年推計)

中小企業が感じる人材不足感(業種別従業員過不足DI)

 

【出典】中小企業庁・(独)中小企業基盤整備機構「中小企業景況調査」
※従業員数過不足数DIとは、従業員の今期の状況について、「過剰」と答えた企業の割合(%)から、「不足」と答えた企業の割合(%)を引いたもの

受入機関に求められること

受入機関が特定技能の外国人雇用を行うときに、公的な機関により認定を受ける必要はありません。しかし、資格を保持する外国人を受け入れる申請の際に、受入機関が一定の基準を満たしているかどうかが審査されます。その基準は以下のとおりです。

【基準】
(1)外国人と結ぶ雇用契約が適切であること
  例:特定技能外国人の報酬額や労働時間などが、日本人と同等以上であること
(2)受入機関(企業・団体・個人)自体が適切であること
  例:法令等を遵守し、5年以内に出入国・労働法令違反がないなど欠格事由に該当しないこと
  例:保証金の徴収や違約金契約を締結していないこと
(3)外国人を支援する体制があること
  例:外国人が理解できる言語で支援できること
(4)外国人を支援する計画が適切であること
  例:生活オリエンテーションの開催など

これら基準を受入機関が満たすには、外国人を支援する体制や計画が適切に実施されなくてはなりません。受入機関が果たさなければならない義務は以下のとおりです。

【義務】
(1)外国人と結んだ雇用契約を確実に履行すること
(2)外国人への支援を適切に実施すること
(3)出入国在留管理庁およびハローワークへの各種届出

特に受入機関は、特定技能1号を持つ外国人が、日本での日常生活・社会生活を安定的に・円滑に行うことができるような支援計画を作成し、申請の際にその他申請書類とあわせて提出しなければなりません。この支援計画の主な内容として省令で定められた義務的支援の項目は以下の10項目です(特定技能2号については支援義務なし)。

【支援計画の主な内容】

主な支援 内容
1.事前ガイダンス 公用契約締結後、在留資格認定証明書交付申請前、または在留資格変更許可申請前に、労働条件・活動内容・入国手続き・保証金徴収の有無などについて説明(対面・テレビ電話など)
2.出入国する際の送迎 入国時の空港と事業所または住居などへの送迎、帰国時の空港などの保安検査場までの送迎・同行
3.住居確保と生活に必要な契約支援 連帯保証人になる・社宅提供など、銀行口座などの開設・携帯電話やライフラインの契約などを案内・各手続きの補助
4.生活オリエンテーション 社会生活を安定的・円滑に営めるよう、日本のルールやマナー、公共機関の利用方法や連絡先、災害時の対応などを説明
5.公的手続きなどへの同行 必要に応じ住居地・社会保障・税などの手続きの同行、書類作成の補助
6.日本語学習の機会の提供 日本語教室などの入学案内、日本語学習教材の情報提供など
7.相談・苦情への対応 職場や生活上の相談・苦情などについて、外国人が十分に理解できる言語での対応、内容に応じた必要な助言・指導など
8.日本人との交流促進 自治会などの地域住民との交流の場、地域のお祭りなどの行事の案内や参加の補助など
9.転職支援(人員整理などの場合) 受け入れ側の都合により雇用契約を解除する場合の転職先を探す手伝い、推薦状の作成など、ほか求職活動を行うための有給休暇の付与や必要な行政手続きの情報の提供
10.定期的な面談・行政機関への通報 支援責任者などが外国人およびその上司などと定期的(3カ月に1回以上)に面談し、労働基準法違反などがあれば通報

【出典】出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」

支援計画には上記10項目の実施内容・実施方法に加えて、以下事項を記載することとされています。なおこれら支援活動は、登録支援機関にその一部またはすべてを委託することも可能です。

【記載事項】
・支援責任者および支援担当者の氏名と役職名など
・支援実施を他の者に委託する契約をする場合、他の者の氏名および住所など
・登録支援機関に委託する場合は、その登録支援機関

事前ガイダンスにおける情報提供

事前ガイダンスは文書郵送や電子メール送信で完結できず、対面またはテレビ電話、インターネットを通じたビデオ通話などで、本人であることの確認を行った上で実施しなければなりません。事前ガイダンスでは義務的支援内容として以下の情報提供が必要です。

【事前ガイダンスで情報提供しなければならない項目】

(1) 従事させる業務の内容、報酬の額その他の労働条件に関する事項
(2) 日本で行うことができる活動の内容
※当該の技能水準が認められた業務区分に従事すること
(3) 入国時の手続きに関する事項
※新たな入国の場合、交付された在留資格認定証明書の送付を特定技能所属機関から受け、受領後に管轄の日本大使館・領事館で査証申請を行い、在留資格認定証明書公布日から3カ月以内に日本に入国すること。すでに在留している場合、在留資格変更許可申請を行い、在留カードを受領する必要があること
(4) 保証金などの支払いや違約金等にかかる契約を現にしていないこと、および将来にわたりしないことを確認
※特定技能外国人本人およびその配偶者や同居の親族そのほか社会生活において密接な関係を有する者すべてに対して
(5) 雇用契約の申し込みの取次や就労準備に関して外国の機関に費用支払いがあるかないか、支払った機関の名称、支払い年月日、支払った金額および内訳を確認
(6) 特定技能外国人支援に要する費用について当の特定技能外国人に負担させないことを確認
※義務的支援に要する費用は特定技能所属機関等が負担
(7) 入国時の飛行場などへの出迎え、事業所または住居までの送迎を行うこと
(8) 特定技能外国人のための適切な住居の確保にかかわる支援の内容
※社宅貸与の場合は広さや家賃など負担すべき金額を含む
(9) 特定技能外国人からの職業生活・日常生活または社会生活に関する相談または苦情の申し出を受ける体制
※たとえば○曜日から○曜日の○時から○時まで、面談・電話・電子メールなどによって相談または苦情を受けることができること
(10) 支援担当者氏名と連絡先(メールアドレスなど)

【出典】法務省「1号特定技能外国人支援に関する運用要領」

協議会構成員

特定技能外国人を受け入れるすべての機関は、産業分野ごとの協議会の構成員になる必要があります。

分野別所管行政機関(問い合わせ先)

http://www.moj.go.jp/isa/content/930003823.pdf

随時・定期で必要な届出

受入機関は、随時または定期に、以下の届出が必要となります。これら届出を履行しなかったり虚偽の届出といった不正が発覚したりした場合は、指導や罰則の対象となります。
受入機関の届出 特定技能雇用契約および登録支援機関との支援委託契約にかかわる変更・終了・新たな契約締結の届出
支援計画の変更にかかわる届出
特定技能外国人の受け入れ困難時の届出
出入国または労働関係法令に関する不正行為などを知ったときの届出
外国人を雇い入れたときまたは離職したときの届出
※氏名・在留資格等の情報を届出
※地方出入国在留管理局ではなくハローワークに届け出ること
定期の届出 特定技能外国人の受け入れ状況や活動状況に関する届出
支援計画の実施状況に関する届出
【出典】出入国在留管理庁「特定技能ガイドブック」

特定技能外国人の採用フロー

受入機関が特定技能外国人を採用し就労に至るまでの流れは、海外から来日し就労する外国人の場合と日本国内に中長期在留している外国人の場合の2パターンが考えられます。以下ではこの2パターンの流れを説明します。

1.海外から来日する場合

・技能・日本語試験
特定技能資格での就労を希望する外国人は、まず技能・日本語に関する試験に合格する必要があります。技能実習2号を良好に修了した外国人は、これら試験が帰国済みであっても免除されます。技能実習2号を良好に修了した、と判断する要件は以下となっています。

(1)技能実習2年10カ月以上を修了し、かつ(2-1)技能検定3級もしくは相当する技能実習評価試験の実技試験に合格、または(2-2)「評価調書」に基づき技能実習2号を良好に修了したと認められること、のいずれかに該当

・採用から雇用契約
直接の求人への応募、または民間の職業紹介事業者による紹介を経て採用します。本人との間で雇用契約が締結された後、受入機関は事前ガイダンスや健康診断を実施します。

・在留資格認定の申請・認定
これらを実施した後、特定技能在留資格認定証明書の交付を申請します。原則的には雇い入れ企業の職員などが代理申請することになるでしょう。これを地方出入国在留管理局が審査し、適合すると判断されれば受入機関に在留資格認定証明書が送付されます。

・海外日本公館でのビザ申請
受入機関に届いた在留資格認定証明書を海外にいる当の外国人に送付します。これを外国人本人が在外公館に提出してビザ発給を申請、認められれば旅券とビザを携行して入国することができます。

・入国と入国後
入国時には在留カードが交付されます(後日送付の場合もあり)。入国後には、遅滞なく以下を実施する必要があります。こうして就労開始が可能となります。

・生活オリエンテーション
・住居地の市区町村などでの住民登録
・給与口座の開設
・住宅の確保 など

(2)日本国内に在留している場合

試験から採用・契約までは海外から来日し就労する場合と同じです。

・在留資格変更許可・就労
原則的に外国人本人が「在留資格変更許可申請」を地方出入国在留管理局に申請します。申請が認められれば、在留資格変更が許可されて在留カードが交付され、受入機関での就労開始が可能となります。

なお申請が許可されるため、以下の要件が満たされている必要があります。

【外国人本人の要件】
・18歳以上であること
・技能試験および日本語試験に合格していること
 ※技能実習2号を良好に修了した外国人は免除
・特定技能1号で通算5年以上在留していないこと
・保証金を徴収されていないこと。または違約金を定める契約を締結していないこと
・自ら負担する費用がある場合、内容を十分に理解していること など

雇用時にかかる想定費用

例えば採用を自社ホームページ、ハローワークを通じて行う場合、無料で行うことができます。雑誌やウェブによる求人広告を掲載したり、人材紹介会社にマッチングを依頼したりすることもでき、この場合は掲載料・紹介料が必要になります。また農業・漁業分野に限っては派遣形態の雇用が可能で、この場合は派遣料の支払いが必要です。

採用・送出、支援計画の実施や各種申請・登録をすべて自社で行うことも可能です。ただし現地に直接赴いて面接・採用できる場合は渡航・滞在費が国により10数万円〜、送出国により認定送出機関が採用・送出を行う場合にはその費用を支払う必要があります。

登録支援機関に支援計画のすべてを委託する場合には、月数万円〜といわれますが比較・検討すべきでしょう。そのほか家賃・光熱費補助や通信費補助といった生活支援、日本語学習の支援を行う場合もあります。事前ガイダンスや生活オリエンテーションを自社で行うときに通訳が必要であれば、通訳にかかる費用も負担する必要があります。登録支援機関に支援の一部やすべてを委託する場合は支援サービスなどの内訳をよく比較・確認する必要があるでしょう。

特定技能外国人の受入時に注意すべきポイント

ここでは、特定技能外国人の受入時に注意すべきポイントについて4点解説します。

1.労働関係法令・社会保険関係法令の遵守

特定技能に関連し、新設された省令で、受入機関は「労働、社会保険および租税に関する法令を遵守すること」と定められました。さらに、受入機関が特定技能外国人と雇用契約を結ぶ際には以下の基準を満たすべきことも定められています。

・日本人が従事する場合の報酬額と同等以上であること
・一時帰国を希望した場合、休暇を取得させるものとしていること
・外国人が帰国旅費を負担できないときは、受入機関が負担するとともに契約終了後の出国が円滑になされる措置を講ずることとしていること など


【出典】出入国在留管理庁「在留資格「特定技能」について」

他の在留資格についてもいえることですが、日本ではたらく外国人にも日本人と同じ労働関係法令・社会保険関係法令が適用されます。採用選考基準、賃金・労働時間といった就労条件、福利厚生施設の利用等について、国籍などを理由とした差別的な取り扱いは厳しく禁じられますので、注意が必要です。

具体的には賃金について法に定める最低賃金以上で日本人と同等以上とすること、労働時間も同様かつ適正な労働時間の把握に努めることといった配慮が必要です。また労働契約を締結するときには、賃金・労働時間など主要な労働条件について書面で明示することが必要です。このとき、母国語など外国人が十分に理解できる方法で明示するよう努めることとされています。

また法令上、社会保険に加入する必要がある受入機関が社会保険未加入である場合には、特定技能外国人を受け入れることができません。


【出典】経済産業省「外国人雇用はルールを守って適正に」

2.内定は禁じられていない

特定技能外国人が受験する各試験の合格前に内定を出すことは禁じられていません。しかし、特定技能雇用契約を締結した後に受験し、各試験に合格しなければ受け入れは認められないため注意が必要です。

3.義務的支援にかかる費用を本人に負担させることはできない

企業が作成・提出しなければならない支援計画としてあげられている10項目=義務的支援は、法務省令として実施されなければならず、その実施にかかる費用を本人に負担させることは認められていません。受入機関が実施しなければならない支援については、受入機関が負担する必要があります。

4.二国間取決(協力覚書)に関する注意点

特定技能外国人の適切・円滑な受け入れのため、日本と送出国のあいだで二国間取り決め(協力覚書)が作成されている場合があります。これは来日しようとする外国人から保証金を徴収するような悪質なブローカーによる仲介を排除し、日本ではたらく外国人の福祉を増進し人権を保護するといったことが意図されています。

2021年2月現在、二国間取り決めが締結されている国は以下の13カ国です。

フィリピン、カンボジア、ネパール、ミャンマー、モンゴル、スリランカ、インドネシア、ベトナム、バングラデシュ、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インド

二国間取り決めが作成された国の国籍であることは特定技能外国人受入の要件ではないため、取り決めがなされていない国の外国人であっても受入可能です。

ただし、二国間取り決めが作成されている国のうち、送出国によってはその国の定める手続きが別途必要になることがあります。例えば、フィリピン、カンボジア、ミャンマーでは、送出国の認定送出機関を通じて採用活動を行わなくてはなりません。

送出国によって、必要となる特徴的な別途手続きのうち、主なものを以下にまとめました。

送出国により必要となる別途手続きなど

フィリピン ・認定送出機関を通じて採用活動を行う
・受入に際してはPOLO東京(フィリピン海外労働事務所)へ必要書類を提出、審査・認証を受けて後に地方出入国管理局へ申請する
カンボジア ・認定送出機関を通じてのみ受入が可能
・カンボジア政府が送出機関を通じ発行する証明書を入管手続きに添付する必要がある
ネパール ・マッチングはネパール政府機関を通じて行われる
・ネパール政府が発行する海外労働許可証がネパール出国時に必要
ミャンマー ・認定送出機関を通じてのみ受入が可能
・新規入国者は出国前に海外労働身分証明カード(OWIC)の発給を受ける必要がある
モンゴル ・政府機関である労働・社会保障サービス総合事務所(GOLWS)を唯一の送出窓口とする
インドネシア ・採用時にはインドネシア労働省が運営するIPKOL(労働市場情報システム)に求人情報を登録、候補者を選別することが推奨される
・雇用契約の締結および在留資格認定証明書の取得後に本人がSISKOTKLN(海外労働者管理サービスシステム)に登録、取得する海外労働許可IDをもってビザ発給を受ける
ベトナム ・認定送出機関以外による送出は認められない
・ベトナム政府が特定技能外国人に発給する推薦者表を申請時に添付する必要がある
タイ ・日本企業が現地へ訪れて直接求人活動を行うことは禁じられている
・認定送出機関またはタイ王国労働省雇用局を通す必要がある
・受入機関はタイ大使館・労働担当官事務所での雇用契約書等の提出・認証が必要
ウズベキスタン ・送出機関の利用は任意
【出典】出入国在留管理庁「送出手続早見表」およびJITCO(公益財団法人 国際人材協力機構)「送出し国・送出機関情報」より

まとめ|特定技能は外国人材確保に向けた新設の在留資格

14の特定産業分野での人材不足解消のため、一定の専門性・技能と日本語能力を持った外国人材に認められる在留資格が特定技能です。日本ではたらきたい外国人にとっては学歴・業務経験の条件がなく利用しやすい一方、受入企業には特定技能外国人が日常生活・社会生活を行う上での支援計画立案・実施や労働関係法令・社会保険関係法令の順守などの条件・義務が伴います。送出国によっては認定送出機関を通す必要や別途手続きが必要な場合もあり、慎重に検討した上で優秀な外国人材の雇用を目指しましょう。

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インタビュー・監修

下川原 篤史

下川原 篤史(しもがわら・あつし)

社会保険労務士・行政書士下川原事務所代表、特定社会保険労務士、申請取次行政書士。技能実習生監理団体で14年間技能実習生受入れ業務に従事した後、2005年に独立開業。労働・社会保険関係法令、出入国管理法令および技能実習法令の知識を活かした外国人雇用の実務とコンサルティングを得意とする。就業規則その他規程の作成・改訂、労務相談のほか、外国人の在留資格諸申請、技能実習法に基づく監理団体の外部監査人、法的保護講習講師。主著に『企業における労務監査の手引』(共著・新日本法規出版)ほか

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