#30

「発見」が新たなモチベーションに

漫画家 よねまるさん

2014年、『タニクちゃん』で漫画家デビューしたよねまるさん。彼女が漫画家を目指しはじめたのは、社会人になってから。デビュー後もしばらくは、事務の仕事と漫画の仕事を両立させてきたよねまるさんの「はたらいて、笑おう。」とは。

更新日:2019年3月20日

社会人2年目に「漫画家を目指そう」と思った

幼いころから漫画がお好きだったのですか?

漫画を読むのも絵を描くのも好きでした。『ONE PIECE』や『AKIRA』など少年漫画が好きで、自分もあんな風に描けたらいいなと。ただ漫画家になれるとは思っていなくて、あくまで趣味で描いていたんですよね。

大学で日本画を学び、漫画家を目指しはじめたのは社会人になってからでした。書店で事務の仕事をしながら、社会人2年目から社会人向けの漫画教室に通いはじめたんです。「賞に出してみたらどうか」と背中を押してくださったのは教室の先生。思い切って作品を投稿してみたら、月間賞で佳作(ヤングマガジン月間賞)、その後新人漫画賞で準優秀新人賞(第66回「ちばてつや賞」ヤング部門)を受賞し、もしかしたら私にも描けるかもしれないと自信がわきました。

その後、どのような歩みをたどられたのでしょうか。

週刊誌や月刊誌で描きたかったので、いろんな編集部に「持ち込み」をしました。担当編集者さんからフィードバックをもらいながら2年ほど原稿を描き続けたんです。けれど、箸にも棒にもかからない。そんなある時、友人から「GANMA!」さんを勧められたんです。無料で読めるネット漫画があるよって。すぐに応募して、人生初の連載が決まりました。念願の漫画家デビューを果たしたんです。

『タニクちゃん』が単行本出版へ。
漫画一本で生きていく覚悟ができた

漫画家デビューしてしばらくは、事務の仕事を続けていました。根性論で両立させようと奮闘していた時期です。18時に職場を出て21時から深夜2~3時まで原稿と向き合う毎日。締め切り前は、徹夜してそのまま出勤することもありました。過酷な生活を送っていると体調を崩すようになって、モチベーションを上げるのが本当に大変でした。

 

それでも描き続けられた理由は何だったのでしょう。

描くのが好きでしたし、私なりに意地がありました。新人賞をとったときに、うれしくて周囲に報告するじゃないですか。「とったよ!」って。友人たちもすごく喜んでくれて、私を信じて応援してくれるようになりました。担当編集者さんも「続けることが大事。必ず結果は付いてくる」と励ましてくださいました。なんとしても皆さんの気持ちに応えたいと自分を鼓舞しました。

 

それと、両親に認めてもらいたいという思いもエネルギーになりました。両親としては「安定した事務の仕事を続けてほしい」と願っていたんでしょうけど、私は心配されればされるほど、「やってやるぞ!」と力がわく。

転機は、3年前に訪れます。『タニクちゃん』が単行本になったんです。編集者さんの言葉通り、形として結果を出せたことが本当にうれしかったし、形になったからこそ、事務の仕事を辞めて独立する覚悟ができました。

両親も頑張ったねと大喜び。単行本を親戚に配ってまわるほどで、今ではストーリーに口出ししてくるようになりました(笑)。

作品と、私と、読者と。
発見があるからおもしろい

今後、挑戦されたいことは?

たくさんあります。作品でいうと30代の恋愛漫画を描いてみたいですし、漫画のお仕事から派生したイラストのお仕事や、イラスト付きのコラムにも挑戦してみたい。

 

目標にされる漫画家さんはいらっしゃいますか?

おこがましくてすみません!中学生の頃からずっと憧れている今敏(こん さとし)*さんです。今さんは、かつて漫画を描かれていて、キャリアを積んでアニメ監督に転身された方。

「漫画が描けるようになったら世界は広がる」と今さんが示してくださったことで、私の夢も広がっています。

*今敏(日本のアニメ監督・漫画家。代表作『千年女優』『パプリカ』など。2010年没)

そんなよねまるさんの「はたらいて、笑おう。」とは。

発見することです。漫画を描いていると発見することだらけなんです。

たとえば、ネーム(漫画の設計図)がうまくいかなかったときに、ものすごく悔しんでる自分にハッとさせられたり。私、意外と負けん気強いじゃんとか。仕事を通じて新たな自分を発見できるおもしろさがあります。

読者さんから発見をいただくことも多いです。というのも、私はストーリーをつくるのが苦手。読み手がどう思うのかイマイチ想像できないのですが、「GANMA!」さんの魅力は、リアルタイムで読者の感想コメントを読めること。中には指摘やご意見をいただくこともありますが、それもまた発見です。こんな解釈があったか! と小膝を打って、次なる作品づくりの活力にしています。

 

取材・構成:両角 晴香
写真:井手 康郎(GRACABI inc.)

 

漫画家 よねまるさん

神奈川県横浜市出身の漫画家。大学卒業後、書店に勤めながら、マンガアプリGANMA!にて2015〜2017年『タニクちゃん』連載。『タニクちゃん』(祥伝社)1〜3巻刊行中。2018年からは2作目となる『かなたこなた』の連載をスタート。好きなものは多肉植物と漫画と映画とラーメン。

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かなたこなた タニクちゃん(5話まで無料)

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