#22

いつも何か“楽しいこと”がある

料理研究家 リュウジさん

Twitterで公開したレシピが、爆発的に拡散される「バズレシピ」。SNSに30万人以上のフォロワーをもつ料理研究家リュウジさんのレシピがそうだ。「日々の仕事に楽しみを見出せば生活は豊かになる」と語る彼の「はたらいて、笑おう。」とは。

更新日:2019年1月17日

母親や職場のレストランのために始めた料理

料理を始めたきっかけを教えてください。

高校生のころ、母の体調が悪いとき、簡単なスパゲティなどをつくったのが初めてです。母が喜んでくれたので、毎食つくるようになり、料理にハマっていきました。当時はネットで料理のことばかり調べていましたね。

18歳のときに80万円を貯め、「本場のおいしいものを食べたい!」と船旅で約4カ月かけて約20カ国を周ったことも転機でした。もっともおいしかったのは、中国でホームステイしたときに食べた麻婆豆腐。各国の郷土料理や伝統料理を自分の舌で味わったことで、料理の幅が広がったと感じています。材料や料理法の組み合わせが増え、常識にとらわれず新しい発想で料理ができるようになったからです。

料理研究家の仕事はどのようにして始まったのですか?

世界一周旅行の後、4年間のホテルマンを経て、高齢者専用マンションでコンシェルジュの仕事を始めました。レストランを完備していたのですが、「食事がまずい」とクレームが頻発。“料理好き”ということで事務員だった私が、月に2回料理をするようになりました。それが好評で、退職するまで3年間担当していました。一度に40人分の料理をつくっていましたから、身近な材料と素材で、手早く段取りよく作れる方法をいつも意識していましたね。さらに、毎回メニューを変えていたので、オリジナルレシピがたまっていきました。

それをTwitterで発信したところ、「簡単で早くておいしい」と話題となり・・・。書籍化や講演の話をいただくようになり、料理研究家として活動するようになりました。

 

評価されるのも仕事のうち

趣味の範囲から料理研究家になって、仕事に対する意識はどのように変わりましたか?

まず、変わらない部分からお話すると、いまでもアップするレシピは、自分が食べているものだけ。わざわざSNS用に料理を開発することはないし、食材にもこだわりません。普段はスーパーの安売り、おつとめ品などもよく使います。トマトなどは値引きされているもののほうが、よく熟していてソース向きだったりしますし(笑)。化学調味料も使います。料理研究家で化学調味料を使う人はいないので、批判をされることもあります。化学調味料は惣菜にも使われていますし、金額もお手頃だから使っているだけなんですけどね。

ただ、料理研究家として仕事をするようになり、多くの人から料理をつくってもらえるので、自分本位のレシピにならないよう、分かりやすい表現をするように気をつけています。料理を楽しんでもらえるように、旬の食材を取り入れたり話題の料理をアレンジしてみたり。以前より考えるようになりましたね。

これまでは、ただ、ツイートしてもらうのが嬉しかっただけですが、そのリツイート数が仕事として「評価」されているんだ、という意識に変わりました。

 

仕事としての「評価」とは、どういうことですか?

趣味であれば、自己満足でいいと思うのですが、仕事である以上、評価や評判は大事だと思うんです。仕事のやり方や、結果がどう周りに見られているか、ということですから。

会社員時代は、上司や同僚からの意見や仕事量、役職みたいなところで、評価につながっていったのですが、料理研究家になってからは、リツイート数やコメントが、評価の役割を担っています。「おいしかった」「作ってみた」というコメントはやりがいにも繋がりますし、評価されたという嬉しさもあります。

もちろん「給料」も評価のひとつ。いまのフリーランスとしての働き方は、評価が上がれば自分の価値が上がり、仕事が増えて、お金になります。自分次第というところは、会社員と違って面白いところですね。

昨日とは違う今日が楽しい、きっと明日も

リュウジさんが思い描く未来は?

自炊を広めたいと思っています。私は料理が趣味なので、料理以外の話はほとんどできないから、たくさんの人が料理をしてくれたら話題が広がる・・・ということが根本的にあります。

みんなが料理を始めれば、たくさんの友人ができることになります。そうやって、料理やレシピがフックになって、仲間が増えていけばいいなあと考えています。

よく「お店を持つの?」と聞かれますが、私は食べるより、つくることが好き。お店を持つと、同じメニューを作り続けることになりますから、ずっと料理研究家として毎日違うレシピを提案していきたいんです。

 

最後に、リュウジさんにとって「はたらいて、笑おう」とは?

毎日違ったシーンを楽しむこと、です。これまで、ポスター貼りのアルバイトからホテル業、コンシェルジュまで、さまざまな仕事をしてきました。その中で「辞めたい」と思った仕事はありません。休みも少なかったし、高給料でもないけど、いつも何か“楽しいこと”を探していました。

ホテルマン時代は、宴会に料理を運ぶ仕事がありました。ただ運ぶだけではなくて、お客さまにお品書きの内容を一言伝えるとか。コンシェルジュの事務作業でルーチンワークになりがちなときも、作業をゲームにとらえて時間内にクリアするとか。どんな仕事であっても、いつもとは違うシーンの中に楽しみは隠れているものだと思うんです。

自ら楽しみを見出していければ、豊かな生活が送れるのではないでしょうか。

 

取材・構成:児玉 奈保美
写真:井手 康郎(GRACABI inc.)

 

料理研究家 リュウジさん

「今日食べたいものを今日作る!」をコンセプトに、Twitter、Instagramで日夜更新する、「簡単・爆速レシピ」が人気を集める。フォロワー数約38万人(2018年12月時点)。2017年8月に公開した「無限湯通しキャベツ」はTBS『あさチャン!』、日本テレビ『ZIP!』などでも取り上げられて話題に。著書「お手軽食材で失敗知らず!やみつきバズレシピ」は人気レシピ本となり第5回料理レシピ本大賞【料理部門】に入賞。「麺・丼・おかずの爆速バスレシピ101」「ほぼ100円飯 家にある材料でソッコー作れる最高に楽しい節約レシピ」も出版。

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