アクティブシニア部門

92歳のインスタおばあちゃん。
行き当たりばったりの人生を楽しみ、今を生きる考え方とは

Kimiko
Nishimoto

写真家

西本 喜美子

92歳。20代の頃には美容師、競輪選手の職を経験。結婚を機に専業主婦に。72歳の時に長男が運営する写真教室「遊美塾」に参加したことをきっかけに、個性豊かな写真を撮るように。74歳でMac 講座にも参加し、デジタルアート制作を行う。2011年に熊本県立美術館分館で初個展を開催し、ゴミ袋に身を包んだ姿などユニークな写真が話題を集める。2016年に初写真集を出版。

92歳の写真家・西本喜美子さん。72歳で写真を習い始め、ゴミ袋に入ったり、車にひかれたりする一風変わったor個性豊かな姿を撮影した自撮りが話題を呼び、「自撮りおばあちゃん」と人気を集めました。2018年に始めたインスタグラム(@kimiko_nishimoto)は2020年3月時点でフォロワー数22万人超。今に至るまでの過程と、90代になってもアクティブに写真を楽しみ続ける秘訣を伺いました。

何かを始めるのは意外と簡単。72歳でカメラデビュー

― 72歳で写真を始められたとのことですが、どんなきっかけがあったのですか?

長男の写真教室「遊美塾」を見に行ったとき、生徒さんに誘われたのがきっかけです。生徒さんが写真を通じて自由に表現を楽しんでいる姿を見て、「写真っておもしろいな」と初めて思ったんです。「お母さんも写真を撮ったらどうですか」と言われて写真教室に入りました。

― 72歳からのスタートは大変ではなかったでしょうか?

ちっとも大変じゃなかったですよ。確かに最初は「これでいいのかしら」と不安でしたけど、息子から「写真に上手い下手はあっても、良い悪いはない。写真はカメラじゃなく頭で撮るものだ」と教わって、「自由に楽しめばいいんだ」と思えるようになりました。
いまだにカメラのことは全然わかりませんし、足腰が悪くて動き回ることもできないので、大体オートモードで撮ってます。オートとマニュアルのダイヤルを回すことならできますから(笑)

― それは意外です!西本さんのお写真は、どれもユニークで魅力的ですね。

何を撮ったらおもしろいか、いつも一生懸命考えていますね。撮影スタジオに行っても、構図が思いつかなくて長いこと悩む日もあります。同じポーズでも立つ位置によって写り方が変わりますから、撮っているうちに細かいところがどんどん気になってきて、つい没頭しちゃいますね。

全部の写真がお気に入り。瞬間を全力で楽しんでいるうちに有名人に

― いままでの写真の中で、どの写真がお気に入りですか?

一番は選べないです。習ったことを生かして、そこに自分のアイデアをプラスして撮影して…。そうやってがんばって撮った写真ばかりなので、全部お気に入りですね。
特に人気で話題になったのは、私がゴミ袋に入っている写真。遊美塾で自撮りの宿題が出て、ちょうどゴミの日だったから「自分がゴミ袋に入ってみようかな、年齢的にも捨てられたっておかしくないし」と思いついて撮ったものです。表情は「自分が捨てられてしまったら」と想像しながら作りました。だれだって捨てられたら悲しいでしょ(笑)

― なんとも悲しげな表情です(笑)この写真が多くのメディアに取り上げられ、一躍有名になられましたね。

はい、びっくりしました。その時、その瞬間、シャッターを切って楽しんでいたら、いつの間にか、あちこちから取材されるようになって、写真集を出すことになって…。2018年にインスタグラムを始めてからは「インスタおばあちゃん」とも呼ばれるようになりました。こんな日が来るなんて想像もしていなかったです。

気になったら、とりあえずやってみる。楽しいと思ったら、続ける

― 昔から注目されるタイプだったのですか?

いえ、小さい頃は、人の後ろに隠れているようなおとなしい子どもでしたよ。結婚してからはずっと専業主婦で、息子は当時の私のことを「何の特徴もない人だった」と言うくらい“普通の人”でした。
でも、好奇心は人一倍旺盛でした。20歳の時に家の敷地内で美容院を開業したのですが、室内での仕事なのでなかなか外に出かけられなくて退屈でした。競輪選手だった弟たちが日本中を旅しているのがうらやましくて、美容院を畳んで競輪学校に通い、22歳で女子競輪選手になったんです。自転車を袋に入れて担ぎながら全国を旅しましたね。

― 美容師、競輪選手、そして写真家と、多彩な経歴をお持ちですね。

美容師も競輪選手も写真家も、もともと興味があったわけではないんです。ある日、興味が湧き、「やってみよう」と思っただけ。何でもやってみないとわかりませんから、あれこれ考えずに自分の気持ちに正直に向き合って楽しむようにしています。とりあえずやってみて、楽しいと思えたら続ければいいんです。

死ぬまで写真を撮り続けたい

― 写真はどんなところが楽しいですか?また、どんな風に「はたらいて、笑おう。」を実感していますか?

わざわざ「写真の何が楽しいか」なんて考えたことはないですが…、「撮る時」だけじゃなくて、撮った後に見返して「もっとこうすればよかったな」と考えるのも楽しいですね。実は結構負けず嫌いなので、「もっといい写真を撮りたい」という気持ちが原動力になっています。あと、私の写真で誰かが笑ったり喜んだりしてくれるのがうれしいですね。
写真をやっていなかったら、今ごろどうなっていたんでしょう(笑)写真を始めてから遊美塾を通じてたくさんのお友達ができて、九州だけじゃなく日本全国からお友達が遊びに来てくれるようになって、毎日が楽しい。だから、92歳になる今でも明るく元気でいられます。

― いつまで写真を続けたいですか?

死ぬまでずっとです。私にはちょっと重たいんですが、毎日カメラを持って歩いてますよ。寝たきりになってもカメラは手放さないでしょうね。お布団の中から天井を見上げて、端っこのクモの巣を撮っていると思います(笑)

(文・秋 カヲリ 写真・北村 渉)

WORKS

  • 西本喜美子 写真展「遊ぼかね」

  • ©Kimiko Nishimoto

  • ©Kimiko Nishimoto

  • ©Kimiko Nishimoto

  • ©Kimiko Nishimoto

西本 喜美子 (写真家)

西本喜美子さんへのお問合せ・ご依頼の方はContactよりご連絡いただけます。

Instagram: @kimiko_nishimoto