日本企業のための外国人材雇用とこれからの採用戦略

新在留資格で本格化する、採用グローバル時代に必要な戦略と意識改革

 
 
PERSOL Global Workforce株式会社
代表取締役社長
多田 盛弘 氏

パーソル総合研究所と中央大学による「2030年 労働市場の未来推計」では、2030年に「644万人の労働者が不足する」との試算を公表している。国内の人口減少が進む中で、600万人以上の労働者不足を解消するためには、外国人材の活用が欠かせない。「多くの日本企業が外国人材に対して抱く誤った認識が、グローバル人材戦略の足枷になっている」とPERSOL Global Workforce株式会社 代表取締役社長 多田 盛弘は指摘する。日本で2019年4月から新しい在留資格がスタートし、日本企業における外国人材の活用拡大への機運も高まっている。10年後を見据え、今から取り組むべき外国人材戦略に必要なポイントについて多田が具体的かつ実践的に解説する。

日本企業の外国人材に対する
誤った認識が人材戦略の足かせに

「外国人材は企業にとって安い労働力であると、多くの日本企業が捉えているこの見方が外国人材の可能性を著しく狭めてしまっています」と、多田は指摘する。多田は過去20年間に30カ国で現地人材を活用した経験を有し、日本の中小企業の海外展開支援の経験も豊富だ。

「日本は外国人材にとって今やそれほど魅力的な国ではなくなってきています」と多田は話し、その背景を説明する。「新興国の経済規模の変化おいて、過去25年間のGDP(名目)の変化率は、日本の約1倍に対し、日本で働く外国人労働者のトップ3である、中国が30倍、ベトナムが18倍、フィリピンが6倍です。今や日本経済が圧倒的に強かった時代ではないという認識をもち、外国人材をいかに獲得、活用していくかという視点が大切です」

さらに、日本企業が抱く外国人材への認識について、次のように続ける。「日本企業の外国人材に対する認識が現状とずれていると感じる点がいくつかあります。例えば新興国は日本に対しまだまだ労働力を供給し続けられるだろうという認識です。ベトナムや中国はすでに高齢化社会に入っており、近い将来、日本に労働力を供給していた国が人材獲得に参入してきます」

人材獲得の重要なポイントとなる賃金においても、日本は今やアドバンテージがあるとはいえないと多田は強調する。「基礎人材の最低賃金は日本の地方よりも韓国のほうが高く、台湾の場合は単純労働の契約で額面給与は安いが、住居などを提供するケースがあり、手取給与で日本の競争力がなくなってきているのが現状です。また、看護・介護人材を世界中に供給しているフィリピンの場合、フィリピン人の看護師は海外での人材需要が多く、アメリカに看護師として採用された場合は月額40万円ほどとれるというケースもあります。また、ヨーロッパではフィリピン人の看護師を介護士として採用するケースが増えており、その場合も月額25万円以上のケースがほとんどです。ミドルレベルの人材獲得では、フィリピン企業ではなく、海外企業との獲得競争に勝つことが必要です。さらにIT人材に関しては、インド工科大学の成績優秀の卒業生に提示された欧米企業からの初任給は3,000万円から4,000万円でした。外国人材だから人件費が安いという時代ではなくなっています。パーソル総合研究所が実施した「APAC就業実態・成長意識調査(2019)」によると、APAC(アジア太平洋地域)の都市部での年収比較において日本は14カ国・地域の中で6位でした。給与競争力の観点でも日本は厳しい状況にあります」

多田は、一部の日本企業が外国人材に対し差別的労働環境を提供し、技術実習のみで年間9,000人以上が行方不明になっているといったネガティブな情報が新興国の都市部で広がっており、日本ブランドが棄損されていることも人材獲得の難易度を上げる要因になっていると付け加えた。

 

中長期のグローバル人材戦略の
策定が喫緊の課題

日本国内の採用状況に関して、パーソル総合研究所と中央大学による「2030年 労働市場の未来推計」において、2030年には644万人の労働者が不足するとの試算があるという数字を提示した。600万人以上の労働者不足をカバーするためには、女性やシニアの活用、生産性向上など国内の施策だけでなく、外国人材を活用しなければ経営が成り立たなくなる事態が起こり得る。日本企業が外国人材を活用する際に高いハードルとなるのが在留資格だ。

「労働ビザではないという体面をつくりつつ、留学生や技能実習を合わせて50万人以上の外国人材が日本で働いています。本音と建て前がある形で在留資格を設計しているため、非常にわかりにくく、企業としては使いづらいというのが日本における在留資格の現状です。企業が活用できる主な在留資格は、技術・人文知識・国際業務、留学生、技能実習に加え、2019年4月から特定活動46号、特定技能1号という新たな在留資格がスタートしました。ミドルレベルのビザが整備されたことで、基礎単純作業レベルからミドルレベル、高度レベルまで、どういう在留資格でどのレベルの外国人材を活用するか、戦略を立てることが可能になりました」(多田)

多田は新しい2つの在留資格について解説した。1つ目の特定活動46号は、国内の留学生・卒業生を対象とし、日本語要件が母国語に近いレベルのN1が必要となる。大学で学んだ知識や能力を活かせる技術・人文知識・国際業務に加え、サービス業など専門性が高くない業務への配属も可能とされている。在留期間に上限はなく更新も可能。日本人採用と同等の考え方で活用、採用できるメリットがある一方で、労働者側に多くの選択肢があるため容易に採用できない。

2つ目の特定技能1号は、介護、農業、電子情報関連など14業種が定める技能試験に合格すること、または技能実習2号終了(3年)すると無試験で移行できる。日本語要件はゆっくり話すと会話できるレベルのN4以上が必要となる。在留期間上限は5年とし、建築と造船のみ特定技能2号に移行し上限なしの更新が可能。介護に関しては、3年目以降で介護福祉資格を取得することで在留介護への移行が可能になり期間の制限はなくなる。技能実習より業務制限の少ない唯一の基礎レベルの労働ビザであるというメリットの一方で、管理業務が通常の労働ビザに比べて多く、管理を外部委託した場合に追加コストが大きい。

多田は、冒頭で提示した「外国人材は安い労働力」という日本企業の誤った認識に対する回答として、「外国人材は日本企業にとって安い労働力ではありません。特定活動46号も特定技能1号も、給与に関して『同職種の日本人と同等以上』と明記されています」と語り、こう続けます。「事務管理面で追加コストがかかるため、日本人よりも高い経費が必要となる可能性もあります。外国人材を安い労働力として雇用するのは、費用対効果の観点からも間違った人材戦略といえるでしょう。日本人よりも高い人件費がかかるのであれば、日本人よりも優れた外国人材を採用し活用していくという発想の転換が必要です」

最後に、多田は中長期の外国人材戦略に必要なポイントについて言及した。「人口減少が続く中、単年度の人材不足の補填ではなく、中長期のグローバル人材戦略の策定が喫緊の課題となります。どういう在留資格でどのレベルの外国人材を獲得し、今後10年で何割を外国人材に置き換えるか。人材レベルごとの調達・育成と、語学を含めた受け入れ態勢の整備が必要です。受け入れ体制では、他国と比較して自社の条件に競争力があるのか、グローバル視点で条件を見直すことが大切です。またパーソル総合研究所の「外国人雇用に関する企業の意識・実態調査」によると、外国人雇用企業の40%近くが『言語・コミュニケーション』に課題があると回答しています。技術と語学はトレードオフです。どちらを重視するかで受け入れ体制も変わってきます。10年後を見据え、中長期のグローバル人材戦略に今から取り組むことが、企業の持続的成長を実現する上で重要なポイントとなります」

 

本記事は2019年10月23日開催の「PERSOL CONFERENCE 2019」の講演を記事化したものになります。

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