#17

人に夢を与えること

学生起業家 木村友輔さん

大学2年生で、これまで世の中になかったサッカー指導者のための練習メニューの共有サイト『シェアトレ』を開発し、会社を設立した木村友輔さん。現在も学生として授業と部活に励み、会社経営にもチャレンジしている、木村さんの「はたらいて、笑おう。」とは。

更新日:2018年7月12日

子どもの頃からの夢に挫折した先に見えてきたもの

起業家を目指そうと思ったきっかけについて教えてください

小さい頃はサッカー選手になりたかったんです。怪我の影響もあって練習に打ち込めず、サッカーから気持ちが一時期離れてしまったんです。その間は、ファミレスで自己啓発本を読みふけっていました。そこで出会ったのが、京セラの創業者・稲盛和夫さんの『生き方』。経営者としてはもちろん、一人の人間として稲盛さんがどんなことを大切にしているかが書かれていました。その言葉に「こんな人になりたい」と憧れ、「自分もいつか事業を立ち上げよう」とサッカー選手以外の道を考えるようになったんです。

 

どのような経緯で『シェアトレ』は生まれたのですか?

「サッカーに関わるサービスを立ち上げよう」と最初に決めました。それまでずっと打ち込んできてよく知っているし、夢も見せてもらったサッカーに恩返しがしたいと思ったんです。ただ高校生では事業を立ち上げる経験もノウハウもない。アイデアも出てこない。そこでスポーツの学問・研究が充実している筑波大学体育専門学群を目指すことにしました。大学在学中に事業のヒントがたくさん得られるのではないかと思ったんです。
大学に入るまでは、思いついたことや事業のヒントになるようなことをノートにメモしていました。入学後は、サッカー部に入部し、プレイしながらどこかに事業のヒントがないかと探す日々でした。
そしてサッカー部の活動の一環として少年サッカーチームの指導をしている際に、その「きっかけ」に出会ったんです。まだ指導に慣れていないコーチがどう教えればいいか困り、うまく指導ができなくて、サッカーを嫌いになってしまう子どもがいたんです。このままでは指導者は教えることのやりがいを感じられないし、子どもはもしかしたらサッカーを嫌いになって、夢を諦めることになる可能性があるのでは、と思いました。
「もし正しく効率的なトレーニング方法が簡単に調べられるサービスがあれば、指導側も指導を受ける側もストレスが軽減されるのではないか」と思ったんです。それが『シェアトレ』の原点です。

 

そのことをいろんな人に話してみると、同じようにうまく教えられず困った人、クラブの練習方針が合わずにサッカーを諦めた人がいることがわかり、「自分のアイデアが人の役に立ち、夢の手助けができる事業になる」という実感が持てました。そして興味を持った人や共感してくれた人の力を借りて、アイデアを『シェアトレ』というカタチにしていきました。
少しでも早くこのサービスをたくさんの人に届け、役立てて欲しかったこと、また筑波大学内には学生の起業を支援する体制があったこともあり、大学2年生の時に起業しました。

サービスをリリースした後はいかがでしたか?

始めてみると部活の練習や授業をこなして事業を成長させるというのは大変でした。それで事業に集中するために、1年間休学することを決意。その間は、たくさんのイベントに出席し、特に先輩であるベテランの事業家・経営者の方と出会う機会を増やしたんです。事業を成長させるにはどんな視点や考え方が必要か、アイデアや刺激、アドバイスをたくさんいただけました。また、「どうしたらユーザーが使いやすいか」ということについても、常にいろんな人にヒアリングをしてブラッシュアップをしています。自分が学生としていまもサッカー部に所属しているので、その点ではユーザーの声が汲み取りやすいですね。
現在は復学し、大学卒業後に自分がどうなりたいかを考えています。休学中に出会った方々から刺激を受けたり、先輩経営者に憧れたりする中で、自分のやりたいことがより明確になりました。起業家としての次のステップが見えてきたと感じています。

人に夢を与えるサービスの創出に、人生を賭ける

木村さんの考える「次のステップ」とはどんなことですか?

自分が「サービスをゼロから生み出す」ことに、なにより魅力を感じているのだということに、休学して事業に打ち込む中で気付きました。
これからは、『シェアトレ』のように、たくさんの人の役に立つ、夢を追いかける手助けができるサービスをもっと生み出したいと思っています。
自分で起業するまでは、実はどこか「働く」というのは「我慢して、その対価としてお給料をもらうこと」というイメージだったんです。でも、自分で事業を興すことで、自分にとっての「働く」ことは「人のためになるもの」「人に喜ばれるもの」、そして「人に夢を与えるもの」を生み出すことなんだ、と考えるようになりました。そしてそのことが、なにより自分にとって楽しく、やりがいがあると感じています。

木村さんにとっての「はたらいて、笑おう。」とは?

僕が考える起業家としてのやりがいは、「人に夢を与えられる」こと。もちろん一人では難しい。だから、たくさんの仲間を集めて、助けてもらいながら進めたい。たくさんの仲間がいれば、躊躇せずにチャンスを逃すことなく動けるし、難しいことにもチャレンジできるはず。フットワーク軽く、たくさんの人と出会いたいですね。もちろん、学生の時間も楽しみたい。いまできることはしっかりと、全部やっておきたい。人に夢を与えるためには、まず自分が後悔のないようにやりきって生きなければ。そのためにも部活、授業、事業と時間の使い方は悩ましいですね(笑)。
そうやってでも働きながら世の中にまだないサービスを生み出し、そのサービスを利用して夢を叶えられる人が増えたなら、本当に気持ちいいでしょうね。「人に夢を与える」ことこそ、自分が心から最高の笑顔になれる、人生を賭けてもいい仕事だと感じています。

 

取材・構成:橋本 こうたろう
写真:井手 康郎(GRACABI inc.)

 

学生起業家 木村友輔さん

現役の筑波大学3年生。体育会蹴球部所属。大学2年生で、サッカー指導者が無料でトレーニングメニューを共有できるサービス「シェアトレ」を開発。月に6万人以上が利用するサービスに成長させる。株式会社シェアトレを創立し、自身が代表取締役に。シェアトレのアイデアによって全国規模のビジネスコンテストで3度の優勝を果たし、世界大会にも出場。今後はさらなる新規サービスの開発を目指す。
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