外国人技能実習制度とは?
概要、資格種別や導入ステップ、留意点まとめ

 

2021.04.28

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外国人技能実習制度は、開発途上国などの外国人実習生を日本で一定期間受け入れ、技能を移転する制度です。昨今送出体制と受入体制が改善されつつあります。制度の概要や資格種別、受入人数や受入フロー、受入時の注意点について解説します。

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目次

技能実習制度の概要

技能実習制度の狙い

外国人技能実習制度とは、厚生労働省によると「我が国が先進国としての役割を果たしつつ国際社会との調和ある発展を図っていくため、技能、技術又は知識の開発途上国等への移転を図り、開発途上国等の経済発展を担う『人づくり』に協力することを目的」とする制度です。

具体的には、開発途上国等の外国人を、一定期間(最長5年間)日本で受け入れ、OJTを通じて技能を移転します。

技能実習制度は従来、「出入国管理及び難民認定法」(以下、入管法)とその省令を根拠法令として実施されてきました。しかし、劣悪な条件下の就労や、送出機関の文書偽造、実習生の人権侵害・虐待や失踪・事故などの問題が発生していることから、しばしば制度が見直されています。

技能実習制度の見直しにともない、2016年11月28日には、「外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律(技能実習法)」が公布、2017年11月に施行されました。これまで入管法令で規定されていた多くの部分が、この技能実習法令で規定されることになったのです。

受け入れ方式の種類

外国人技能実習制度には、受け入れる機関により、団体監理型と企業単独型2つのタイプがあります。団体監理型は、非営利の監理団体(事業協同組合、商工会等)が技能実習生を受け入れ、傘下の企業等で技能実習を実施するものです。一方、企業単独型は、日本の企業等が海外の現地法人、合弁企業や取引先企業の職員を受け入れて技能実習を行います。

技能実習の種別

技能実習制度は、企業単独型と団体監理型の受け入れ方式ごとに、次の3つに区分されます。

・第1号技能実習:入国後1年目の技能等を修得する活動
・第2号技能実習:入国後2・3年目の技能等に習熟するための活動
・第3号技能実習:入国後4・5年目の技能等に熟達する活動

3つの区分に応じた在留資格は下表のとおりです

技能実習の資格区分

  企業単独型 団体監理型
入国1年目
(技能等を修得)
第1号企業単独型技能実習
(在留資格「技能実習第1号イ」)
第1号団体監理型技能実習
(在留資格「技能実習第1号ロ」)
入国2・3年目
(技能等に習熟)
第2号企業単独型技能実習
(在留資格「技能実習第2号イ」)
第2号団体監理型技能実習
(在留資格「技能実習第2号ロ」)
入国4・5年目
(技能等に熟達)
第3号企業単独型技能実習
(在留資格「技能実習第3号イ」)
第3号団体監理型技能実習
(在留資格「技能実習第3号ロ」)

【出典】公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」より抜粋

第2号技能実習もしくは第3号技能実習に移行が可能な職種・作業(移行対象職種・作業)は主務省令で定められています。また、第1号技能実習から第2号技能実習へ、第2号技能実習から第3号技能実習へ移行するには、技能実習生本人が、実技試験や学科試験など所定の試験に合格する必要があります。

技能実習制度の対象職種

技能実習制度の対象職種は、83職種(151作業)に分かれています(2019年1月8日時点)。そのうち、2・3年目まで続くことが多い職種は、食品製造、機械金属、建設関係です。

「技能実習2号」への移行者数

 

【出典】法務省「外国人技能実習制度について」より抜粋

受け入れ可能な人数

現在、技能実習生の数は次のように上限が定められています。

技能実習生の受け入れ上限

 

【出典】法務省「新たな外国人技能実習制度について」より抜粋

加えて2017年に、優良な実習実施者・監理団体に限り、受け入れ人数枠が拡大されました。優良な実習実施者とは、以下の要件について、120満点中72点以上である実習実施者を指します。

(1)技能等の習得等に係る実績(70点)
(2)技能実習を行わせる体制(10点)
(3)技能実習生の待遇(10点)
(4)法令違反・問題の発生状況(5点※)
(5)相談・支援体制(15点)
(6)地域社会との共生(10点)
※違反は大幅減点

例えば、実習実施者の常勤の職員数が30人以下の場合は、以下のとおり、技能実習生を受け入れることができます。

通常の人数(従業員30人の場合):1号3人、2号6人(計9人)
優良な場合(従業員30人の場合):1号6人、2号12人、3号18人(計36人)
※優良な場合、通常の受入人数枠(基本人数枠)が1号(1年間)が2倍、2号(2年間)が4倍、3号(2年間)が6倍となります。

特定技能と技能実習の違い

外国人技能実習制度と似て非なる制度に「特定技能」があります。外国人を雇い入れるという点では共通しますが、趣旨が異なります。

技能実習制度は前述のとおり、人材育成を通じた開発途上地域等への技能、技術または知識の移転を図り、国際協力を推進することを目的とする制度です。

これに対して特定技能制度は、日本における深刻な人材不足に対応するため、特定分野において、一定の専門性・技能を有し、即戦力となる外国人材を受け入れるものです。また、受け入れている国も異なり、二国間取り決め(協力覚書)を交わしている国は次の通りです。

技能実習(+JITCOとのR/D調印国〔中国、ネパール、ペルー〕)

ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、ラオス、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ブータン、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インドネシア、中国、ネパール、ペルー

特定技能

ベトナム、カンボジア、インド、フィリピン、モンゴル、バングラデシュ、スリランカ、ミャンマー、ウズベキスタン、パキスタン、タイ、インドネシア、ネパール ※中国は未締結

技能実習生の受け入れに向けて企業が準備しておくべきこと

受け入れの実態

団体監理型の受け入れが大半を占めており、平成29年度のデータにおいては96.6%を占めています。また、実習実施機関の半数以上が、従業員数19人以下の零細企業となっています。

企業単独型と団体監理型の割合

 

また、受け入れ人数が多い国は、ベトナム、中国、フィリピンで、特にベトナムが40%以上を占めています。

受け入れ人数の多い国

 

【出典】OTIT 外国人技能実習機構「技能実習制度の現状」より抜粋

受入採用フロー

技能実習生の受け入れは、大きく次のようなフローで進みます。

(1)事前検討
・送出国の選定
・実習生の人数の決定

(2)監理団体の選定
・監理団体の検索

(3)現地での面接・入国前調査
・面接・選考
・入国前調査(健康診断、宗教上の習慣や制約の確認など)

(4)受け入れ準備
・技能実習責任者を選任する
・技能実習生の住居を確保する
・監理団体の指導のもとで技能実習計画を作成、技能実習の開始日の6カ月前〜4カ月前に外国人技能実習機構に申請し、認定を受ける

(5)技能実習生の受け入れ
・監理団体から技能実習生を受け入れる
・実習を開始したら、技能実習機構へすぐに届け出をする

受入企業が選任を必要とするスタッフ

技能実習生の受入企業は、以下のスタッフを選任する必要があります。

●技能実習責任者
技能実習を管理・運営する責任者であり、事業所ごとに選任する必要があります。技能実習責任者に求められる要件は次のとおりです。

(1)実習実施者またはその常勤の役員もしくは常勤の職員であること
(2)技能実習指導員、生活指導員など、実習に関与する職員を監督する立場にあること
(3)過去3年以内に技能実習責任者を対象とした養成講習を修了していること

技能実習責任者は、技能実習指導員や生活指導員などを監督しながら、次のような事項を統括管理します。

(1)技能実習計画の作成
(2)技能実習生の技能等の評価
(3)外国人技能実習機構または監理団体に対する届け出、報告、通知等の手続き
(4)帳簿書類の作成および保管、実習実施状況報告書の作成
(5)監理団体との連絡調整
など

●技能実習指導員
技能実習指導員は、実習生に対し直接の指導にあたるスタッフです。求められる要件は以下3要件などです。

(1)実習実施者またはその常勤の役員もしくは常勤の職員であること
(2)技能実習生を行わせる事業所に所属する者であること
(3)習得させようとする技能について5年以上の経験を有すること

●生活指導員
技能実習生が慣れない日本で生活していくにあたっての指導をするほか、技能実習生の相談に乗るなど、問題発生の予防に努めます。求められる要件は、以下2要件などです。

(1)実習実施者またはその常勤の役員もしくは常勤の職員であること
(2)技能実習生を行わせる事業所に所属する者であること

雇用時にかかる想定費用

技能実習生を受け入れるにあたって、賃金や法定福利費とは別に、次のような費用がかかります。金額は、あくまで目安としてご参照ください。

技能実習生受け入れ時に想定される費用例

項目例 内容 金額の目安
面接出張費用 監理団体への出資金 入会金1万〜10万円
年会費2万〜15万円
入国2・3年目
(技能等に習熟)
技能実習生を人選するために現地へ赴くための費用 30万円
(国や滞在期間によって大きく変動)
出入国手続支援費 実習生の在留資格申請書類作成等費用 1万5,000円
現地教育費用 来日するまでの教育費 2万〜4万円
国内教育費用 来日後の研修費 10万円
講習手当 研修期間中の実習生の生活費 2万〜4万円
入管手続費用 2年目、3年目に移行する際の、在留資格変更費用 1万5,000円
技能評価試験受検料 2 年目に移行する際および 3 年目の技能評価試験受検料 2万円
技能実習生総合保険 病気、怪我などをカバーする総合保険(3年分) 2万〜6万円
JITCO年会費 監理団体によってはJITCO(公益財団法人 国際研修協力機構)への入会が必須 年会費10万〜30万円
往復航空券 往復の航空券費用 10万円
(技能実習生の母国によって変動)
国内交通費 空港から実習先までの国内交通費 実費
寮・社宅初期費用 敷金礼金や家具・家電などの準備費用 実費

【出典】公益財団法人 国際人材協力機構「外国人技能実習制度とは」より抜粋

受け入れ時の留意点

そのほか、受入企業が注意するべき点には、次のようなものがあります。

●監理団体は適正な受け入れをしているか

技能実習が適切に実施されるよう指導・監査し、技能実習生を保護するのが監理団体の役割です。しかし役割を果たせず、実習実施者が実習生に対する不正行為で摘発されると監理責任を負わされ、当該監理団体を介したすべての技能実習生の受け入れが停止となります。そのため、事前に問題のない監理団体を選定することが大切です。また従来は、実習生から高額な手数料を支払わせるなど悪質な各国の送出機関も問題となりました。

現在は各国の認定送出機関のみが実習生を派遣、日本側でも優良機関を認定するなど、制度改善がなされています。

なお、監理団体については、厚生労働省職業安定局運営の「人材サービス総合サイト」で検索することが可能です。以下の手順で検索できます。

厚生労働省職業安定局運営「人材サービス総合サイト」

(1)「職業紹介事業(許可・届出事業所の検索)」をクリック
(2)有料職業紹介事業、無料職業紹介事業のチェックボックスをクリック
(3)都道府県を選択
(4)取扱職種に「技能実習」と入力、検索

●宗教上の習慣や制約

実習生の入国前に、宗教上の習慣や制約の有無の確認が必要です。日本の生活習慣に慣れてもらいつつも、宗教上の習慣や制約は尊重しなくてはいけません。例えば、イスラム教徒は豚肉に触れられないといった、特定の行動が困難なケースがあります。

●その他

実習実施者が、技能実習法や労働に関する法律に違反した場合、技能実習計画の認定は取り消され、技能実習生の受け入れを継続できなくなります。また、取り消しから5年間は、新たに技能実習計画の認定を受けられません。

技能実習制度の課題

コロナ禍で強制帰国も

前述のとおり、技能実習制度はこれまで、さまざまな問題が指摘されてきました。

例えば、技能実習生を「安価な労働力」としてのみ扱い、人権侵害ともいえる劣悪な待遇を強いた結果、実習生が失踪するケースがあります。技能実習生の失踪は年々増えており、出入国在留管理庁によると、19年の技能実習生の失踪者数は8,796人にのぼりました。

あるいは、実習生の意志に反しての強制帰国です。なんらかのトラブルが職場で生じていたとしても、実習生がはたらき続ける意志がある限り、別の企業を紹介するなどの措置を監理団体は行う必要があります。にもかかわらず、ずさんな対応をする監理団体により、帰国を強制されるケースが報じられました。

また、新型コロナウイルスの影響により技能実習生の受け入れが一時ストップしたことで人材不足に苦しむ企業がある一方で、業績悪化に伴い、技能実習生の突然の解雇も相次いでいます。

ただし外国人技能実習制度を正しく活用している優良事例も報告されています。そこでは、日本語の習得環境を整備する、地域住民との交流を促す、日本人の正社員と同等の人事・昇給制度、個室を用意し快適な生活環境を整えるなど、日本人従業員と変わらない配慮がなされています。

技能実習生の受け入れで社内に活力を

外国人技能実習制度は、日本の技術または知識の開発途上国等へ移転を図り、現地の「人づくり」に協力するものです。日本で技能実習生を受け入れる企業にも、大きなメリットがあります。母国を離れて日本ではたらきたいと願う意欲を持った若者は、既存の従業員たちにとって大きな刺激になることでしょう。また結果的に、彼らは中小企業を活性化してくれる貴重な戦力になります。制度をしっかりと理解し、優秀な外国人材に日本の優れた技術・技能を確実に伝授しましょう。

インタビュー・監修

下川原 篤史

下川原 篤史(しもがわら・あつし)

社会保険労務士・行政書士下川原事務所代表、特定社会保険労務士、申請取次行政書士。技能実習生監理団体で14年間技能実習生受入れ業務に従事した後、2005年に独立開業。労働・社会保険関係法令、出入国管理法令および技能実習法令の知識を活かした外国人雇用の実務とコンサルティングを得意とする。就業規則その他規程の作成・改訂、労務相談のほか、外国人の在留資格諸申請、技能実習法に基づく監理団体の外部監査人、法的保護講習講師。主著に『企業における労務監査の手引』(共著・新日本法規出版)ほか