――今回、ワークショップを導入されたきっかけを教えてください。
前年度の先生から「すごく良かったよ」と聞いたのが最初のきっかけです。
ちょうど本校では、総合的な学習の時間の柱として「“生きる力”を育む」というのを掲げていて、その前半のテーマが「職業について」という内容だったんです。
実際にワークショップのホームページを見ると、「はたらく」を考える対話形式のワークショップになっていて、一人ひとりが主体的に未来を描いて行動する力を育むという内容が、まさに私たちがやりたいことと一致していたので、お願いしました。
もともとは2年生の2学期(11月)の職業体験前後にワークショップをお願いする予定でした。ただ、打合せの際に、生徒が自分たちで考えてアウトプットしたり、色々な大人と関わってみたりする機会を増やすことが、本校が目指す方向性にフィットするのではとご提案いただいたことで、1学期~2学期にかけて実施予定のカリキュラムに合わせて、「動機づけプログラム」「おとなインタビュー」「しごとリアル」の合計3回のワークショップをお願いする形になりました。(*)
200人超の生徒が一気に引き込まれるファシリテーション
――実際に実施してみて、印象に残ったことはありますか?
まず、講師の話し方が本当に上手だなと感じました。
私たち教員は、「教える」という立場でついつい注意したりとか、注意を向けるために「こっち向いて」みたいな声のかけ方をしたりするんですけど、講師の方は一切それをされなかったんですね。喋り続けている生徒に対しても、注意をするのではなく、お話の面白さで引き込んでいくところがすごいなと。200人超の生徒を一気に引き込むファシリテーション力に、正直、大人の私たちが学ぶことの方が多かったです。
体験を通して育まれた、「はたらく」と「責任」への実感
――子どもたちの 「はたらく」ことへの考え方に変化はありましたか?
ワークショップ前は、「はたらく=お金を稼ぐこと」「やらなきゃいけない義務」「大変で苦しいもの」という捉え方がほとんどでした。それが、自分の「好き」を生かすことや、誰かの役に立つことなんだ、という視点に変わっていったのは大きな変化でした。
その上で、職場体験に行く前は「お客さん」という立場しか知らなかった生徒が、実際に職場体験に行ってみると、これまで「普通」や「当たり前」だと思っていたことが、決して当たり前のことではなかったのだという感想を抱いていました。自分がこれまで感じていた「普通」や「当たり前」は、誰かがその状態を当たり前のように支えてくれていたからこそ成り立っていたという気付きは、自分たちがこれまでとは違う立場に立ってみたことで学ぶことができた、大切な気づきだったのではないかと感じます。
実際に職場体験で、「お客様から『ありがとう』と言われてやりがいを感じた」と話していましたので、「はたらくって、大変なだけじゃないんだ」と実感できたのだと思います。
――子どもたちの行動面での変化について、印象に残っていることはありますか。
3回のワークショップを通して、最初の約束事として「正解はないよ」と伝えてもらえたことが大きかったと思います。
基本的に生徒同士の学び合いが重視されているワークショップの中で、日頃、発言が苦手な生徒ほど、「間違ってもいい」「否定されない」という安心感の中で、自分の考えを自由に、自信を持って発言していました。
全体の場で、今までほとんど発言したことのない生徒が、いきいきと手を挙げて話していたときは驚きましたね。それを周りの生徒が自然に受け止める空気が生まれていて、「すごくいい時間だな」と感じました。
話し合い活動がとても活発に行われていた姿が、特に印象に残っています。自分たちで話し合い、決めたことをきちんと実行しようとする姿勢が見られるようになりましたし、講師の方もおっしゃっていましたが、「やると決めたことには責任を持つ」という意識が、子どもたちの中に少しずつ根付いてきているように感じます。
そうした意識が入っている生徒については、「やらなければならない」という自覚が芽生え、行動力にもつながってきているのではないかと思います。
現在2年生で、学年の中心が3年生から2年生へと移る時期でもあるのですが、「今度は自分たちがやらなければならない」という意識が高まったことで、中心となって話し合いを進めたり、積極的に意見を出したりする生徒が増えてきたように感じています。
現場のリアルが加わることで深まったキャリア学習
――導入されてみて、先生方の立場からどんな価値を感じられましたか?
キャリア学習は重要だと分かっていても、どうしても教員の負担が大きくなりがちです。特に職場体験は、受入先との交渉や調整など、準備にかなりのエネルギーが必要です。
今回、その部分を任せられたことで、負担が大きく減りました。その分、生徒の様子を見ることや、学びの中身と向き合うことなど、本質的な部分に集中できたのが大きかったです。
私たちは教員としての経験しかありません。職場体験をどのように「はたらく」に繋げていけばいいのかというのが結構難しい部分だったんですが、パーソルさんは、多様な業種・はたらき方を知っていて、教員だけでは伝えきれない「社会人の視点」を凝縮して伝えてくれる。体験型の3回のワークショップがあったからこそ、生徒の「考える力」が深まったと感じています。これは、私たちだけではできない価値だと感じました。
「答えを教えない」 授業だからこそ、生徒が考え続けられる
――最後に、ワークショップの導入を検討されている先生方へ、メッセージをお願いします。
全力でおすすめしたいです!
このワークショップの一番の価値は、「答えを教えない」ことにあると思っています。
大人が「はたらくとはこういうものだ」と提示するのではなく、生徒自身が「はたらくって何だろう」と考え続けられる。その時間がしっかり確保されています。
実際、話し合いの中では「はたらく」という言葉一つとっても、本当にいろいろな考え方が出てきました。こちらが用意した答えに向かわせるのではなく、生徒たちが自分たちで問いを立て、意見を出し合っていく。そのプロセス自体が、とても豊かだと感じました。
私も同感です。「正解を出す」授業ではなく、自分たちで「はたらくとは何か」を深めていける構成になっています。
そして、その考えを持ったまま職場体験に行き、実際の現場で確かめてくる。この流れが本当にうまくつながっている。事前のワークショップ、職場体験、振り返りという3回の構成は、とても完成度が高く、自信を持っておすすめできます。
(*)実際のカリキュラム例
※掲載している内容・所属は取材当時のものです。