労働関連法の改正で激変する労働市場

今すぐ企業が取り組むべき戦略的人材活用とは?

 
パーソルホールディングス株式会社 取締役専務執行役員 兼
パーソルテンプスタッフ株式会社
代表取締役社長
和田 孝雄

2013年の労働契約法改正、2015年の労働者派遣法改正、そして2018年に国会で可決、成立した働き方改革関連法によって、企業の人材活用方法に大きな変革の波が訪れている。これら労働関連法の改正への対処を進めるとともに、将来的な人材活用のポートフォリオを見据え、正社員・契約社員・派遣社員・パート・アルバイト・業務委託などさまざまな人材リソースをどう活用していくべきか。パーソルホールディングス株式会社 取締役専務執行役員 兼 パーソルテンプスタッフ 代表取締役社長 和田孝雄が、労働関連法改正の概要と留意すべきポイント、そして企業にもたらされる影響と早急に取り組むべき対策について解説した。

労働関連法の改正で激変する企業の人材活用

2013年の労働契約法改正、2015年の労働者派遣法改正は、過去に例を見ない、まさに「地殻変動が起きた」とも言うべき大きな法改正となった。さらに2018年6月には働き方改革関連法が成立、労働市場の激変と合わせて、企業を取り巻く環境は大きな変革期を迎えている。
パーソル総合研究所の調査によれば、構造的な労働人口の変化が生じており、2020年には384万人、2030年には644万人の労働人口が不足するとの結果が報告されている。この結果は今後も経済成長が1.2%の水準で伸びる一方、海外労働者が来日しないという前提のもとに示されたものだ。RPA(Robotic Process Automation)などIT化の推進による生産性向上が実現されたとしても、労働力は不足すると予測されている。
和田は、「そうした変化の中で、労働関連法の改正が続いています。世の中で騒がれている労働契約法の『5年ルール』、労働者派遣法の『3年ルール』に加え、働き方改革関連8法案の成立により、企業の人材活用は大きな転換期の真っ只中にいると言えます」と訴える。
ここで総務省が発表した、労働人口の実態に目を向けると、個人事業主や経営者を除いた日本の5,459万人の労働者のうち、派遣・契約社員が約550万人を占めている。つまり、オフィスで働いている人の8人に1人は、派遣社員または契約社員となるわけだ。
そうした中で、労働契約法改正、労働者派遣法改正に伴い、派遣社員や契約社員を始めとする有期労働者の直接雇用や無期雇用転換が進む、いわゆる『2018年問題』が今まさにピークを迎えている。実際にパーソルでも企業・組織に対して約10万人の人材を派遣しているが、そのうちの約2万人近くが労働者派遣法で定めた「3年ルール」の対象となっている。派遣先企業は労働者の希望により、直接雇用を受け入れるのか、派遣会社の無期雇用へと転換した労働者を継続して受け入れるのか、3年の契約で終了し別の派遣社員を受け入れるのか、選択を迫られているのだ。
一方、働き方改革関連法では、雇用形態に関わらない公正な待遇の確保を柱の1つとして掲げている。その中には「同一労働同一賃金」が謳われており、企業は2020年4月の施行に向け、その対応も進めていかなければならない(図1)。

図1労働関連法改正の大きな流れ(パーソルホールディングスまとめ)

 

有期労働者の全社実態と業務の可視化が急務

改正労働関連法のそれぞれについて、企業にもたらされる影響、および行っていくべき対策について解説した。
まず改正労働契約法について和田は、「改正労働契約法の一番の肝は、『雇止め法理』であると考えています」と強調する。有期労働契約の期間が5年と定められたことで、5年経った方々のうち希望者については無期雇用に転換する必要があります。改正労働契約法では「一定の不合理な場合について雇止めを認めない」という雇止め法理を、これまでの判例に基づいて明文化している。そうしたことから、契約社員に対して、客観的かつ合理的な理由、または社会通念上、相当の認識を有している状態でなければ契約終了は難しいのが現状だ。「有期のプロジェクト業務である、5年で契約が終了する、と初めから認識してもらっているのであれば雇用の終了に問題はありません。しかし、過去から働いてもらっている契約社員の方々に、今回の労働契約法の内容がどこまで浸透しているかが大きなポイントとなります。今後、企業においては、契約社員は将来的に無期雇用に転換する前提でいなければなりません」。(和田)
そうしたことから、企業では下記に挙げる4つの項目を早急に実施しなければならない。

(1)有期労働者の全社実態の把握(どの部署で、何人が、いつから、どんな契約で働いているのか)
(2)無期転換対象者の特定(無期転換の希望者はどのくらいいるのか)
(3)無期転換社員と正社員の処遇の可視化
(4)無期転換に伴う費用試算

「契約社員については、現場で採用や人事管理が行われているケースが多々あり、本社人事部門は該当者が何名いて、何年前から就業し、今後何年まで就業するか、契約内容を把握していないケースもあります。そうした状況をいち早く把握したうえで、今後の人材計画を立案していくことが非常に重要となります。また、現場の人材活用に目を向けると、契約社員で活躍している方は非常に多い。プロジェクト業務、定形業務と、それぞれに携わる契約社員の業務可視化をしっかり行っていくことも不可欠になります」。(和田)

続いて、改正労働者派遣法についても話題に触れた。労働者派遣法の改正により、いわゆる「専門26業務」を含めた全職種について3年を上限とした期間制限が制定されたことで、企業においては大きな人材の入れ替わりが、3年あるいは毎年発生することになる。和田は「そうしたことから、企業は社内の業務を可視化し、それが3年ごとにローテーションしたほうがよい業務なのか、3年を超え継続して業務にあたってもらうことで生産性を向上できる業務なのかを判断し、棲み分けなければいけません」と説明する。
また、事業所の抵触日対応についても忘れがちであり、抵触日対応に遅れたならば、企業が派遣社員を直接雇用しなければならないケースも出てくる。
そうしたことから、企業は下記に挙げる4つを早急に実施しなければならない。

(1)派遣社員が行っている業務の可視化
(2)標準化できる業務とそうでない業務の切り分け(3年以内での人員交代の可否)
(3)事業所抵触日の対応
(4)無期雇用派遣社員受け入れ整備 (就業先評価ができる体制の構築)

人材活用戦略の立案に向け
「コア業務」「ノンコア業務」を再定義

働き方改革関連法の柱として掲げられている「同一労働同一賃金」の原則についても言及した。主な内容として、「基本給、賞与の均等・均衡待遇の確保」が謳われているが、「均衡」「均等」という2つの言葉について考慮が必要だ。つまり、均衡は近ければ良いが、均等は同じでなければならず、この2つの言葉の意味合いの違いはかなり大きい。一例を挙げると、各種手当金の給付に際しても、均等であれば一定の手当金が無期社員と同様に有期社員に支払われるが、均衡の場合は業務内容や職責などに応じて有期社員には支払われないケースもある。ここでは、無期社員と有期社員に支払われる手当金等の差について、不合理とならない理由の説明が求められる。「例えば職能給や、転勤等を伴う住宅手当の場合は、支払う額に差があっても合理的な理由があるとされます。一方で、精勤手当や超勤手当はどんな契約形態でも変わらないため、賃金体系を変えるのは不合理となります。同一労働同一賃金の考えに基づき、手当金を精査していくと、有期/無期社員とでほぼ同じにしなければなりません」。(和田)
また和田は、「派遣社員については、原則派遣先均衡となっており、派遣先において派遣労働者と就業先社員の賃金水準との均衡をとらなければならないことも、今回の法案の大きな主題となります。合理的な説明が可能であれば、両者に待遇差があっても良いですが、その根拠をしっかりと明文化する必要があります。例えば、契約期間や就労時間の差は合理的な説明にならないため、派遣労働者と就業先社員において、明確に担当する業務を分ける、といった対処が必要です」と説明する。
そうしたことから、同一労働同一賃金を前に企業が行うべき対応策は次の3つとなる。

(1)人材活用の基準の明確化(社員・契約社員・派遣社員・業務委託 RPA・デジタルレイバー等)
(2)待遇差に関する合理的説明の明文化
(3)各種福利厚生、教育制度等の洗い出し

これからの人材活用戦略とは、「コア業務」および「コア人材」の再定義にある。つまり、何が本当のコア業務で、何がノンコア業務なのかを定義し、それぞれの業務において社員、契約社員、派遣社員や業務委託などの外部人材リソース、AIやロボットなどデジタルレイバーの活用を考えていかなければならないのだ(図2)。

図2 人材活用のポートフォリオの変化

 

最後に和田は、「多くの企業は社員に、より付加価値の高い本当のコア業務に携わってほしいと考えています。一方で、定形業務に代表されるようなノンコア業務については外部人材リソースを積極活用する必要があるでしょう。企業はコア業務、ノンコア業務を明確化するとともに、運用手段を整備していかなければなりません。合わせて、業務そのものの変化を見据え、5~10年先の人材戦略についても考える必要があります」と訴えた。

 

お問い合わせ

受付時間 9:00-19:00(土日祝日を除く)

PAGETOP
PAGETOP