MBO(目標管理制度)が成果を生むための運用方法

 

2021.05.26

  • 人事・総務
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「MBO」とは、「Management by Objectives」の頭文字を取った略語で、日本語に訳すと目標管理制度です。目標管理制度とは何か、どのように運用すべきかを解説します。混同しやすい言葉で「Management Buyout」を略した会社買収の方法を指す「MBO」があります。

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目次

MBOの基礎知識

MBOとは、経営学における名著『マネジメント』を手掛けたアメリカの経営学者、ピーター・ドラッカーが提唱したマネジメントの概念で、日本語で直訳すると「目標管理」です。会社の方針と、社員自身が目指したい方向性を擦り合わせることで一人ひとりに目標を設定し、成果までの道のりを管理することを指します。社員自らが目標到達までを管理することで、道筋が具体的に見え、業務効率が向上します。また、やりがいやモチベーションのアップにもつながり、会社の業績やプロジェクトの成功などに結びつく、という考え方です。

MBOは人事評価の手法の一つとして使われることがありますが、実は間違った使い方です。正しい知識を身につけて活用することで、MBOのメリットを最大限に活かせます。

MBOと人事評価制度は切り離して考える

日本でMBOが導入され始めたのは、1990年代後半です。バブル経済崩壊後、仕事の成果を評価基準とする成果主義が取り入れられたことで、MBOも同時に注目されました。成果主義導入の文脈でMBOが採用されたことから、日本では「MBO=人事評価」という誤った認識が定着してしまいました。

ドラッカーが提唱したMBOは、人事評価の手法ではなく、正しくはマネジメント手法です。会社が設定する目標を上手に使って自己管理を促すことで、社員一人ひとりのやりがいやモチベーションを引き出します。目標を達成するために、スキルを磨いたり、パフォーマンスを高めたりしようとする自発的な思いや行動が生まれます。

MBOのメリット

MBOを効果的に活用すると、どのようなメリットがあるのかを紹介します。

部下の能力向上やモチベーションアップ

MBOは社員自らが目標設定を行います。そして、上司とコミュケーションを図りながら、自律的に行動を起こし、最終的に自ら目標を達成できたかを評価していきます。MBOは自主性と創意工夫が求められます。自ら設定した目標を達成するために努力や工夫を重ね、スキルを磨くことで、モチベーションアップにつながります。

指導する機会が増えた管理職のスキルアップ

MBOは部下と上司が面談をし、部下が設定した目標が適切かを判断します。部下とのコミュニケーションや指導の機会が増えることで、上司自身のスキルアップにつながるとも考えられます。

一方、MBOは「目標が達成できたか」が明確になるため、結果にばかり注目してしまう傾向があります。それによって部下の自主性やアプローチを無視してしまう恐れもあります。これでは「ノルマを達成するための目標」になってしまい、モチベーションアップや能力向上は望めません。大切なのは、部下自身の自主的な取り組みやプロセスです。上司は正しく目標設定のサポートを行い、その過程や姿勢を見るように心がけましょう。MBOはノルマ管理のためのツールではありません。

MBOの具体的な実践方法

MBOを実際にどのような手順で行い、マネジメントにどう落とし込むか、実践方法を紹介します。

1.目標を設定する

MBOで最も大切なのは、社員一人ひとりが“自ら”個人の目標を設定することです。

会社の利益やビジョン実現に向けた個人目標なので、もちろん会社や部署の組織目標をしっかり理解した上で設定する必要があります。会社や部署の理想を押しつけるとノルマの設定になってしまうので、自主的な取り組みやモチベーションアップにはつながりません。組織目標の達成のために個人がどのような役割をこなすべきか、どのような能力を伸ばしていくべきか、何が具体的にできるのかという個人目標を設定していきます。なるべく具体的な数値目標、スキルアップなどの定性目標、期日などを明記して解像度を上げておくと良いでしょう。

明確化した目標の例

「新規案件の獲得率を増やす」→「新規案件を50件獲得する」
「計算のスキルをアップする」→「簿記の資格を取得する」

設定した目標は、上司はもちろん同じ部署のメンバーと共有し、適切な内容であるかどうか、達成可能な目標であるかを検討します。部下のモチベーションややりがい、動機づけのためには難易度の設定が大事です。難易度を下げればいいわけではなく、努力することで達成可能な目標であると考えられるものにします。

2.目標達成のための手段を決める

手段とは、つまり「計画」のこと。目標が設定できたら、目標達成のための計画を決めていきます。期日から逆算して計画を設定し、Excelやスプレッドシート、あるいは専用ツールで目標管理シートを作成しましょう。

3.手段を行動に移す

目標と計画が設定できたら、行動に移します。目標管理シートで期日までの時間や達成度を確認しながら行動し、不足や難度が上がり過ぎている部分があれば修正していきます。変更点や気づいた点は、随時目標管理シートに記入しましょう。

4.評価・振り返り

MBOは振り返りをしてはじめて効果を発揮します。振り返りとは、いわゆるPDCAです。上司と部下が目標達成に至るまでのプロセスや結果を共有しながら、部下自身の自己評価と上司による客観的評価、フィードバックを行います。大切なのは、結果だけではなく、プロセスも含めて見るということ。目標の内容や期限をいかに具体的に設定できたかによって、振り返りの粒度は細かくなるので、目標と計画はできるだけ具体的に設定するのが良いでしょう。

上司からのフィードバックでは、部下の昇進または降格や給与の増減といった話ではなく、今後期待する組織内での役割などについて話します。部下からは、振り返りを題材にして今後のスキルアップやキャリアアップ、目標設定などについて相談すると良いでしょう。

MBOの実践手順

 

MBOを正しく活用するために

MBOを正しく活用するためには、手順や準備が大切です。以下の1〜4の項目をチェックして、効果的にMBOを使いこなしましょう。

失敗しないMBOチェック項目

1.目標を設定する
□社員と上司がコミュニケーションを取って目標設定をしていますか?
□「新規案件の獲得率アップ」ではなく「新規案件を●件獲得」と具体的な目標を設定していますか?
□組織の目標や会社の利益と合致していますか?
□達成可能な目標を設定していますか?
□目標の期限を決めていますか?
□上司と部下の間で、目標や評価基準などの認識は一致しましたか?

2.目標達成のための手段を決める
□上司と部下がコミュニケーションを取って、目標に向かう手段を決めましたか?
□期日から逆算してスケジュールを組みましたか?
□目標管理シートを作成しましたか?
□目標管理シートには、数値の達成度以外にも項目を設けましたか?(スケジュール管理やトラブルへの対応、上司とのコミュニケーション頻度や精度など)

3.手段を行動に移す
□進捗確認の1on1ミーティングを実施していますか?
□適切な頻度で1on1ミーティングを実施していますか?

4.評価・振り返り
□評価は1on1ミーティングで会話をして決めていますか?
□結果だけではなく、行動・プロセスの評価をしましたか?
□MBOを人事評価に使っていませんか?
□次の目標設定をしましたか?

【出典】「正しい目標管理の進め方」(東洋経済新報社)、「目標管理の教科書」(ダイヤモンド社)を参考に作成

MBOとOKRの違い

MBOと似た「OKR」という考え方もあります。OKRとは、「Objectives and Key Result」で直訳すると「目標と主要な成果」です。アメリカではGoogleやIntelが採用したことで、大きな話題を集めました。

OKRは目標管理という意味でMBOと似ており、誤解を招くケースが多いようです。しかしMBOとOKRは、明確に違う点があります。両者の違いは「目的」「共有対象範囲」「目標達成率の設定」の3点です。

MBOとOKRの違い

 

MBOが組織や個人の目標が最終的に組織の利益にリンクするのに対して、OKRはプロセスのマネジメントや、チーム力と生産性の向上を明確な目的としています。また、MBOが基本的に部下と上司で共有するのに対して、OKRは全社員で共有します。さらにMBOは100%の目標達成を目指すのに対して、OKRは60〜70%程度の達成を目指すのも、大きな違いです。

MBOとOKRはどちらか一方を選択するものではなく、併用することでMBOの目標設定や手段がさらに具体的になるといった相乗効果が期待できます。

これからのMBOに大切なこと

MBOは人事評価を目的としたものではありません。社員のはたらきがいに直結し、上司と部下の円滑なコミュニケーションにも大いに役立つ“手段”です。

個人の価値観が複雑で多様化する現代、社員一人ひとりのやりがいやモチベーションを引き出すことはとても難しいことです。しかし、正しい目的と知識を持って、MBOの運用に成功すれば、社員の幸せと会社の利益に直結させることができるはずです。