内閣官房に聞く!プロ人材事業とは?地域企業の採用難を打開し、地方創生を実現

大都市圏、大企業の優秀な人材を地方の中小企業に橋渡しする国の「プロフェッショナル人材事業(以下、プロ人材事業)」は、2016年1月のスタートから丸3年が経過した。

東京都と沖縄県を除く45道府県に設けられた「プロフェッショナル人材戦略拠点(以下、プロ拠点)」が実動部隊となり、費用は国と道府県が負担する仕組みとなっている。運営は各道府県に任されており、取り組み方もさまざまだが、相談件数は3万3千件、実際に生み出した雇用の累計は5,400人以上と、着実に大きな成果が出始めている。

プロ人材事業を主管する内閣官房 まち・ひと・しごと創生本部事務局 地方創生総括官補 井上 誠一氏に、本事業がどのような経緯で生まれ、どのように課題解決を目指しているのか、そして現時点での成果についてお聞きした。ぜひ、事業の目的と成果を知り、活用を検討いただきたい。

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深刻化する人材不足と採用難の解決に向け、国が主導し
「プロ人材事業」がスタート

内閣官房
まち・ひと・しごと創生本部事務局
地方創生総括官補
井上 誠一

なぜ国がプロ人材事業を行うことになったのか、そのきっかけについて井上氏は次のように話す。

「本事業の大きなきっかけとなったのは2014年、人口減少の問題が提起され、特に地方における危機感が高まったことでした。地方創生には、やりがいのある仕事を地方に創り出すことが重要であり、その仕事が人を呼び込み、その人がまた仕事を生み出すという、好循環を作り出す必要があります。東京一極集中の解消という観点も踏まえ、“企業の将来を支える優秀な人材を地方へ”が、施策の柱となりました」

当時、求職者を対象とする内閣官房の調査によれば、東京在住者の求職者の実に4割が「転職を機に、地方移住を検討、もしくは検討したい」と回答している。

この調査結果を踏まえつつ、地方の中小企業の採用について井上氏は、「意外と多い印象だと思いますが、実際には相変らず、人口も仕事も大都市圏に集中する現実があります。地方の中小企業の経営者は人事、総務、営業などなんでもこなすオールラウンダー的な役割で、とにかく多忙です。そのため、自社が高い潜在的な競争力や魅力を持っていても、それを求職者に対して適切に発信できていない。また、本事業がスタートした2016年1月時の有効求人倍率は1.28倍で、直近の2019年3月では1.63倍となっています。アベノミクスの成果もあり、景気の緩やかな回復基調が続く中で、地方では以前にも増して、人手不足と採用難の状況が続いています」と話す。

深刻な人手不足と採用難の状況下では、ハローワーク、もしくは縁故採用などに頼る従来の方法だけでは、本当に必要な人材の確保は厳しいと井上氏は続ける。「そのため、地方の企業経営者に親身に寄り添い、人材ニーズを明確化することが、採用企業側と求職者側の双方の溝を埋めることにつながるのではないか、と考えたのです」

もう一つ、経営者の高齢化に伴う、後継者問題も深刻だ。中小企業の半数以上は後継者が決まっていないというデータもあり、このまま地方の中小企業が廃業してしまうと、雇用が失われ、その地方が衰退してしまうという懸念がある。後継者探しもまた、プロ人材事業に課せられた大きな役割といえるだろう。

こうしてプロ人材拠点が各道府県に設立され、2016年1月、プロ人材事業が本格的にスタートした。

地域企業に対する親身なコンサルティングにより、人材要件の明確化を支援

各道府県のプロ人材拠点のマネージャーには大企業OBや地元の金融機関の元役員、県庁の商工部門経験者など、いずれも地域の産業界の実情をよく知る方を、知事が任命する仕組みとなっている。また、各拠点にはマネージャーを補佐するサブマネージャーが2~3名配置される。

マネージャー、サブマネージャーの役割について井上氏は次のように話す。「彼らは、地域企業に対して新事業の立ち上げ、新たな販路の開拓といった成長戦略の立案と、そのために必要な人材ニーズを明確化するコンサルティングを実施します。潜在的な成長力を持つ地域企業の“攻めの経営への転換”を促すとともに、そこで明確化されたプロ人材のニーズを、パーソルをはじめとする民間の人材ビジネス事業者等に取り次ぎ、企業の成長に必要な即戦力人材のマッチングをしています」

相談33,742件、成約5,495件と好調。リピート率3割以上の満足度の高さ

プロ人財事業は2016年1月からスタートして約3年が経過している。

これまでの成果について井上氏は、「2019年3月末時点での累計相談件数は33,742件、成約件数は5,495件です。総体的に事業の認知度と、活動の意義も高まっています。活用企業の満足度の高さは、リピート率の高さに現れています。2018年12月末時点での集計では、プロ人材事業を活用した企業数は2,654社、その中で2名以上採用した、いわゆるリピート企業は960社と36%に上ります。これまで民間人材事業者が市場開拓に苦労していた地方において、丁寧なコンサルティングの実施により、質の高い人材ニーズを多数切り出すことができたという点は、人材紹介業界に対しても、一石を投じることができたと考えます」

45道府県でのプロ人材事業の活動から、具体的な成功事例についてお聞きした。「ある地方の電子機器に使用する精密ネジ等の製造販売会社では、製造工程において強度を高める熱処理工程がボトルネックとなり、滞留品が多いのが課題でした。そこで、プロ人材事業を活用して、大手総合電機メーカーでユニットリーダーを務め、品質保証に知見のあるプロ人材の採用に成功しました。滞留品は従来の1/10となり、月次の目標生産数を達成するなど、生産性を高めました」

高い志と熱意をもったマネージャーが地域企業の採用難に挑む

プロ人材事業の効果が出ていると実感できる成果を獲得できた理由について井上氏は、地方にプロ人材拠点を設立して、丁寧に向き合うコンサルティングを実施したことであると話す。

「特に重要なのは、人の熱意ではないかと思います。各プロ人材拠点のマネージャーをはじめとするスタッフの皆さんには、高い志を持って、精力的に活動いただいています。我々もその支援として、プロフェッショナル人材戦略全国協議会という集まりの場を設け、課題や情報を共有して、互いに刺激や気づきを得るための取り組みを実施しています」

今回、プロ人材事業において民間の人材事業者を活用したことについて井上氏は、「パーソルをはじめとする人材事業者の皆様には、本事業に協力いただき、感謝を申し上げる次第です。今後さらに、各拠点が発掘した仕事の意義を、求職者の皆様へより強く訴求できるように、丁寧な情報提供を行っていただくことを期待しています」と話す。

プロ人材拠点が発掘した人材ニーズは、業務の質もさることながら地方経済への貢献度も高く、地方創生に資するミッションを担うものといえると井上氏は語る。それがしっかりと求職者に伝われば、地方で働きたいと考える方もさらに増えていくだろう。

将来を見据えた人材戦略と投資の必要性を理解し、プロ人材事業を活用する

地方の中小、中堅企業の経営者は、今後の事業継続と発展には多様な人材の確保が重要であることは、既に認識しているだろう。ただ、民間の人材紹介事業者に頼むとコストがかかるため、慎重にならざるを得ないのも実情だ。しかし、人材戦略こそが、将来を見据えて経営者が意思決定をすべき、最大の経営課題の一つであると井上氏は語る。

「今後人材戦略には大胆かつ、着実な投資が求められます。現に、5千人を超える多くの優秀なプロ人材が地方企業で活躍しています。まずは内閣府が公開している『プロフェッショナル人材活用 事例集・ガイドブック』を関係者の方々に見ていただきたいです。また、コスト面に関しては、約半数の自治体ではプロ人材事業を活用した場合の紹介手数料の費用補助を行っています。地域により異なりますのでお調べいただいて、積極的に活用いただければと思います」

求職者の方々へのメッセージ

最後に、求職者の方々へのメッセージを井上氏に聞いた。

「地方には、世界でオンリーワンの技術を持つ、またニッチなマーケットだけれども世界でトップシェアを誇る、あるいは世界最先端の研究開発を行っているなど、大企業、大都市圏の企業に勝るとも劣らない魅力的な企業が数多く存在しています。地方で働くことに不安を感じる方もおられると思いますが、地方にはやりがいのある仕事と、充実したプライベートライフを満喫できる環境があります。実際に、この事業を通じて多くの方がUIJターンで地方への就業、移住を実現されています。その方々にインタビューすると、通勤時間が短い、子育て支援が充実している、住宅に関する金銭的な負担が少ない、自然環境が豊かで生活しやすい、といった大都市にはない地方ならではの豊かな暮らしを実感していらっしゃいます。また、2019年度からは、東京圏から地方へ転職、移住する方に対する支援金支給制度が開始されます*。多様な生き方、働き方を考える上で、参考にしていただければと思います」

プロ人材事業のベースとなる、まち・ひと・しごと創生の総合戦略は2019年が最終年度となる。現在、これまでの成果を振り返り、2020年度からの5年間の第二期戦略を検討中だ。

今後の展望について井上氏は「いずれにしても地方創生の鍵を握るのは、やはり人材であると考えます。多くの優秀な方々が、地方の企業で活躍すると共に、豊かな生活を送っていただけるように、各事業を通じて全力でサポートしていこうと思います」と語る。

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