PERSOL Work-Style AWARD 2021

Rina Akimoto

ふるさと貢献部門

食べチョク 代表
(株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長)
秋元 里奈

神奈川県相模原市の野菜農家に生まれる。 2013年に慶應義塾大学理工学部を卒業後、株式会社ディー・エヌ・エーに入社。webサービスのディレクターや新規事業の立ち上げなどを経験する。
2016年に株式会社ビビッドガーデンを創業。2017年にオンライン直売所「食べチョク」を立ち上げる。「食べチョク」はリリース3年で利用率No.1の生産者特化ECに成長。2020年には「Forbes 30 Under 30 Asia」に選出される。2020年9月よりTBSのニュース番組「Nスタ」の水曜レギュラーコメンテーター。

生産者のこだわりが正当に評価される仕組みをつくりたい。オンライン直売所で日本の第一次産業を変えていく

全国のこだわり食材や花を生産者から直接オンラインで購入できるサービスを提供する「食べチョク」。2020年は新型コロナウイルスの感染が拡大により膨大な量の食材が行き場をなくし、生産者たちは「食べチョク」に助けを求めました。日本の一次産業の課題を解決するためにこのサービスを立ち上げたという創業者の秋元里奈さんに、はたらくことを通して実現したいこと、未来の夢を伺いました。

「農業は儲からない。銀行員になれ」と言われた学生時代。実家の荒れた畑を見て解決したい課題に出会った。

—大学卒業後はモバイルゲームなどを配信するIT企業に。入社を決めた理由を教えてください。

もともとは金融業界ではたらこうと思っていたんです。母がことあることに「農業は儲からない。銀行員か公務員になれ」と言っていた影響で。そのため金融業界を中心に就活をしていたのですが、ふと参加した前職DeNAの入社説明会で創業者の南場さんの想いにふれ、ここではたらきながら自分が本当にやりたいことを見つけたいと思うようになりました。

—そのときはまだ自分がやりたいことを見つけていなかったのですね。

学生時代に見えていることには限りがあると思うんです。なので、はたらきながら自分が本当に情熱をかけられることを見つけようと思いました。ただ、学生時代に学園祭の実行委員となった経験からゼロから物事を考え、そこから複数のメンバーと一緒に目標を達成する楽しさには目覚めていました。そういう意味では、正確さが何よりも重視される金融業界より、スピード感を持って新しいものをつくりだす分野に惹かれたのかもしれません。

—具体的にはどのような出来事が起業のきっかけになったのでしょう?

入社して3年が経つころ、まわりの仲間は自分のやりたいことをみつけて転職するなどそれぞれの道を歩みはじめていました。けれど私にはまだ心の底からやりたいことがみつからない。日々の仕事は楽しくてやりがいもあるけれど、一生をかけて挑戦したいことには出会えていませんでした。そのころたまたま実家に帰ったときに、耕作放棄地となったかつては色鮮やかだった畑が目に入ったんです。小さいころに遊んでいた畑がなくなってしまったことを悲しく思い「どうしてこうなってしまったんだろう」といたたまれない気持ちに。それからは週末を使って全国を回りたくさんの農家の話を聞いてみることにしました。すると「頑張って野菜をつくってもなかなか儲かりづらい。息子には継がせたくない」とみなさんがおっしゃることに共通点を発見。農業はたくさんの人が同じ課題を抱えている。ようやく自分がやるべきことをみつけたと感じました。

生産者のみなさんとの約束を守るため、諦めるわけにはいかなかった

—創業後、どのようなことに苦労されましたか?

ビジネスモデルが決まったタイミングで前職のエンジニアに片っ端から声を掛けましたが、入社を断られ続けました。紹介をお願いしたり求人サイトを使ったりもしましたが「社会的な意義は感じるけどビジネスとしては厳しそう」と言われ、一緒にはたらいてくれる人を見つけることは容易ではありませんでした。そのため創業から10カ月間は私一人で会社を運営。ほかにも「食べチョク」をオープンした最初の月の売上が2万円しかなかったり、70社に投資を断られたりと軌道に乗るまではたくさんの苦労がありました。

—心が折れそうな経験ですが、なぜいままで頑張れたのでしょうか。

絶対にうまくいくはずだと思い続けたこと、それから生産者のみなさんが応援してくださったことが理由です。「こだわってつくった食材がきちんと評価されるようにする」。彼らに言ったことを絶対に実現させなくてはならないと思いました。商品が売れると生産者の方々は本当に喜んでくれるんですよ。
「食べチョク」にはユーザーが声を投稿できる仕組みがあって。自分のつくったものがおいしかったとか、どのように料理して食べた、といった消費者の声が届くことは生産者のみなさんの喜びなんです。直接声が届くことでやりがいがみつかったとおっしゃっていただいた方もいました。自分が事業をやめたらその声が届かなくなってしまう。諦めることはできませんでした。

生産者が正当に評価される仕組みを作りたい

—「食べチョク」に登録することで生産者の方の生活は変わってきているんでしょうか?

「食べチョク」では月に1,000万円以上売り上げる方がいらっしゃいますから、単純な比較はできませんが、売り方を変えただけで収入にも大きなインパクトがあったといえます。既存の流通システムでは、生産者に価格決定権はありませんでした。けれど「食べチョク」では生産者自らこだわりを伝え、そして生産者が価格を決めて販売できます。そのためこだわりを持って生産された商品が正当な価格で評価されるようになり、なかには「子どもに後を継がせたい」という生産者さんも現れはじめたんです。

—それはうれしい変化ですね。

「食べチョク」を始めた根底には「私の家と同じ道をたどる人を減らしたい」という思いがありました。結局私のうちは、先祖から受け継いできた畑、技術、想いを途絶えさせてしまった。家が守ってきた彩り豊かな畑を荒れ地にしてしまったんです。そんな流れを断ち切りたくて、社名である「ビビッドガーデン」という名前は、色鮮やかな農地が残っていくようにという想いを込めてつけました。

—いまや「食べチョク」によって日本の農業そのものが変化をはじめていますね。

生産者数が減少していく中で、農地を集約して大規模化を目指す流れには賛同しています。けれど中小規模の生産者も置き去りにしてはいけない。たとえ少し非効率であっても、伝統的な種を守っている方、棚田などの日本ならではの景観を守ろうと手作業でがんばられている方などもいます。私たちはこれからも、規模の大小に関わらず、こだわりを持って生産されている方に選択肢を提供し続けていきたいです。

コロナ禍で行き場を失った食材を消費者とつなげて全国の生産者を救いたい

―2020年はコロナ禍で大量の食材が行き場を失い、生産者が「食べチョク」に助けを求めました。

飲食店の営業が難しくなり販路が断たれ、生産者のSOSが聞こえてくるようになりました。「食べチョク」では緊急事態宣言が出る前の3月2日から支援を宣言。送料を一部負担したり、SOS特集を組んだりして生産者を支援しました。これまでも災害が起きた地域からSOSが届くことはありましたが、今回は規模が違った。そしてこれからもっと酷くなることも見越して急いで方策を練りました。その結果、2020年2月末から5月末の流通額は前年比の約35倍、年間の流通額は約42倍となりました。登録者が増えたことは喜ばしいことでしたが、当時は増え続けるSOSに対応し、大量の食材を捌いていくことで手いっぱい。日々忙しく、何かを感じている余裕はありませんでした。

—頼られる喜びがある反面、とても大変だったのですね。

疲れたときは農家さんが送ってくれた手紙を読みました。「おかげで在庫がはけた」「牡蠣が8,000個売れた。ありがとう」といったメッセージに元気づけられ、なんとか踏ん張ろうと思えました。

—これからの目標はありますか?

ネットに不慣れな高齢の生産者も置いてきぼりにしないシステムづくりです。これからもこだわって食材をつくっている生産者が正しく評価され正しく儲かる仕組みをつくっていきたいですね。

まずは目の前のことに夢中になってみることが「はたらいて、笑おう。」への第一歩

―秋元さんの考える「はたらいて、笑おう。」とは?

私の好きな言葉に「努力する人は夢中な人に勝てない」という言葉があります。私にとっていまの仕事は思いっきり夢中になれる、楽しくて幸せなこと。一次産業に対する課題は大きいですが、答えのない仕事をすること、知恵を絞ってゴールへ向かうことは面白いです。人生においてはたらいている時間は短くありません。それならその時間は、自分が貢献したい領域に思いっきり費やしたいなと思っています。(文・大川 祥子  写真・北村 渉)

ふるさと貢献部門
受賞を受けて

このような賞をいただきとてもうれしいです。一次産業は課題が多いですが、その分伸び代が大きい領域だと思っています。まだまだ道半ばですが、「生産者のこだわりが正当に評価される世界」の実現に向けて、引き続き邁進してまいります。

秋元 里奈さん

食べチョク 代表(株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長)

このような賞をいただきとてもうれしいです。一次産業は課題が多いですが、その分伸び代が大きい領域だと思っています。まだまだ道半ばですが、「生産者のこだわりが正当に評価される世界」の実現に向けて、引き続き邁進してまいります。

秋元 里奈さん

食べチョク 代表(株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長)

WORKS

  • 農家さん巡り(2020年6月)
  • 農家さんととれたてのきゅうりを食べる(2020年7月)
  • テレビ番組に生出演する秋元
  • みずほ銀行主催の「Mizuho Innovation Award 2020」を受賞
  • 社員と生産者のこだわり食材について語る

秋元 里奈 食べチョク 代表(株式会社ビビッドガーデン 代表取締役社長)

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