「エンゲージメントサーベイ」とは? サーベイ実施と活用のステップ

 

2021.06.02

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リモートワークの普及によって場所を問わずはたらけるようになり、会社と社員との「つながり」に大きな変化が訪れています。そこで、社員がはたらきやすいと感じる環境づくりを行うために、今注目されているのが「エンゲージメントサーベイ」です。

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目次

エンゲージメントサーベイとは?

エンゲージメントという言葉は、直訳すると「婚約」という意味。転じて、ビジネス用語としては「つながり」という意味合いで、商品とユーザー、企業とユーザー間などで使われています。「エンゲージメントサーベイ」という語においてのエンゲージメントは、会社と社員の間の「心のつながり」に限定されます。つまり、会社や自社が提供している商品・サービスに対して、社員がどれくらい熱意や愛着心を持っているかを指します。

一方、サーベイとは「調査」や「診断」という意味です。つまり、エンゲージメントサーベイとは、社員と会社の愛情や心のつながりを調査し、可視化することです。

「従業員満足度」との違い

エンゲージメントと似た言葉に、「従業員満足度」があります。しかし、従業員満足度は労働環境や人間関係といった領域での満足度であり、「職場の居心地の良さ」の尺度です。従業員満足度が高まることで生まれるメリットは、社員のモチベーション維持や、生産性の向上、人材不足の解消が主に挙げられます。

一方、「会社の利益に貢献したい」と考えるエンゲージメントが高い社員が増加すると、会社の業績アップや生産性向上につながることが期待できます。従業員満足度は、必ずしも会社の業績アップにつながるわけではない点が、エンゲージメントとは大きく異なります。

注目される背景

エンゲージメントサーベイが注目されるようになったのは、個人と組織の関係性の変化が大きな理由です。

かつての日本は終身雇用や年功序列が一般的でしたが、近年大きく変化しています。個人が自らのキャリアを能動的に構築できるようになり、会社と対等な関係を築けるようになりました。また、長引く不況やインターネット社会を背景に、個人の価値観、はたらき方に対する考え方は複雑に多様化しました。「弱くなってしまった組織と個人の結びつきを強固にしたい」「会社の理念に共感して熱意を持って主体的に動いてくれる人材がほしい」と願う企業が増えたことで、注目されるようになったのが、エンゲージメントサーベイです。

また、アメリカのギャラップ社が2017年に発表した、全世界1,300万人のビジネスパーソンを対象にした「熱意あふれる社員」に関する調査では驚くべき結果が報告されました。日本の熱意あふれる社員の割合は、調査した139か国中132位。エンゲージしている人(会社に対して熱意のある人)はわずか6%で、エンゲージしていない人(熱意のない人)は71%。そして、会社を嫌っている人が23%もいました。日本企業がエンゲージメントについて強く意識するのもうなずけます。

エンゲージメントが高まることのメリット

エンゲージメントが高いということは、個人と組織が一体となって双方の利益や成長に貢献しあう、深い関係になるということ。会社に対して帰属意識があるというものではなく、よりポジティブな考え方です。エンゲージメントが高まると、社員は会社が持つビジョンに共感し、会社はもちろん一緒にはたらく仲間に対しても深い思い入れを抱きながら、自らが意欲的に仕事に取り組みます。

従って、離職率の低下にも十分に効果が期待できます。また、会社のビジョンや目指す利益に共感した社員が、自ら判断をして積極的にはたらくため、生産性の向上にも寄与します。加えて、顧客満足の向上、顧客保持にもつながります。

また、人材獲得が難しい現代においては、既存の社員に紹介してもらうリファーラル採用が重要視されています。リファーラル採用はエンゲージメントの高い社員から紹介してもらうことで効果的な運用が期待できます。リファーラル採用の増加も、エンゲージメントが高まるメリットの一つと言えるでしょう。

エンゲージメントサーベイの実施ステップ

エンゲージメントサーベイを有効活用するには、ステップを踏んで実施することが大切です。ここでは、7段階に分けて具体的な実施方法を簡潔に紹介します。

エンゲージメントサーベイの7つのステップ

・実施目的の共有
エンゲージメントサーベイを実施する目的を、社員にあらかじめ共有します。調査の意図を説明し、共感を得ることで、回答回収率がアップします。

・サーベイの設問決定
社員に回答してもらう質問を決定します。設問決定については、次の章で詳しく説明します。

・サーベイの実施
エンゲージメントサーベイを社員に対して実施します。

・調査結果分析&課題の洗い出し
エンゲージメントサーベイの結果を分析し、課題を洗い出します。

・課題解決に向け施策決定
結果によって導き出された課題に対して、解決するための施策を決定します。

・施策の実施
どの課題から解決すべきか優先順位をつけ、施策を行動に移します。

・サーベイの再実施
実施した施策については、効果があったかどうか検証することが重要です。効果が見られなかった場合は、別の施策を実施します。

エンゲージメントサーベイの実施方法

 

このようなPDCAの繰り返しによって、エンゲージメントサーベイを実施します。社員と会社が密接に擦り合わせを行うことで、課題を抽出し解決に導きます。

サーベイの設問作成方法

用意する設問はシンプルです。「社員自身の気持ちのこと」「会社の設備やサポート、人事評価体制についてのこと」「会社での人間関係のこと」「自己研鑽のこと」などが挙げられます。分析とフィードバックがしやすいよう、テーマが絞り込まれた、かつシンプルな設問が望ましいです。回答は記述式ではなく、5段階あるいは10段階で評価する方が定量化しやすくなります。

ちなみに、前述したアメリカの調査会社であるギャラップ社では、12の設問をエンゲージメントサーベイの最適な設問として紹介しています。

ギャラップ社の設問例

・直近7日間で、良い仕事をしたと褒められたり、評価を受けたりすることはあったか
・職場に親友と呼べるほど気心の知れた同僚はいるか
・直近1年間で、自身が成長できる機会はあったか

エンゲージメントサーベイ実施の留意点

エンゲージメントサーベイを実施する上で重要なのは、実施後です。実施後に気をつけるべきポイントは2つです。

調査結果は必ず共有し、会話すること

エンゲージメントサーベイを実施して、データを収集したらすぐに分析を行い、回答者である社員に共有することが大切です。

エンゲージメントサーベイは、そのときの部署やプロジェクトチームに身を置いた状況で回答する内容です。フィードバックが意味のないものとなってしまわないように、結果をフィードバックするまで、部署やプロジェクトチームを再編することがないように注意しましょう。部署やプロジェクトチームが抱える課題が明らかになったら、すぐに関係者全員で話し合い、課題の解決を目指しましょう。

将来のストーリーを描くこと

関係者全員で課題について話し合う上で、データの解釈の仕方に違いが生まれることもあるでしょう。まずは、その違いを互いに受け入れることが重要です。受け入れた上で、自分がいる部署やプロジェクトチームが、将来どのような位置にいるべきか、何をしているべきか、どのような存在になっているべきかを前向きに話し合いましょう。

決して急ぐ必要はありません。対話を繰り返しながら、ともに将来のストーリーを描いていくことが大切だと考えられています。

エンゲージメントサーベイの活用事例

最後に、エンゲージメントサーベイを効果的に取り入れた、事例を紹介します。

習慣的な調査で組織体制の変化にも対応

業種:IT
従業員数:1,000人以上
資本金:400億円以上

短期間で組織を拡大し、社員が急増しました。また、成長分野では組織内外の環境がどんどん変化するので、それに合わせてチーム編成も目まぐるしく変わります。そのような状況下でも組織の健全な状態を保つために、エンゲージメントサーベイのフィードバックに力を入れ始めました。

・サーベイは3ケ月に1度の実施
・数日間で集計と分析を行って経営会議で発表してフィードバックをもらう
・フィードバックを各部署のミーティングでアクションプランに落とし込む

早いサイクルでサーベイを回すことで、社員のエンゲージメントの変化にいち早く気づいて手を打つことができ、「会社が働きかけてくれた」と社員からの評価を得ることができました。結果を具体的なアクションにまで落とし込むことを徹底したのも、サーベイの効果的な運用のポイントです。

心理的安全性を確保して、本音で語り合う環境づくり

業種:電機メーカー
従業員数:20万人以上
資本金:2,500億円以上

国内有数の電機メーカーも、成功例の一つです。同社では、社員のはたらきがいを向上させるために、意識調査を年に一度実施して職場の状況を可視化させています。サーベイを効果的に活用するには、定量的なデータから課題が見えたあとに本音でディスカッションをすることが大切だと考えられています。「自身の力で会社組織を動かせる」ことを社員に実感してもらうために、フィードバックの場では上司を交えて本音で語り合える心理的安全性の確保を徹底しました。

・自分の経歴や興味や特技など、パーソナルな情報を話す場をつくる
・入社後から現在までの浮き沈みをライフラインチャートにして、まず同僚や上司、部下のことを知る

これらの施策で、他者のことを「知ろう」というスタンスで話し合うことができ、心の距離を縮めています。また、サーベイのフィードバックは課題だけではなく、ポジティブなことを出し合うことも重視して実施しています。

【出典】『「データと対話」で職場を変える技術 サーベイフィードバック入門』(PHP研究所)

価値観が多様化する現代に高まる、エンゲージメントサーベイの重要性

個人の価値観が多様化し、個人と組織の関係性が変化した現代社会において、エンゲージメントサーベイは急速に注目を集めています。エンゲージメントサーベイを実施し、その結果を有意義に活用することは、人材の流出を防ぐだけではなく、必要な人材を安定的に獲得することにつながります。

ビジネスにおいて、社員と企業の関係性がさらに変化すると考えられる将来に向け、エンゲージメントサーベイの重要性がますます高まるのは確実です。