現地雇用・労務管理における3つのポイント。APAC13カ国・地域の労働法制・市場の実態とは

海外への事業展開時には、各国・地域の法令・文化にあわせた採用や人事管理が求められます。特に労務管理関連の不備は「知らなかった」では済まされません。また人事管理のトラブルは、現地での事業展開や企業のブランディングにも大きく影響するリスク要因となりえます。現地の採用・労務管理に詳しい専門家の活用を検討することもおすすめしますが、ここでは海外展開を進める企業人事としてまず押さえておくべきポイントを解説します。

【課題認識】
海外への事業展開時に現地雇用・労務管理でつまずかないために押さえておくべきこと

海外での雇用にあたっては、各国・地域労働法規の理解が必須

同種の労働法規についても、国・地域によって会社の義務範囲が異なる

地域別日系企業(拠点)割合2017年度
【出典】財務省「海外在留邦人数調査統計 
平成30年要約版(外務省)」

海外に進出している日系企業の総数(拠点数)は2017年には75,531拠点となり、前年より3,571拠点(約5.2%)の増加、調査開始以降最多となりました(※1)。展開先地域を見ると、「アジア」が約70%、「北米」約12%、「西欧」約7.7%の順で、この3地域で大半を占めています。国別には、中国、米国、インド、タイが上位に並びますが、中でも中国が32,349拠点と突出して高い数となっています。

※1:外務省 海外在留邦人統計調査

パーソル総合研究所では「PERSOL HR DATA BANK in APAC」と題してアジアパシフィック(APAC)13カ国・地域の労働市場の概況、そして各国・地域の労働法制や賃金動向の最新情報を調査してきました。

中でも労働法制については、各国・地域の労働政策の状況や労務慣行の特徴、また賃金や解雇等について定められているルールを整理することで、海外展開時の現地雇用・労務管理に関して押さえておくべきポイントをご紹介します。

1.「個人の権利重視」か「会社の意向優先」か、当該国・地域の傾向を押さえる
その国・地域の労働法制がどのような基本思想で設計されているか、事業展開の前提として押さえておく必要があります。たとえばインドネシアの労働法制は、非常に労働者に有利に設計されており、懲戒解雇の場合でも退職金支払いが義務付けられます。

一方アジアの中で最も会社側に有利な労働法制をもつシンガポールでは理由不問で懲戒解雇をすることができ、労働時間、休憩、休日等の定めも、一部の労働者のみに限定して適用されています。

こうした労働法制の思想を理解しておかないと、現地の組織設計や労働者の採用・定着施策が的外れなことになりかねません。

2.雇用管理の要点を理解し、運用は最も合理的な方法で
現地専門家を活用して就業規則や雇用契約書を作成する場合が多いと思われますが、雇用の責任者や本社人事も、基本的な内容については理解しておく必要があります。就業規則1つをとっても、作成・提出の義務は国・地域によって異なります。たとえば韓国や中国は一定人数以上を雇用した場合に就業規則の作成義務がありますが、マレーシアやフィリピンは、義務化されていません。就業規則と個別契約の記載が矛盾した場合、どちらが優先されるかといった法的拘束力も国・地域により異なりますので、留意が必要です。

3.外国人の業務・採用数に制約がある場合も
事業展開する国・地域によっては、母国人と外国人の雇用人数割合が定められている場合があります。たとえばインドネシアは、外国人雇用1人に対して、インドネシア人10人以上の雇用を要すると定められています。日本からの赴任者を調整する際にも、国・地域ごとの制約条件をまず理解しておく必要があるのです。

展開先現地の賃金動向・市場動向を理解した採用活動を

国・地域別に年々変化する平均賃金

また現地雇用で悩むポイントの1つは人材の採用条件です。
求める人材を高い精度で採用していくためには、現地の事情を理解して条件設定することが求められます。

前年比昇給率(中国および主要国・2018年度)
【出典】財務省「2018年度アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」(日本貿易振興機構)

特にアジア諸国・地域は年々平均賃金が増加する傾向にあり、「経営上の問題点」の第1位にもあげられました(※2)。同調査で示された直近の賃金上昇推移は右図のとおりです。1位のパキスタンは10%の上昇となり、日系企業の拠点が多い中国でも5.9%の前年比上昇が起こっています。

※2:JETRO「アジア・オセアニア進出日系企業実態調査」

当然平均賃金の上昇は転職市場で提示される賃金水準にも影響します。昨年と同じ募集要件を提示しても市場が変化していると、見込み通りの求人は集まりません。既存社員の処遇ともバランスをとりつつ、採用環境を踏まえて求人条件の出し方を柔軟に考える必要があります。

国・地域別の採用市場の実態に情報収集のアンテナを張る

実際に応募者を集める際にも、国・地域ごとに求人方法の傾向は異なります。直接募集、求人エージェントの活用、リファラル採用など、現地で有効性の高い媒体を知ることがまず必要です。

選考過程は書類選考・面接と、日本と変わらないのが一般的ですが、外国の方が日本よりも結果を主張する傾向にあります。「私は○○ができる(学んできた)、だから御社ではたらきたい(活躍できる)」といった表現の背景にある文化の違いを理解したうえでコミュニケーションを図り、採用合否を判断することが大切です。

【パーソルのアプローチ】
アジアを中心に現地雇用の支援体制を強化

アジア13カ国・地域で、人材サービスをご提供

パーソルグループは、現地の法制度や市況感に詳しい現地法人と一緒にパートナーを組み、海外で事業展開をする日本法人に向けた総合人材サービスをご提供しています。

2010年に米国の大手人材サービス業Kelly Services, Inc.との戦略的業務提携を締結し、2012年には両社の北アジア事業における合弁事業を開始。また、2017年度より、豪州を中心に人材サービス事業及びメンテナンス事業を行う豪州証券取引所に上場する豪州人材サービス・メンテナンス会社Programmed Maintenance Services Limited(プログラムド社)を子会社化しました。

現在では、アジアパシフィック中心に13カ国・地域(中国、香港、韓国、台湾、シンガポール、ベトナム、インドネシア、マレーシア、タイ、インド、ニュージーランド、オーストラリア、米国)にて事業を展開。人材紹介、人材派遣、アウトソーシング、コンサルティングまで、日本法人のお客様が海外ビジネス展開をする際の課題に対して幅広いニーズにお応えしています。

パーソルグループサービス紹介

PERSOLKELLY Group 海外進出企業支援

米国の大手人材サービス企業ケリーサービス社と合弁事業を設立し、アジア・パシフィックの主要エリアにて人材サービスをご提供しています。

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Programmed Maintenance Services

豪州・ニュージーランドで人材サービス事業及びメンテナンス事業を行っています。

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