パラレルキャリア部門

死ぬ瞬間「おもしろかった」と満足できる人生に。
脳外科医とファッションデザイナーを両立する
全力パラレルキャリア

Dr.MAAYA

脳外科医兼ファッションデザイナー

Drまあや

岩手医科大学医学部卒業後、慶應義塾大学脳神経外科に入局し、脳外科医として10年キャリアを積んだのち、日本外国語専門学校海外芸術大学留学科に入学し、ロンドンのセントラル・セント・マーチンズへ留学してデザインを学ぶ。帰国後は脳外科医とファッションデザイナーのパラレルキャリアに。2013年にDrまあやデザイン研究所を設立し、翌年には初個展を開催。メディアにも多数出演する。

脳外科医とファッションデザイナーの二つの顔を持つDrまあやさん。平日は東京の病院に勤務し、週末は北海道の病院での当直も引き受け、それ以外の時間でデザイナーの仕事をするという多忙なスケジュールの中、昨年アパレルブランド「Dr. MAAYA」の初ファッションショーをカナダで開催し、海外進出を果たしました。おもしろさを追求し、あらゆる苦難を乗り越え今と向き合うDrまあやさんのパラレルキャリアは、どのように生まれたのでしょうか。

「キラキラ女子がダメなら自立した女になろう」医者を目指して猛勉強した青春時代

― Drまあやさんが医者を志した理由を教えてください。

超リアリズムな祖母に「お前はたぶん結婚できないから、手に職をつけたほうがいい。できれば医者になりなさい」と言われて育ったんです。小学生までは「なんでそんなこと言うんだ」と思っていたのですが、中学校に入って現実が見えてくると、自分の立ち位置がわかるじゃないですか。「きっとキラキラ女子にはなれないし、結婚や出産で女性としての幸せをつかむ未来も想像できない。だったら真剣に勉強して医者になり、一人で生きていける力をつけよう」と中1の春に決断しました。それからはみんなが仲良く遊んでいるのを尻目に、青春は捨ててでも医者になろうと猛勉強しましたね。

― かなりシビアな考え方をなさっていたんですね。

私は自分の容姿への諦めが発端でしたが、どんなに華やかな人も裏では厳しい現実と向き合っています。小学生の頃の愛読書は『女性自身』で、芸能人のスキャンダルなどを読んで「いつ何があるかわからない」という意識を強く持っていました。「不幸に直面しても、自信を持ってうまく立ち回るにはどうしたらいいんだろう」と考えたら、武器となる職を持つのが一番だと感じました。

「死ぬ瞬間に後悔したくない」と一念発起。33歳で夢見ていたデザイナーを目指して留学

― 前向きに考えた処世術でもあったんですね。では、デザイナーを志したのはいつでしょうか?

脳外科医になってから10年が経った33歳のときです。研究がうまくいかなくて教授に怒られ、落ち込んでぼーっとしながら山手線をぐるぐる回っていたら、これからのキャリアと孤独死する自分が浮かんできて、味気ないなあと思ったんです。
そのとき、日本外国語専門学校海外芸術大学留学科のオープンキャンパスの広告が目に飛び込んできました。もともと、ものづくりが好きでファッションの大学に興味があったので、すぐにオープンキャンパスに行って話を聞いて、ファッションデザイナーを目指そうと決意しました。医者の仕事を続けながら日本外国語専門学校に1年間通い、世界三大ファッション大学のひとつであるセントラル・セントマーチン芸術大学に2年弱留学しました。

― すごい決断力と行動力です。医者の仕事を辞めず、パラレルキャリアを選んだ理由は何ですか?

私は頭が良い天才タイプではなく、中学からずっと吐きながら勉強して、ようやく医者になったんです。それほど頑張って手にした仕事を捨てる気にはなれませんでした。医者に戻れるか不安でしたが、たくさんの患者さんが目の前で亡くなるのを見て「人生は一度きりだ」と痛感していましたから、死ぬ瞬間に後悔しないように全部やり切ろうと思いました。

否定された悔しさと反骨精神を燃料に、地道な努力を積み重ねた7年間

― デザイナーの勉強や仕事は順調に進みましたか?

いえ、全然。留学中は私のやり方が先生に理解されず「あなたはデザイナーには向いてない」と否定されました。留学後も何を作れるのかわからず、どうしたらおもしろい服が作れるか試行錯誤して、ようやくグルーガンを使う今の方法にたどり着いたものの、初めての展示会は知り合いしか来なくて悲しい思いをしましたね。

― その悲しい思いをどのように乗り越えたのでしょうか。

まずは展示会ができたことを良しとしよう、1年に1つ目標を掲げて次につなげていこうと考えました。あとは反骨精神ですね。ロンドンで否定されチャンスを与えられなかった悔しさや、否定した人たちを見返したい気持ちが今も燃料になっています。7年間努力してようやく初のファッションショーに漕ぎつけました。

パラレルキャリアの両輪が折れそうな心を支えてくれる

― 7年間、コツコツ努力を続けたんですね。

今も挫折の日々で、心が折れそうになりながら服を作っています。そういうときに、20年積み重ねてきた医者のキャリアが支えになりますね。患者さんやご家族に「ありがとうございます」と言われると自信を取り戻せて「まだまだ私にもできることがあるんだ」と思えるんです。

― パラレルキャリアならではですね。東京と北海道での医者の仕事とファッションデザイナーの仕事を両立なさっていますが、どんなスケジュールで動いているのですか?

かなりハードですね。土曜日の朝5時半に都内の自宅を出て、北海道の病院に10時半に着いたらそのまま外来に行き、月曜日の朝まで当直です。終わったらすぐに羽田行の飛行機に飛び乗って都内に戻り、小平の病院で17時まで外来を担当、その後はアトリエでファッションデザイナーの仕事をします。クリニックのない日は木曜日だけですが、巣鴨のアトリエにいて、ほとんどデザインの仕事に明け暮れていますね。

― すごいスケジュールですね。なぜ北海道に行かれているのですか?

北海道は深刻な医者不足で、私みたいに東京から足を運ぶ医者がたくさんいるんですよ。平日は現地の医者が忙しくはたらいているので、土日くらいは私たちみたいな外部の医者が手伝えればと思い、15年くらい続けています。

目標を叶えた瞬間、すべてが報われる。念願のファッションショーでランウェイを闊歩

― ハードでも前向きにパラレルキャリアを続けていらっしゃる姿が印象的です。忙しくても、大変でも、「はたらいて、笑おう。」を実現するにはどうしたらいいでしょうか?

不況の今、笑いながら仕事をするのは難しいですよね。それでも目標を持って仕事をして、目標を達成できた瞬間に笑えるんだと思います。去年のバンクーバーでのファッションショーがそうでした。反響が少なくてもセレクトショップの合同展示会や百貨店への出店などを重ねて、ようやく実現した初のファッションショーです。
デザイナーはあまり表に出ないんですが、どうせならランウェイを歩きたいと思って「うぇーい!」とハイテンションかつ笑顔で出ていきました。そうしたらもう拍手喝采、スタンディングオベーション。その様子を見た知人たちが「なぜこんな服を作っているのかわからなかったけれど、やりたいことがわかった気がする」と言ってくれて、うれしかったですね。それをきっかけに、ニューヨーク、ロンドン、ミラノのファッションショーからお声がかかり、次のチャンスにつながりました。

― ランウェイを歩いているとき、どんな気持ちになりましたか?

走馬灯のように今までのことが駆け巡りました。順風満帆に乗り越えてきたわけではなく、崖から突き落とされるような思いをたくさんしてきましたけど、現実やダメな自分から逃げずに向き合って前に進んできて、ようやくここにたどり着いたんだなあ、と。
目標を叶えた瞬間、すべてが報われます。私はファッションショーで拍手喝采を浴びたとき、それまで死に物狂いで準備してきた苦労が一瞬で吹き飛びました。「目標を達成して笑うために、コツコツ努力して笑えるときを待とう」と考えて仕事をしています。

― 今後はどんなことにチャレンジしたいですか?

2020年の目標はニューヨーク進出、最終目標はパリコレです。世界中の人に「Dr.MAAYA」というブランドを知ってもらって、カラフルなおもしろい服を着ると明るくハッピーになれることを伝えたいです。
あとは「脳外科医のデザイナーがいるんだ」と私自身をおもしろがってもらえたらうれしいですね。私の人生のキーワードは「おもしろい」で、常におもしろいと感じる選択肢を選んできました。おもしろいと人生が楽しくなるし、どんな悩みも乗り越えられます。これからもおもしろさを表現していきたいです。

(文・秋 カヲリ 写真・北村 渉)

PERSOL Work-Style AWARD 2020

パラレルキャリア部門
受賞を受けて

このたび、このような賞をいただき、大変光栄に思います。多様化が進む昨今、「はたらき方」は、これから益々混沌としていくことでしょう。選択肢も増え迷いも生じると思いますが、時事の状況に合わせて、過去に囚われすぎず柔軟に対応し、どれがベストな方法なのか探りながら「面白い人生」に向かって進めたらいいな、と思います。死ぬ瞬間に「生きていて、よかった!」と言えたらいいですね。

Drまあや

WORKS

  • バンクーバーファッションウィーク 2020SS
    (ファッションショーの様子)

  • イベントの様子

Drまあや (脳外科医兼ファッションデザイナー)

Drまあやさんの作品は下記よりご覧いただけます。
また、Drまあやさんへのお問い合わせは下記よりご連絡いただけます。

HP: https://www.dr-maaya-labo.com/
EC Site: https://drmaayalabo.fashionstore.jp/
Instagram: @dr.maaya.labo
Facebook: @dr.maaya.labo
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