「人生100年時代」を前に企業が取り組むべきこととは?

ミドル・シニア躍進支援のための人材マネジメント

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    法政大学大学院 政策創造研究科 教授 石山 恒貴 氏
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    株式会社パーソル総合研究所 コンサルティング事業本部 シニアマネジャー 石橋 誉

少子高齢化時代の本格到来による働力不足が社会問題化する中で、企業においては40~60代の「シニア・ミドル」世代の躍進が急務の課題となっている。今後の労働力の主軸となるシニア・ミドルの躍進を促すために企業はどのような取り組みを進めていけばよいのか。講演では、法政大学大学院教授の石山恒貴氏とパーソル総合研究所が実施した「ミドル・シニアの躍進実態調査」の結果に基づき、躍進を加速させるエンジン、阻害するブレーキ要因を明らかにすることで、企業が早急に行うべき、ミドル・シニア活用のための方策について提示した。

高齢化時代の働き手の主軸:
ミドル・シニアの躍進を促す5つの行動

少子高齢化による労働力不足が社会問題として浮上する中、「人生100年時代」構想が叫ばれ、高年齢者雇用安定法の改正も視野に、企業の継続雇用年齢を70歳まで引き上げられる検討が政府により進められている。そうした背景から、企業においては、いかに60代以上の人員が躍進できる職場を作っていくかが急務の課題となっている。だが、一定の年齢を迎えた時に管理職の職務を解かれる「役職定年」や、定年後も働けるものの、給与の激減が生じる「定年再雇用」などにより、40~54歳の「ミドル層」、55歳~69歳の「シニア層」において、仕事に対するモチベーションが保てなくなるケースは少なくない。

今後、ミドル・シニアが働き手のボリュームゾーンを占めることが予想される中、引き続き職場で躍進してもらうためには、ミドル・シニアの躍進の実態をつまびらかにして阻害する要因を明らかにする一方、躍進を促す“打ち手”を早急に開発していかなければならない。

法政大学大学院 政策創造研究科 教授 イノベーション・マネジメント研究科 兼担教授の石山恒貴氏とパーソル総合研究所は、2017年に約4,700名を対象に「ミドル・シニアの躍進実態調査」を実施。その結果によれば、躍進している人物の行動の特性として、下記の5項目が挙げられたという(図1)。

 

図1 ミドル・シニアの躍進を規定する5つの行動特性

(1)仕事を意味づける
(2)まずやってみる
(3)学びを活かす
(4)自ら人と関わる
(5)年下とうまくやる

「この5つの行動の特徴を、我々は『躍進行動』と名付けました。これらの躍進行動は、性格などのように変化に時間がかかるわけではなく、日々の行動の変化によって改善できるため、短期間の取り組みで躍進を促すことが可能です」。(石山氏)

さらに「5つの行動特性」に基づき分析を行った結果、ミドル・シニア社員は「ハイパフォーマータイプ」(19.1%)、「バランスタイプ」(30.2%)、「伸び悩みタイプ」(38.3%)、「事なかれ・安住タイプ」(8.7%)、「不活性タイプ」(3.7%)の5タイプに分類された。石山氏は、「全体の約4割を占める『伸び悩みタイプ』は、5つの行動特性の平均スコアが少しずつ低い傾向にあります。しかし、先述した通り、行動の改善はさほど困難ではないため、伸び悩みタイプの躍進行動をいかに促すかが重要です」と訴える。
そこで、躍進行動を促進するエンジンとなるもの、そして阻害するブレーキ要因について、年代別に「上司のマネジメント行動」、「職場の人間関係」、「研修・カウンセリング」、そして「本人の仕事・キャリア意識」に基づいて分析したところ、図2に示すような項目群が挙げられた。

 

図2 ミドル・シニアの躍進を促進するエンジンと、阻害するブレーキ項目

中でも、ミドル・シニアの部下を持つ年下の上司による「年齢逆転マネジメント」において、躍進のための大きな改善のポイントが潜んでいる、と石山氏は指摘する。
「年下の上司は年上の部下に対して責任ある仕事の割り当てをする割合が低く、なおかつ、定期的な会話を行う割合も低いことがわかりました。ミドル・シニアは自分の責任や裁量でもって仕事をしたいし、社内の情報が回ってこなければ疎外感を感じ、モチベーションも低下する。特にこの2つは躍進のエンジンとなるものであり、いかに『自分にここでやるべきことがある』と思ってもらえるかが重要となります」。(石山氏)
この他、ミドル・シニアの入り口にあたる40代前半から研修などによるキャリア支援を行ってくことも、企業が躍進を促すために不可欠な施策となる。自身のスキルを見直す機会を早期に提供することで、将来的なキャリアの変化に備える意識が醸成され、ひいては躍進行動の促進に繋げられるからだ。
石山氏は、「最近の研究によれば、たとえ年齢を重ねても努力したり新しいことを学んだりすることで、知識も体力も伸びていくことが判明しています。つまり、自身が成長を望めば、年齢に関係なく成長することができるのです」と強調する。
そして、働く個人の意識として、今後、下記に示す5つの「自走する力」が不可欠になるという。

(1)自ら動く:やらされをなくす
(2)考え直す:仕事を意味づける
(3)年齢を超える:年下とうまくやる
(4)すぐやる:停滞させない
(5)学びを活かす:うざがられずに影響力を発揮

「マネジメントのやり方、考え方を少し変えるだけで、自走する力を育成することは可能です。今後のキャリア育成は、単に知識を蓄積させるのではなく、たとえば料理のやり方さえ覚えれば自力で新しいレシピを生み出していけるように、個人が変化に対応できるスキルを習得するものでなければいけません。つまり、自走する力を養っていくことこそがキャリアそのものであるといえます。学びを通じて自己実現を図っていけば、私たちはいくつになっても躍進することができるのです」。(石山氏)

ミドル・シニアの躍進を支援するため、
3つのプログラムを提供

これまで述べてきたように、伝統的な日本企業の標準キャリアマップが大きく変化している中で、パーソルはミドル・シニア世代の躍進を支援してくため、下記の3つのプログラムを提供している

① 本人向けRCPプログラム (躍進行動促進支援) ※RCP:Realistic Career Preview
② 本人向けRCPプログラム (トランジション支援)
③ 上司向け研修

(1)の躍進行動支援プログラムは、自己の状態、意識・行動の現実を振り返るとともに、内省、言語化を通じて、将来の躍進行動を高めるきっかけを提供するものである。パーソル総合研究所 コンサルティング事業本部 シニアマネジャーの石橋誉は、「このプログラムでは、自分自身の躍進行動がどうなっているのか、設問を通じての自己チェックに加え、上司チェックなどによる他者の視点と照らし合わせギャップを認識することができます。さらに躍進行動ごとに自己の意識と行動を振り返り言語化し、グループワークを通じて他者との共有を含めた気づきを起こしていくものです」と説明する。
(2)トランジション支援プログラムとは、正しい現実認識に基づくキャリアの「転機(終わり)」を意識させることで、新しいキャリアへと向かう「始まり」を促すプログラムである。描いている理想を現実に近づかせるとともに、実際に起こり得る事態にどう対処していくのか、ケーススタディやカードワークを通じて習得していく。
(3)上司プログラムは、年齢逆転でマネジメントの困難性が増している中で、ミドル・シニアの躍進を上司が支援するために必要なスキルを習得するためのもので、上司支援の必要性を理解するとともに、年齢逆転の面談をロールプレイ通じて体感学習する「導入研修」と、日常の部下との関係構築の進め方、躍進行動を促進させるためのアプローチですぐに活用できる「マニュアル」の2つが用意されている。
「導入研修で重視しているのは実践力で、特に40代の管理職は年上の部下とどう対話していけばいいのか、実体験を有していない人が多い。そこでミドル・シニアの躍進支援に必要な姿勢や行動を、実感値で捉えてもらうよう、ペルソナを設定したロールプレイなど、実践的なプログラムも用意しています」。(石橋)
石橋は、RCPプログラム(トランジション支援)と上司プログラムを活用した企業の事例を紹介(図3)。

 

図3  RCPプログラムと上司プログラムを活用した企業の事例

中でもプログラムを実施した結果、参加者中、60歳以降の自分のキャリアについてもともと考えていた人は6%程度だったが終了後は94%に上昇したことが明らかとなった。加えて、「研修を通じて、役職定年や定年再雇用が現実であることを改めて認識し、非連続のキャリアにおいて、今後、自分自身が何をすべきかが明確になった」との感想も、多々寄せられたという。また、躍進行動の必要性についてもチェックを行ったことで、「自身の将来キャリアを考えていくうえで、さまざまな気づきがもたらされる機会となった」との声も数多く寄せられたと石橋は話す。
冒頭で述べたように、今後、少子高齢化が進み、労働力不足のさらなる深刻化が予測される中、ミドル・シニアの躍進は企業において喫緊の課題であり、生産性向上をもたらす鍵となる。石山氏は講演の最後に、「ミドル・シニアの躍進を促すには、企業の取り組みと本人の取り組みの両輪を回していくことが重要です。しかし、本人の取り組みだけでも大きな変化をもたらせるようになります」と訴えた。

 

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