プロ人材活用のススメ③地方企業こそ攻めの採用を!宮崎県におけるプロ人材獲得の成功事例に学ぶ

事業拡大・事業開発 経営者・役員

本記事では、実際にプロ人材事業を活用して自社の将来を担うキーパーソンの採用に成功した2社の成功事例をご紹介する。1社目は、機械部品加工や製缶製造などを手掛けながら、IT活用による変革を進めている池上鉄工所。もう1社は電気工事や設備メンテナンスなどの主力事業から周辺領域に事業拡大を進める興電舎である。地方企業ならではの“勝ち方”の秘訣に迫る。

株式会社池上鉄工所
「採用は営業だ」~老舗企業の変革にプロ人材採用で挑む

宮崎県の北部、延岡市の株式会社池上鉄工所は1946年設立、72年目となる老舗企業。約5,300坪の敷地面積の工場で46名の従業員が受注生産を中心に設計から機械加工、製缶溶接、工事配管、メンテナンスなどを一貫して手掛ける。全国溶接技術競技会で被覆アーク溶接部日本第2位の「溶接の匠」を擁するなど、高い技術力が自慢だ。

今回、取材に応じてくれたのは専務取締役の松田拓也氏。大学で情報通信工学を学び、東京のベンチャーIT企業に就職。3年間、中小企業向けの業務システムの飛び込み営業を含むタフなビジネス経験を積み、大阪本社では人材派遣会社向けの提案営業も経験。そして2008年、28歳で帰郷し、以降10年間、実父・松田清社長を支え、IT活用による収益向上と競争力強化などにより業績をV字回復させた。2017年には経済産業省「攻めのIT経営中小企業百選」に選ばれる快挙を成し遂げた、若き精鋭だ。

 

●共に経営再建にチャレンジする「右腕」が必要に~プロ人材活用のきっかけ

株式会社池上鉄工所
専務取締役
松田 拓也 氏

松田氏は、プロ人材活用のきっかけを、経営再建してもなお続く“危機感”であると話す。「入社2年目頃、リーマンショックの余波で急激に業績が悪化し、一時は会社の清算も考えたほどでした。祖父が立ち上げ、2代目、3代目、そして諸先輩方や社員が受継ぎ・育てたこの会社を存続、発展させるためにあらゆる努力を重ねて持ち直しましたが、いずれまた同じことになるという危機感と、次の一手を打つ必要性を強く感じました。中小企業ではよくあることですが、私は専務就任後も経営、営業から総務人事まで1人で行っていて、やりたいことが10あっても実際にやれることは1つくらい。将来を見据えて、右腕となる人材が必要でした」

同社が求めたのは、営業と総務人事のプロ人材。松田氏はその理由を次のように語る。「これまでは既存の大手企業の発注に依存し、営業は待ちの姿勢でした。過去の二の舞にならないために、今後の事業展開では、自ら売り込む意欲の高い営業専任のメンバーが必要でした。また、総務人事の専任者を置こうと考えたのは、社員の働き易い環境の整備や良い人材の離職を防ぐには適切な評価を行い、適正な報酬を支払うといった人事制度を整える必要がある。そのために就業規則や組織、評価、賃金などをすべて見直したかったからです」

従来、地方の中小企業ではハローワークや地元新聞広告での募集がほとんどで、採用にコストをかける意識が低い。それでもプロ人材事業の活用を決意したのは、コストをかけてでも人材採用のリターンに期待しからだという。「ローカルツールで探してもいない、たまに応募が来ても見合う人がいないという状況が続いていました。ちょうどその頃、国がプロ人材事業をスタートさせ、周囲の企業も人材紹介会社を活用し始めていました。コストをかけてでも視野を広げ、地元の固定観念に縛られずに私の意図を理解し、共にチャレンジしてくれる人材を採用したかったのです」

●採用は営業だ ~人材紹介会社と面談に自ら乗り込む

松田氏はプロ人材拠点主催セミナーに参加し、企業情報シートを提出。そして、自ら人材紹介会社に赴き、担当者とひざ詰めで話し合い、要望を伝えたという。「私は採用も営業だと考えています。まずこちらに興味を持ってもらい、人材を必要とする背景と熱意を伝える。それには顔を突き合わせて話をするのが一番です。コストをかける以上、推薦される人材とこちらの要望のズレが生じないように細かく要望を伝えました」

そして、各人材会社から挙げられた候補者の職務経歴書をチェックし、これは、という人材には、地域を問わず自ら会いに行く。「最終的に採用した2名は、東京都と徳島県の方でした。共に彼らの職場近くの喫茶店に出向いて、半日くらい時間をかけて話をし、計2~3回ほどお会いしました。『面接』というより、ざっくばらんに当社の方針や、考え方に共感してもらえるか、仕事内容にやりがいがあるかなど、何度も徹底してすり合わせしました」

これらの熱意が功を奏し、同社は希望通り2名の採用に成功。中でも営業職の方は、一度は地元企業に転職したものの、ミスマッチを理由に同社に再転職したのだという。これは何度も顔を合わせて、自社に興味を持ってもらえるよう熱意を直接伝えていた成果だろう。もちろん、人材会社の担当者のフォローも大きな要因です。
候補者のところへ自ら赴き、自社に興味を持ってもらえるよう営業(アピール)をするという積極的な採用活動を行う松田氏であるが、その活動をする上で人材紹介会社を活用する意義を次のように話す。「実際に活用してみてわかったメリットは、そもそも、求める人材が世の中にいるのか、中でも宮崎県で働きたい人がどのくらいいるのかなどの人材マーケットを把握できることです。すべての条件に当てはまる人材がいない場合、どの条件を薄めれば母数が増えるのかわかり、次の手が打ちやすくなります。こういった情報を得られることだけでも、人材紹介会社を活用するメリットは十分にあると思います」

●採用も「待ち」から「攻め」へ ~地方企業こそ「攻めの採用」を

松田氏は自身の経験から、地方の中小企業の採用に関する意識変革の必要性を語る。「募集しても良い人材が来ない、とよく聞きますが、県外の大手企業ほど地方の学校などに積極的に出向きPRしています。そもそも、我々中小企業は地元で知られていないことも多いのです。また、大企業や周囲の中小企業の採用条件すら把握していないなど、採用活動をするための情報が不足していると感じます。もはや、ただ待っているだけでは人は採れません。“攻め”というとWebページの整備や、就職フェアへの参加、といったイメージかもしれませんが、それ以外にも、やれることはたくさんあります。当社では地元の高校や大学、専門学校ともリレーションを日々築き、インターンシップや出前授業・工場見学など、求められれば可能な限りお応えしています。地域に根差した企業として、将来採用できるような人材を育てていく活動も、“攻めの採用”の1つだと考えています。情報を収集して、戦略を立て、欲しい人材と期待するミッションを明確にする。そして最後はやはり「人」です。人材紹介会社の担当者と、もちろんエントリーしてきた人とも顔をつきあわせて熱意を持って話す。私が採用は営業だ、というのはそういう意味なのです」

<企業プロフィール>

企業名 株式会社池上鉄工所
住所 宮崎県延岡市大武町39番地6(延岡鉄工団地内)
創立 昭和21年10月11日
http://www.ikegamitekko.co.jp/
https://seikan-yousetsu.com/

株式会社興電舎
熱意あるプロ人材獲得に成功 ~積極採用と全社教育で事業成長を加速

宮崎県延岡市の浜町に本社を構える株式会社興電舎。1949年創業、70周年を迎えた老舗企業だ。大手企業や官公庁の電気・計装・電力設備の点検、整備など保全サービス全般および、監視・制御システムおよびソフトウェアの設計・開発から保守までを提供。宮崎を中心に、大分、福岡、東京に計7拠点、社員数は約300名を数える。

今回、取材に応じてくれたのは代表取締役 甲斐稔康氏と、プロ人材拠点を通じて採用されたNB(ニュービジネス)推進室長の佐藤昭一氏。甲斐社長は創業者である父・甲斐林蔵氏の跡を継ぎ、2006年5月に4代目の代表取締役に就任。包容力に溢れる穏やかな人柄で、佐藤氏と終始にこやかにジョークを交えながら会話し、両者の関係の良さがうかがえる。

 

●5年間で国内外から100名を積極採用 ~先手施策で競争力の向上と差別化を図る

株式会社興電舎
代表取締役
甲斐 稔康 氏

甲斐氏は事業と採用の関係について、次のように話す。「興電舎の事業は工場、発電所をはじめとする、東九州地域の電力インフラを支える労務提供型のメンテナンスサービスを中心に多角化してきました。事業継続と発展には、人材の確保が欠かせません」

そこで同社は甲斐氏が代表取締役に就任した2006年から積極採用に転じた。2014年からの5年間では50名の採用目標に対し、新卒45名、中途63名の採用に成功し、早期に目標を達成した。新卒採用では中学、高校、大学からの要請に応じてインターンシップなどを積極的に行い、加えてマネジメントを支える人材として大手メーカー企業などからも雇用。さらには中国、韓国、バングラデシュ、インドネシアといった外国人雇用にも積極的だ。

この積極採用の成果を、甲斐社長は次のように話す。「人口減少を見据えて、早期から手を打って積極採用と教育を進め、それが他社との差別化、強みになりました。大手企業も高齢化でメンテナンス技術者が不足し、設備保全のアウトソース需要が急増している。これが好業績につながっています」

●外部連携による社員教育で一人ひとりと向き合う ~全社で取り組む人材強化と定着強化

特筆すべきは、直近5年間の離職者は5名だけという、驚異的な定着率の高さだ。甲斐氏はその秘訣を、徹底した社員教育にあると語る。「新入社員は正式配属まで半年をかけ、座学と現場研修で適性や志向を見極め、ミスマッチングがないように本人の希望も踏まえて配属部署を決定します。部署が魅力的でなければ選ばれないため、社内で競争意識が生まれます。また、彼らを指導するマネジメント層への教育も重要です。管理職にはハラスメント防止など新たな知識が求められますし、多様化に対応して、社員個別のきめ細かな指導を行う必要があります。若手社員に対しては経済産業省が提唱している『社会人基礎力』*をベースに、産業能率大学とタッグを組んで独自プログラムを開発、実施。管理者研修は人吉市の中小企業大学校に管理者を派遣するなど、外部とも積極的に連携しています」

*「社会人基礎力」-経済産業省が2006年に提唱。「前に踏み出す力」、「考え抜く力」、「チームで働く力」の3つの能力(12の能力要素)から構成されており、「職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力」の育成を目的とする。

●予期せぬエントリーで生まれた出会い ~大手自動車メーカー出身の新規事業責任者

株式会社興電舎
NB推進室室長
野田電機工業営業支援室室長兼務
佐藤 昭一 氏

甲斐氏は、宮崎県プロ人材拠点を知ったきっかけと当時の期待を次のように話す。「地元の会合でプロ人材拠点の方と出会い、説明を受けました。通常の採用では難しい全国規模での募集が可能であり、新たな情報と機会が得られるのでは、と期待しました」

当初、興電舎が求めたのは、工場や製造を担うマネジメント人材。しかし、エントリーしてきた佐藤氏のキャリアは、まったく異なるものだった。佐藤氏は自身のキャリアと、エントリーした理由を次のように話す。「私はトヨタ自動車で、開発から販売までの全体を見るゼネラリストとして活動してきました。地元である延岡市に帰りたいという気持ちがあり、採用情報を収集していたところ興電舎の募集を知りました。業界は違いますが、長く地元でものづくりとサービスを提供している点に興味を持ち、応募しました」

甲斐氏は初回面談から役員と共に同席。甲斐氏の人柄とビジョンに共鳴した佐藤氏は、面談後すぐに「興電舎で働きたい」と熱意を込めたメールを送ったという。その後、佐藤氏の採用を決定した。当初求めたキャリアとは異なる人材からのエントリーにも関わらず、採用を決めた理由を甲斐氏は次のように話す。「自社の強みを活かし、お客様と社会の課題に対しどう貢献するかを考え、経営についても見直しを図ってきました。デジタル化やIoTへの対応、提供サービス高度化のための自社製品開発を進め、2017年には大分県の野田電機工業をM&Aにより100%子会社化した経緯もあります。『東九州中核企業』を目指す姿として、受託型から攻めの事業展開を模索する中で、佐藤氏ならその推進役になるのではないか、という期待があったのです」

●やりがいを胸に、新規市場開拓への挑戦 ~新たなイノベーション創出を目指す

佐藤氏は入社後、研修を経て現在はNB(ニュービジネス)推進室長と野田電機工業営業支援室室長を兼務。知見のある自動車業界への営業活動などを通じて、九州北部の市場拡大と新たなマーケットの創出を目指し奮闘している。「入社して、前職のキャリアでは触れることのなかった社会や企業のインフラを支える提供事業の重要性を知り、ますますやりがいを感じました。今後はマーケットの拡大はもちろん、人的リソースに依存が強い運用監視分野の自動化など、新たなイノベーションの創出にも貢献したいと思います」

●採用だけでなく教育が重要 ~社員一人ひとりの成長を促す

甲斐氏は、事業の発展のためには人材の確保と成長するための教育が重要と話す。「採用という入口だけではなく、企業への定着と社員一人ひとりの成長を促すには、全社の協力と教育が重要です。変化の激しい中で、知恵を絞り、試行錯誤して、やれることはなんでもやっていきたい」と語った。

<企業プロフィール>

企業名 株式会社興電舎
住所 宮崎県延岡市浜町222番地1
設立 昭和24年2月16日
http://www.kodensya.co.jp/

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