#3 2017年6月2日放映 カフェらいさー

定年後、人との接点が途絶え社会から孤立

2013年10月に開業した「カフェらいさー」。

 

11時の開店に向け、パンの仕込みが続く。

 

スタッフ:けっこう楽しそうですね。

村上:楽しいですね、やっぱり。ものができていくというのは、子どもの頃の工作じゃないですけど、銀行で札勘定したり営業したりしているよりは、こっちのほうがおもしろいかもしれないですね。

「カフェらいさー」は米粉で作ったパンとシフォンケーキのお店。米粉は水分を吸収しやすく、しっとりもちもちとした食感が人気。しかし、どうして銀行員だった村上さんがパン屋さんを開くことになったのだろうか?

転職のキッカケ

村上:60歳になった時に、継続雇用ということで65歳まで働けるという選択肢はあったんですよ。ただ、母親が田舎でちょっと体調が悪かったので、長男の務めでもあるし、田舎に帰って看病しようということでいったん帰ったんですね。
ただ、急に悪化して亡くなってしまったので、田舎で1人いてもなにもやることはないし、ぶらぶらしてると健康にもよくないし、話し相手もいないし、これではダメだなということで。

定年後、まだ元気な60歳。しかし、なにもしないでいると心も身体も衰えていく実感があった。なによりも人との接点が途絶え、社会から孤立していた。

村上:本当によくないので、それはなんかしなきゃいけないっていうのはあったんですよ。

ダメになっていく自分。これを払拭するため、仕事を探し始めた。

村上:ハローワークには通ってたんです。なかなかないですよね。60過ぎて、仕事を通じて自分が充実するとか、そういう仕事はなかったと思いますね。

そんなときに偶然出会ったのが米粉パンの無料講座。この時、パンづくりに魅力を感じ、なんとお店を開業することに。

村上:やったことがなかったので、新しいことをやるということについてものすごくやっぱり楽しみがありました。だから、「おもしろそうだな」という感触はありました。

人の役に立っているという実感

 

村上:焼きあがりました。

開店1時間前、パンが焼きあがってきた。

スタッフ:だいたい1日に何人ぐらいお客さんがいらっしゃるんですか?

村上:そうですね、1日15~20人、多いときで27、28人という感じですかね。

はたしてそれで採算がとれるのだろうか?

スタッフ:あの、一応赤は出ないぐらいっていう感じなんですか

村上:平均すると、最近はそうですね。

3年目にしてやっと黒字の月も出てきたそうです。

働く楽しさ

村上:自分が人様の役に立っているという実感が得られるのがやっぱり楽しいというか。それはぶらぶらしていてなにもしていないときに比べると、もう格段に違いますよね。

決して稼ぐということが目的ではなく、人の役に立ち、人とのつながりを求め、大切にしてきた。

スタッフ:村上さんってパンを扱う手つきがやさしいですよね。

村上:やっぱり自分の子どもみたいなものですからね。

村上さんの愛情がこもったパン。そんなパンを求めて近所の人がお店に買いに来ます。
オープン当初からお店を手伝う川西さんは村上さんの起業についてこう語ります。

 

川西充代氏(以下、川西):老後をどう生きるかということで目標を見つけてなにかされるということはとても良いことだと思います。うちも主人がいますので、定年して家でゴロゴロなにもしないでやることがないよりも、とても人生的にはすばらしい。

次にお店の看板メニューの1つ、米粉のシフォンケーキを作り始めた。このシフォンケーキ、米粉パンの講座で教わったもの。今では少し自己流のアレンジを加えている。

スタッフ:メレンゲなんか作ったことはあったんですか?

村上:いや、ないです。メレンゲという言葉すら知らなかった。これをやるまではシフォンケーキなんて食べたことなかったですもんね。知らぬが仏じゃないけど、知らなかったからできたようなもので、最初からそれを目指してたら、とてもね。

勢いで飛び込んだ、まったく知らなかったパンの世界。実際にお店をオープンしてみてどうだったのでしょうか?

村上:いろいろな人に手伝ってもらってなんとかなったという感じですよね。まあ「やってみればなんとかなる」というのが正直なところですよね。

これから定年後の再就職がカギに

原田:こちらが村上さんのシフォンケーキですね。

 

友近:うわ、やわらかいね。本当ふわふわ。いただきます。

 

友近:(シフォンケーキを食べて)う~ん、ふわふわしっとり、最高の食感。

原田:やわらかいですね。

佐藤:おいしい。

原田:スタジオにカフェらいさーの村上さんにお越しいただきました。よろしくお願いいたします。

村上:よろしくお願いします。

 

友近:よろしくお願いします。本当においしいです。

村上:そうですか、ありがとうございます。

友近:だって今までシフォンケーキとか食べたこともないし、作ったこともなかったんですよね。

村上:そうなんです。はい。

友近:それでお店の商品になるというのが、もう私たちびっくりしてるんですけど、かなりお勉強もされたんですか?

村上:いえいえ。

友近:されてない?

村上:職業訓練の講座で2日ぐらいやっただけですね。

佐藤:2日やってできるんですか。これが。

友近:すごい!

村上:一応レシピみたいなものがあるので。

友近:でも、やっぱりセンスがもともとあったんでしょうね。

村上:いやいや。

(一同笑)

友近:否定はしますけれども。

村上:どっちかというと不器用なほうなので。

友近:不器用で本当になにも知らなかったから、逆に成功したということなんですかね。

村上:そうですね。きっと。

原田:最近やっと黒字になってきたとお話しされていたんですけど、なかなか黒字にするのは難しいんですか?

村上:銀行でも、やっぱり創業赤字といって3年間の赤字は仕方がないという1つの基準みたいなものがありまして、最初からある程度覚悟をしてましたので、ほぼそのとおりという感じですね。

友近:銀行員をやっていてよかったですね。そういう計算とか、あとはそういうビジョンがあると焦らずにできますよね。

村上:そうですね。わかってますからね。それはものすごく役に立っています。

友近:素敵。

原田:では裕さん。今回の定年退職からの起業、見えてくるのはどんなキーワードでしょうか?

佐藤:はい。ずばり「セカンドキャリア」ですね。セカンドキャリアというのは、もともとアスリートが引退したあとの就職だとか、子育てを終えた主婦の方のもう1回目の就職がフォーカスされていましたが、今は定年後の方々の再就職がセカンドキャリアという話で盛り上がっていますので、まだまだ増えるんじゃないかと思っています。

原田:どういう人が向いているとかはあるんですか?

佐藤:志が強い方だとか、今回のように社会とつながりたいという思いが強ければ強いほど、一歩は踏み出せるんじゃないかなと思いますね。

コミュニティに欠かせないのは「場所」と「食」

11時、開店の時間。

村上:いらっしゃいませ。

近所で働く常連さんが来店です。

村上:ありがとうございます。

スタッフ:よくこちらに来られるんですか?

客1:そうですね。おいしいので。

村上:ありがとうございます。やっぱり小麦のパンとはちょっと食感が。

客1:ぜんぜん違います。本当はパンはそんなに好きじゃないんですけど、ここのパンはやっぱり食べやすいというか。

村上:ありがとうございます。

スタッフ:ああいう言葉を聞くとうれしいですか?

村上:そうですよね。「あんまり食べないんだけど、ここのは食べる」って言われると、結局、存在価値があるということですもんね。

3年目にしてお店もやっと知れ渡ってきました。

客2:私は知らなくて初めてうかがったんですけれども、そしたら「なんかもちもちしてて普通のパンとは違うのよ」ってお友達が。

客3:先週買っておいしかったので(笑)。

スタッフ:あ、買ったんですか。ここのパン好き?

客4(子ども):うん、好き。

スタッフ:おいしい?

客4(子ども):おいしい。

カフェらいさーでは喫茶スペースも設けている。

村上:一応コーヒーと紅茶をお出しする。コミュニティに欠かせないのは「場所」と「食」ですよね。それだけじゃないんですけど、それがあると集いやすいし、食べ物を食べながら話すと話も弾む、ということです。
だから、そういうものが各地域に少しずつでも広がっていくといいなと。とくにこれから独居老人というのはどんどん増えていくので。

自らが孤独感で押しつぶされそうだった時期を振り返り、コミュニティ、つながりを広げたいと考えている。

このあとは、村上さんが自転車でおでかけ。いったいどこへ行くのだろうか?