【静岡市長 田辺信宏】オンリーワンの人生を謳歌しよう。 | PERSOL(パーソル)グループ

 

  • #03

  • 静岡市長
    田辺 信宏

オンリーワンの人生を謳歌しよう。

若い時は「東京に行かなければ自分の人生は始まらない」と思い、静岡を出て東京の大学に進学しました。そしてさらなる刺激を求めて、先進国英国の首都ロンドン近郊にある大学院へ留学し、より広い世界へと飛び込んでいったのです。

ところが、ロンドン郊外のライフスタイルは東京とまったく異なるものでした。定時に帰って自分の時間を楽しむのは当たり前。ゆったりと流れる時間のなかで自分らしい人生を歩める、今、日本ではしきりに言われる「ワークライフバランス」に優れた暮らしが、当たり前のように定着していました。当時、東京の大企業に就職し、朝から晩まで働くのが成功のモデルケースとされていた日本の価値観とは全く違ったのです。

その時「ひょっとしたら、先進国の世界水準で考えたら、静岡での暮らしが自分らしい人生かもしれない」と気づきました。人口過密地域で、当時流行っていたTVCMのように、「24時間 戦えますか」とばかりに、周りに負けないように押し合いへし合い、過度の競争の中で生きるだけでは自分を見失ってしまいます。それから、他人と比べる生き方ではなく、たった一度きりの人生、悔いのない自分らしい人生とは何かを考えるようになりました。

田辺信宏

日本は周りとの調和を優先して“自分らしさ”を捨ててしまう人が多いです。ロンドンでは高齢の女性も毎日メイクやファッションを変えて楽しんでいますが、私の祖母は目立たない地味な恰好をしていました。知らず知らずのうちに自分を犠牲にし、我慢している人が多いのです。「自分はこれくらいでいい」と思っていたら、それ以上の自分にはなれません。大きな夢を描けばもっと高い場所からの景色が見られるのに、もったいないと思いませんか。

周りを気にせず、オンリーワンの自分らしい人生を歩んでください。たとえば「富士山は日本でナンバーワンの山です」と伝えても「海外にはもっと高い山があるじゃないか」と言われてしまいます。しかし「富士山は、雪化粧や優雅な稜線が美しい、世界でオンリーワンの山です」と伝えたらどうでしょうか。本当の魅力はそこにあるのです。たった1人がナンバーワンを目指すのではなく、全員がオンリーワンを目指してこそ、魅力的で成熟した社会に成長できます。

オンリーワンを目指す時も、苦しいことがあるでしょう。私も挫折や失敗、敗北を経験してきました。落選し続け、8年間フリーターだったこともあります。「田辺はもう終わった」と言われ、懇意にしていた後輩に無視されたこともありました。

そんな時に私を支えてくれたのは、故松下幸之助からいただいたお皿です。そこには、ご本人が揮毫された、“大忍”という言葉が書かれていて、最初は「なぜせっかくの巣立ちの時に、“飛躍”などのポジティブな言葉ではなく、ネガティブな言葉を書くのだろう」と不思議に思っていました。

しかし、あの頃“飛躍”という文字を目にしたら、「周りはどんどん出世しているのに、俺は全然飛躍できていないじゃないか」と心が折れてしまったと思います。地の底を這うような日々でしたが、“大忍”の文字を見るたび「今は大きく忍び耐える時なんだ」と踏ん張ることができました。このお皿がなければ、私は今ここにいないでしょう。

目の前の困難のハードルが高ければ高いほど、それを乗り越えた時の喜びはひとしお大きいものです。その時の喜びは、何にも代えがたいものですから、それを信じて歩み続けるのみです。

田辺信宏

田辺 信宏

Tanabe Nobuhiro

静岡市長

静岡県静岡市出身。早稲田大学政治経済学部卒業。1985年、松下政経塾に入塾。1987年からイギリスのサセックス大学院に留学。1991年、静岡市議(1期)。1995年、静岡県議(3期)。2000年から静岡産業大学情報学部講師に。2011年より現職。

※この記事は2018年3月の取材を基に作成し、同4月4日に掲載されたものです。

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