ウェルビーイングとは? 従業員のウェルビーイングを高めるために実践できること

 

2021.05.12

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若い世代を中心に「ウェルビーイング(Well-being)」がはたらきやすさの新たな基準となりつつあり、人材確保のために企業も重視すべき概念と考えられています。ビジネスにおけるウェルビーイングとは何か、ビジネスにどう取り入れられるのかを解説します。

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目次

ウェルビーイングとは「持続的な幸福感」とともにあること

世界中で「ウェルビーイング」という概念が注目されています。ウェルビーイングとは、直訳すれば「良くあること」。会社や組織のあり方、個人のワークライフバランスが見直されるなか、ビジネスの場で使われる機会も増えています。

世界保健機関(WHO)憲章の前文では、「健康とは、病気ではないとか、弱っていないということではなく、肉体的にも、精神的にも、そして社会的にも、すべてが満たされた状態にあることを言います」とあり、ウェルビーイングを「身体的、精神的、社会的にすべて満たされた状態」と定義しています。

また、米国の心理学者マーティン・セリグマンは、ウェルビーイングには5つの要素があると唱えています。

主観的幸福感(Well-being)の5領域

 

【出典】金沢工業大学 心理科学研究所 PERMAモデル(Seligman,2011)

5要素の頭文字を取って「PERMA理論」と呼ばれます。この理論でのウェルビーイングとは、「持続的幸福感のある、健やかな心の状態」とされています。瞬間的な幸せではなく持続的な幸せという点が、ウェルビーイングを理解するポイントです。

世界的にも低い日本人の幸福感

日本では「持続的な幸福感」を得られている人が少ないというデータがあります。

国連のThe Sustainable Development Solutions Network (SDSN)が米国ギャラップ社のデータを基にまとめた「世界幸福度リポート2020(World Happiness Report 2020)」によれば、日本の幸福度は153カ国・地域中62位。2018年の54位、2019年の58位からさらに後退しています。なお、上位は北欧諸国が占めています。

世界幸福度ランキング2017-2019

 

【出典】The Sustainable Development Solutions Network「World Happiness Report 2020」
p24-25を加工

この調査は、各国・地域での世論調査を基に、自分の幸福度を10段階で自己評価した平均値です。さらにそれを「1人当たりGDP」「平均的な健康寿命」「困ったときに社会的な助けがあると感じているか」「人生で選択の自由があると感じているか」「GDPに対しての寄付実施者数の度合い」「政治への信頼度」などによって分析しています。

日本の平均寿命は世界1位で、1人当たりGDPは経済協力開発機構(OECD)加盟37カ国中19位。数字的な豊かさと実際の幸福度を比較すると、日本人の自己肯定感は低く、ウェルビーイングを感じにくいことがうかがえます。しかし、日本でもウェルビーイングの機運は高まっており、企業にとっては難しい舵取りが求められる時代です。

従業員のウェルビーイングを高めるためにできること

ここ数年、「健康経営」という言葉が注目されていますが、ウェルビーイングはさらに大きい概念です。

従業員がウェルビーイングの状態(満たされた状態)ではたらくことができれば、パフォーマンスはアップし、業績は向上します。また、近年では会社選びの基準になりつつあり、人材難が続くなか、企業にとっては優秀な人材の確保と定着には欠かせない要素ともいえます。大手コンサルティング会社の米国ギャロップ社の分析では、はたらき方におけるウェルビーイングには、良好な人間関係、充実したキャリア、経済的な幸福、日々の業務へのポジティブな状態、会社との関係性などが関連していると考えられています。

これらの視点から、従業員のウェルビーイングを高めるための企業の取り組み例をご紹介します。

良好な人間関係のために

上司や同僚にも意見できたり、世間話がしやすかったりする職場は従業員のウェルビーイングに寄与します。コミュニケーションを発生させるための施策を紹介します。

・交流を生む制度
米国では「第3の給与」と呼ばれる「ピアボーナス制度」が充実しています。業務成果や日頃の行動に対して、従業員同士で感謝の気持ちを伝え、報酬を送り合う制度です。互いを称賛できる文化を育て、コミュニケーションを活性化させる効果が期待されます。

・心理的安全性の構築
米国の大手IT企業では、「心理的安全性」に着目した生産力向上計画を推進。対人関係で意見や反論をしたり、リスクのある行動を取ったりしても、それが受容される環境を構築しています。

・職場環境自体の改善
コミュニケーションしやすい、風通しの良い職場環境づくりのことです。リフレッシュコーナーやオープンスペースの設置・改良など、コミュニケーション促進のためのスペースをつくる企業も増えています。

充実したキャリア(ワークライフバランス)のために

「はたらきやすさ」をバックアップするために、長時間労働や休日出勤を抑える制度、育児や介護を支援する制度の社内整備は進んでいます。より従業員が「活用しやすい」制度づくりという観点が一層強まっているようです。

・有給取得によるインセンティブ制度
ある国内情報通信会社では、残業を前年より20%削減して有給休暇を完全取得した従業員には、本来は残業代として支給予定だったお金をインセンティブとして支給する仕組みを創設。その結果、月間平均残業時間は約半分になり、有給休暇の取得率も向上しました。

・残業に関するモニタリング
時間外労働を削減する取り組みは、同時に時間外労働をモニタリングする仕組みも必要となります。大手コンサルタント会社では、ITシステムによる就労管理で長時間労働の解消を徹底すると共に、在宅勤務やテレワークといった場所にとらわれないはたらき方を導入しました。また、別のコンサルタント会社では、年間残業と有給休暇の計画シート作成や週ごとの残業モニタリングを実施するなどして、ワークライフバランス実現の実効性を高めています。

・男性従業員の育児休暇啓発
国内大手化学メーカーでは、男性従業員の育児休暇の啓蒙活動を実施したところ、育児休暇取得率が対象者の4割を占めるまでに増加しました。

・託児所の設置
多様なはたらき方に寄り添ってウェルビーイングの向上を目指すために、企業内保育所など託児施設を設置する企業も増えています。また、保育所や託児所不足のほかに「地域の保育所や学童に子どもが行きたがらない」など、さまざまなケースで子どもを預けられないことを想定し、「子連れ出勤制度」を導入している企業もあります。

・親孝行支援制度
あるハウスメーカーでは、要介護の家族を持つ従業員が、無期限で介護休業を取れる制度を導入しています。さらに帰省時には補助金を支給。経済的、精神的な負担を減らす効果がありそうです。

日々の業務に対しポジティブな状態であるために

従業員が自己の心身の状態を知ることは、ウェルビーイングの出発点ともいえます。企業としては、定期健診だけでなく、人間ドックや歯科健診など法定健診以外の補助制度、予防接種補助などの制度を充実させるのも一つの方法です。

・セルフ・ケアのサポート
大手食品会社では全従業員を対象にして、個別の健康面談を毎年行い、従業員一人ひとりに合わせたセルフ・ケア指導や、セルフ・ケア度の可視化を推進。結果、総実労働時間を削減しています。自身の健康を意識してはたらくことで、業務効率もアップした例です。

・健康増進活動の推進
大手化学メーカーでは、「健康マイレージ」というプログラムを導入しています。これは、会社が企画した健康づくりに関するイベントに参加すれば「健康マイル」がたまり、健康グッズと交換できるというプログラムです。こうした施策の実施は、企業姿勢が従業員に伝わりやすくなります。

・リモートでの健康増進イベント
コロナ禍で孤立感を抱えてしまう従業員ケアのために、毎朝オンラインでラジオ体操を行っている例もあります。参加率は高く、従業員だけでなく家族も参加できるようにすることで、イベント参加への障壁が低くなっているようです。

「はたらきがい」を従業員に感じてもらうために

日本のウェルビーイングは「はたらきやすさ」ばかりが注目されがちですが、実は「はたらきがい」も大切な要素です。自分の仕事に必要性を感じなければ、良い状態とはいえません。そのために必要なのは、企業理念の再確認と再周知です。何のために、どんな目的のためにやっている仕事なのか、という原点に立ち返ることです。

多くの企業では、企業理念やビジョンは言語化され、組織としての目的が語られています。しかし、それが従業員にしっかり共有され、自分事として受け止められているでしょうか。例えば「〇〇〇〇を通じて社会に貢献する、社会を便利にする」という企業理念があるとします。従業員が企業理念に共感し、理解していれば、自分が与えられている仕事の役割や必要性を感じることができます。これは「はたらきがい」を感じながら仕事をしている状態です。しかし、時代に即していない企業理念だったり、理念が伝わっていなかったりする状態で仕事をしていれば、「はたらきがい」を失うことにつながります。放っておけば、離職率に影響するかもしれません。

こうした事態を避けるには、企業理念を今一度棚卸ししてクリアにすることです。今の時代に適しているかどうかという観点で見直します。結果、元のままということもありますが、このプロセスを踏むことで社内共有する機会も増え、さらに従業員も意見できる仕組みを設ければ自分事化も進みます。企業理念をアップデートして、丁寧に伝えていくことは「はたらきがい」を生む大きな要因になります。

「はたらきがい」を生むために

1.企業理念を見直す、アップデートする
2.従業員に丁寧に伝える

ますます高まるウェルビーイングの機運

「自分の置かれている状況を良くしよう」 という意識は、これからもさらに高まっていくでしょう。そして、はたらくことに期待が持てたり、熱中できたりする会社であれば、業務成果の向上や企業業績の改善につながるでしょう。

日本は世界の中でも長寿企業が多い国といわれています。企業が長く存続しているということは、日本の職場ははたらきやすかったことの裏付けかもしれません。制度を整え、企業理念を共有して自分事化を図る以外にも、従業員のウェルビーイングを高める方法はあります。会社の現状を、ウェルビーイングの視点から一度見つめ直してみてはいかがでしょうか。

パーソル総合研究所では、「幸福学(幸福経営学)」を提唱されている慶應義塾大学の前野隆司教授との共同研究として、国内の就業者(20代~60代)に対して質的調査と大規模なアンケート調査を実施し、「はたらく人の幸せ」に着目した新たな経営指標を開発しました。また、大規模調査から見えてきた「はたらく人の幸せ」の実態や経営への効果、マネジメント介入への実践的な観点について提案しています。はたらく幸せ・不幸せを測定する新たな診断ツール「はたらく人の幸せ/不幸せ診断」も公開していますので、ご活用ください。

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