業務委託を導入するメリット・デメリット
契約書の書き方や注意点を詳しく解説

 

2021.04.28

  • 経営戦略
  • 業務効率化
  • アウトソーシング

業務委託は、雇用によらず、仕事の成果物・役務の提供を受けることができる方法です。民法上「請負」「委任」契約に分類され、契約書の書き方によってはトラブルに見舞われることもあります。上手な導入方法と契約書を書くときの注意点などをまとめました。

目次

業務委託の導入が進む背景

業務委託とは

業務委託とは、雇用契約によらず、注文主から受けた仕事の成果物・役務を提供することに対して報酬が支払われる仕事の仕方です。

従来から雇用コストの削減・生産変動への対応(業務量の季節的変動への対応、景気変動による雇用調整)のために進んできたアウトソーシングですが、なかでも業務委託はインターネットの普及や働き方改革・新型コロナウイルス感染拡大を受けた多様なはたらき方へのニーズの高まりから、近年さらに注目を浴びています。

実は法的には「業務委託契約」という言い方は厳密でなく、民法上の請負と委任/準委任の契約、またこれらの混合的な発注の仕方・引き受け方をする契約を総称して業務委託契約と呼びます。

請負契約とは、事業者がある仕事を完成することを約束し、注文主がその仕事の成果に対して報酬を支払うことを約束することにより成立する契約です(民法第632条)。例えばITベンダーが企業からプログラム制作を請け負い、その成果物である完成したプログラムに対して報酬が支払われる、という役務提供の仕方がこれにあたります。

委任/準委任契約は、成果物ではなく業務の履行自体に対して報酬が支払われる契約です。このうち契約など法律行為を行うものが委任(民法第643条)、それ以外のものが準委任(民法第656条)と呼ばれます。例えばシステム保守、経理や受付といった業務を請け負い、その事務履行に対して報酬が支払われるような契約がこれにあたります。

民法上の雇用、請負と委任/準委任の違い

雇用に関する規定 請負に関する規定 委任/準委任に関する規定
対象 雇用契約:当事者の一方(労働者)が相手方(使用者)に対して労働に従事することを約し、相手方がこれに対してその報酬を与えることを約する契約(623条) 請負契約:当事者の一方(請負人)が仕事の完成を約し、相手方(注文主)がその仕事の結果に対して報酬を支払うことを約する契約(632条) 委任契約:当事者の一方(委任者)が法律行為をすることを相手方(受任者)に委託し、相手方が承諾することによる契約(643条)
※事務行為を委託する準委任には委任の規定が準用される(656条)
報酬 雇用契約上の労働を終了した後でなければ報酬請求できない(期間によって報酬を定めたときは、期間経過後)(624条) 報酬は仕事の目的物の引き渡しと同時に支払う(物の引き渡しを要しないときは、仕事の完成後に請求)(633条) ・特約のない委任者への報酬請求不可(648条1項)
・委任事務履行後でなければ報酬請求できない(期間によって報酬を定めたときは、期間経過後)(648条2項)
・受任者の責めに帰することができない事由により委任が履行の中途で終了したときは、受任者は既にした履行の割合に応じた報酬の請求が可能(648条3項)
契約解除等 ・原則5年以上の期間の定めのある雇用契約は5年経過後いつでも解除が可能(3カ月前の予告が必要)(626条)
・期間の定めのない雇用契約はいつでも解約の申し入れが可能(雇用は解約申し入れ日から2週間経過により終了)(627条1項)
・期間の定めのある雇用契約でもやむを得ない事由がある場合直ちに契約の解除が可能(その事由が過失によるものであるときは相手方に対して損害賠償の責任を負う)(628条)等
・請負人が仕事を完成しない間は、注文者は損害を賠償して契約の解除が可能(641条)
・目的物に瑕疵があり、契約目的の達成が困難な場合、注文者は契約の解除が可能(635条)
・当事者がいつでも契約を解除できる(651条1項)
・相手方に不利な時期に委任を解除したときは、相手方の損害を賠償しなければならない(やむを得ない事由があったときはこの限りではない)(651条2項)
当事者の義務等 ・労働者の承諾を得ずに使用者が権利を第三者に譲渡することの禁止(625条1項)
・使用者の承諾を得ずに労働者が自己に代わって第三者を労働に従事させることの禁止(625条2項)
・注文者は仕事の目的物に瑕疵があれば、修補請求や損害賠償請求が可能(634条)
・担保責任の存続期間は、引き渡しから原則1年以内(637条)
・受任者の善管注意義務(644条)
・受任者の委任者への状況報告義務、委任終了後の委任者への経過・結果報告義務(645条)
・委任者が委任事務を処理するに当たって受け取った金銭等を委任者に引き渡す義務(646条1項)
・受任者が委任者のために自己の名で取得した権利を委任者に移転する義務(646条2項)

【出典】厚生労働省「雇用類似の働き方に関する検討会 報告書 参考資料集」

導入が進む理由・背景

最近は、働き方改革の推進に伴い、テレワークをはじめとする多様なはたらき方が拡大していることから、国も法制度の整備や教育訓練の支援を進めようとしています。

国が議論する非雇用型テレワークのガイドライン刷新と働き手への支援

 

【出典】厚生労働省「雇用類似の働き方に関する検討会 報告書 参考資料集」

企業としても、柔軟なはたらき方を可能にすることで、特にはたらき方の選択肢やワークライフバランスを重視する優秀な人材を採用できるなら、結果的に業績向上に資することができるでしょう。事実、独立行政法人 労働政策研究・研修機構による研究でも、1990年代以降、個人請負や派遣といった外部人材の活用が急速に進んでいる、とされています。

はたらく側としても、育児・看護・介護や通院など、時間的制約を持ちながらはたらくことができる環境の実現は望まれるところです。こうした背景から、特に最近になって企業・はたらく個人双方から業務委託が注目を浴びていると考えられます。

業務委託のメリット・デメリット

企業側のメリット・デメリット

請負契約・委任/準委任契約といった業務委託を活用することで、企業が享受できるメリット・デメリットはどのようなものでしょうか。

【企業のメリット】

・コスト削減
企業が人を雇用する場合には、賃金のほかにも、社会保険関係費用や、採用にかかる費用、労務管理などの管理費用、オフィス賃料や、PCをはじめとした備品の費用などが生じます。それだけではありません。安全・衛生な職場環境の整備や教育機会の提供、福利厚生施設の設置など、雇用に伴うコストと手間は企業にとって大きな負担とみることもできます。

これらが役務提供・成果物への報酬のみによって代替できるため、業務委託を導入することによる雇用コストの削減は、企業にとって大きなメリットだといえるでしょう。

・専門人材、即戦力人材の活用
企業が雇った労働者に専門的な知識・技能を求めるならば、時間と手間・コストをかけた教育が必要になるでしょう。業務委託を導入すれば、教育にかかる手間・コストをかけずに最初から専門知識・技能を持った即戦力を採用することができます。

・季節・時期による業務量の変動への対応
日本の労働法制下では雇い入れた労働力の整理・解雇は困難です。例えば季節・時期による業務量の変動が見込まれている場合、雇用による固定的な人件費でその業務量を賄うより、業務委託によって増加分の業務量を賄おうと考えるのは自然です。

・退職者の知識・技能の有効活用
自社を退職し豊富な知識と技能を有する人を、再雇用に代えて業務委託ではたらいてもらう方法も考えられます。そもそも自社の業務に精通している上、人柄や仕事の仕方についてあらかじめ分かっているため、安心して業務を委託できるでしょう。2021年4月1日から施行された70歳以降雇用の努力義務化にともない、今後は義務化も視野に入ってくるだろうと考えると、考慮しておいてよい事項かもしれません。

【企業のデメリット】

・企業にノウハウ・技術が蓄積されない
外部リソースを活用する弊害として、企業の資産となる「人」が残りません。企業のコア事業で業務委託を多用してしまうと、安定的な雇用による固定費用で業務を賄うよりも、長期的には割高なコストを負担することにもなりかねません。

・場合により労働者性が認められ労災対象となる
業務委託は雇用によらず役務や成果物を得る方法です。したがって企業としては労働関係法令や社会保険関係法令の保護を受けない人のはたらきによるメリットを享受できるのですが、場合によっては契約名にかかわらず労働者性が認められ、労災が適用されることがあります。

労働基準法による労働者の定義、労働者性の判断基準

 

【出典】厚生労働省「雇用類似の働き方に関する検討会 報告書 参考資料集」

例えば、新宿労基所長事件(2002年7月11日東京高裁)では、映画カメラマンがプロダクションとの撮影業務に従事する契約に基づき映画撮影に従事している間に、宿泊していた旅館で脳梗塞を発症し、その後死亡した事例では、労働者性が認められました。

この判決では指揮監督関係や個々の仕事についての拒否の自由の制約、時間的・場所的拘束性の高さ、機材の所有者などから総合的に労働者性が判断されたと考えられます。労働基準法に基づく労働者性の判断では、上図にある「判断基準」により、個々の案件別に総合的に判断される、と考えておきましょう。

はたらく側のメリット・デメリット

【はたらく側のメリット】

・時間や場所の制約を受けず自分のスタイルではたらける
請負契約では成果物の納入、また委任/準委任契約では役務の提供が求められており、いずれも仕事の仕方に関する指揮監督を受けずに仕事をすることができます。つまり自分の都合の良い場所と時間ではたらくことができます。あくまで自己管理の下ではありますが、より裁量の大きな仕事の仕方が可能だということです。

・高付加価値業務が可能であれば高収入が期待できる
なかには企業勤務時よりも高収入を求めて業務委託を選ぶ人もいます。高い専門性・技能を身につけた人であれば、企業勤務よりも、高収入が期待できる場合があるでしょう。

・専門性を追求できる
自ら持つ専門性・技能を活かすことのできる仕事を継続できれば、専門性に磨きをかけることができます。得意とする分野の仕事を集中的に行って熟達の度合いをさらに高め、専門性を追求するといったことは、通常の企業勤務ではなかなか実現できないことかもしれません。

【はたらく側のデメリット】

・労働関係法令や社会保険関係法令の保護を受けない
裁量の拡大といった権利を得ると、必然的に責任が伴います。業務委託によるはたらき方は雇用によるものではないため、労働法制などによる労働者保護というメリットを享受できません。最低賃金や労働時間、またはたらく場所の安全・衛生などについて、すべて自己責任で管理する必要があります。例えば業務上の理由による疾病やケガであっても、労働者性が認められなければ労災適用されません。

・自己責任で仕事を完遂する必要がある
例えば請負契約の請負人の責任ではない災害などによって業務が阻害され、仕事を最初からやり直す必要が生じたとしても、原則として請負人は注文者に追加でかかった費用を請求することができません。

また、成果物に瑕疵があるなど契約した条件に満たない場合は、瑕疵や不完全な点の補修を求められ、場合により損害賠償が求められる場合もあります。条件を満たさない程度によっては契約解除もありえます。

・企業の看板なく個人の力量のみで勝負する必要がある
企業のブランド力に頼ることができません。特にブランド力を持った企業に勤務していた人が業務委託による仕事の仕方を選ぶと、企業勤務時よりも営業力の低下が感じられることでしょう。しかし考え方を変えれば、個人の力量のみで社会に相対し、自己の実力を試すことができると考えられます。

・帳票管理などの煩雑な実務を伴う
確定申告を自ら行わなければならないとともに、白色・青色申告にかかわらず帳票管理といった日々の煩雑な実務もこなさなくてはなりません。ただし収入額によっては、青色申告や法人成りによって控除・損金計上などによる節税効果が大きく認められる場合、経理・税務実務をアウトソーシングすることも検討しうるでしょう。

業務委託契約を締結するには

業務委託契約書の主な記載事項

業務委託契約では口頭による約束により報酬額・納期・具体的な委託業務の内容・権利の帰属といった重要事項があいまいなまま業務が開始されてしまい、後々トラブルとなることがあります。こうしたトラブルを避けるため、契約内容を書面にして取り交わしておくことが望まれます。

こうしたとき、同じ当事者間で複数の委託契約が見込まれる場合、業務委託契約の「基本契約」と、個別の業務を委託する際に結ぶ「個別契約」(発注書)を別途作成しておくと、双方に契約管理のムダな手間が省けるなどのメリットが見込めるでしょう。

この場合、「業務委託契約書」に多くの場合記載されるのが、以下の事項です。
※以下はライティング請負のケースの契約書を想定

【基本契約書】

・注文者と請負人・受任者の特定
・契約期間
・契約解除事由
・報酬
→ 報酬額、報酬の支払い期日・支払い方法、振込手数料の負担者などに関する定め。個別契約で個別に定めることも。トラブルの原因になりやすいため、個別契約で個別具体的に定めるほうがよい場合もあるでしょう。
・補修の定め
・損害賠償の定め
・請負人・受任者の個人情報、業務上知り得た個人情報や営経情報などに関する取り扱い
 → 個人情報の定義、個人情報の適切な管理・コンピュータのセキュリティ対策、個人情報の返還および複製の禁止を定めることもあります。
・権利の帰属(成果物の著作権等の知的財産権に関する定め。個別契約で個々に定める場合も)
など

ほか、委任/準委任契約では受任者の善管注意義務(民法第644条、善良なる管理者の注意をもって職務を遂行する義務)を定めておくといった場合もあります。

【個別契約】

・注文年月日
・注文者の氏名・住所のほか、請負人・受任者からの問い合わせ・クレーム窓口となる担当者氏名と連絡先
・個別の業務委託内容
 → 実現するべき質・量を含めて達成するべき業務内容・成果物の状態をできるだけ具体的に記し、後のトラブルの原因となることを防ぎましょう。
・個別の報酬額・報酬の支払い方法、諸経費の取り扱いほか
 → トラブルのもとになりやすいため、報酬や経費の具体的な範囲などの取り決めを明文化しておくことが望まれます。
・履行期限
・納品先・方法
・成果物の検査・検査期日・補修
・個別の権利の帰属
 → 知的財産権の帰属を明示しましょう。例えば知的財産権のうち譲渡できるものは譲渡する旨、買い取りする旨などを示す、または商用二次利用の規定、その使用により得られる製品を販売する際の使用許諾料を記しておくといったことが考えられます。
など

業務委託契約の基本契約・個別契約の例
(1)基本契約

 

業務委託契約書ひな形
ダウンロードはこちら

(2)個別契約(発注書)

 

【出典】厚生労働省「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」

発注書ひな形
ダウンロードはこちら

業務委託時に注意すべきポイント

締結しようと考えている業務委託契約が下請法(下請代金支払遅延等防止法)の適用対象であるなら、注文者(親事業者)が守る義務と禁止事項があります。まず、下請法の適用対象かどうかは、以下のように事業者の資本金規模と取引内容で判別します。

下請法の適用基準

 

【出典】公正取引委員会「下請法の概要」

上図のうち(1)(2)で各資本金規模に該当する場合は下請法が適用され、親事業者(注文者)には守るべき以下の義務と禁止事項があります。

【義務】
・書面の交付義務(3条)
・書類の作成・保存義務(5条)
・下請代金の支払期日を定める義務(2条の2)
・遅延利息の支払義務(4条の2)

【禁止事項】(4条)
・受領拒否の禁止(1項1号)
・下請代金の支払遅延の禁止(1項2号)
・下請代金の減額の禁止(1項3号)
・返品の禁止(1項4号)
・買いたたきの禁止(1項5号)
・購入・利用強制の禁止(1項6号)
・報復措置の禁止(1項7号)
・有償支給原材料等の対価の早期決済の禁止(2項1号)
・割引困難な手形の交付の禁止(2項2号)
・不当な経済上の利益の提供要請の禁止(2項3号)
・不当な給付内容の変更・やり直しの禁止(2項4号)

義務である事項「書面の交付義務(3条)」または「書類の作成・保存義務(5条)」に違反した場合、50万円以下の罰金(10条)が科されます。

また下請法の適用基準に合致しない場合でも、厚生労働省では在宅ワーク(請負)の仕事を注文する者が守るべき最低限のルールを「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」にまとめ、周知に努めています。以下にガイドラインで推奨されている、守るべきルールをチェックリストにまとめてみました。

在宅ワーク注文時に注文者が守るべきルール・チェックリスト

 

【出典】厚生労働省「在宅ワークの適正な実施のためのガイドライン」

業務委託により業務効率化を実現。トラブル回避に向けた契約書整備にも注意したい

業務委託には完成した成果物に報酬を支払う「請負」と、役務の提供に報酬を支払う「委任/準委任」があります。いずれも雇用によらないため、企業はコスト削減や高度専門人材の活用、季節・時期による業務量の変動への対応などが可能となります。下請法の適用対象となる場合は注文者には一定の義務と禁止事項があり、また下請法の適用外であってもトラブル回避のため厚生労働省が推奨する最低限守るべきルールがあります。これらのルールに配慮しつつ、業務委託による最大限のメリットを享受しましょう。