キーワードは「デジタル化」! 経理のテレワーク対応の進め方

 

2021.04.14

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テレワークとの相性は良いといわれる事務職。しかし、「そんなことはない……」と感じている経理担当者は多いのでは? 帳票や請求書、持ち出し禁止の書類の扱いや、いわゆるハンコの問題など、テレワークでの経理業務を難しくする要因について、解決のポイントや対策を解説します。

目次

「経理のテレワークは無理」と言われる理由

新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、地域差、業種差はありますが、多くの企業がテレワークを導入しました。不定期を含め、テレワークに取り組んだ企業は、全国平均で3割近くに達しています。

その一方で、残念な結果も。株式会社マネーフォワードのグループ会社、MF KESSAI株式会社が、会社役員及び経理財務・会計担当者1,000名を対象に行った調査では、4月7日の緊急事態宣言後も、約50%はテレワークを実施できず、月1回以上の出社予定者も合わせると、実に83%もの人が出社していたことがわかりました。

テレワークの実施状況

 

【出典】MF KESSAI株式会社「経理財務・会計担当者のテレワークの対応状況」に関する調査

上記調査の調査期間は4月7日〜21日で、3月期決算の企業の場合、年間で一番忙しい時期であることも結果に影響したと考えられます。実際、出社が必要な理由の回答として、最も多かったのは「決算対応」でした。

しかし、「取引先への振り込み」「請求書の作成、押印、発送」「その他入出金確認」など日々の業務への対応を理由に挙げた人も 4割を超えており、決算だけが出社の理由ではなかったことが分かります。また、「契約書類の押印・発送」を出社が必要な要因として挙げた人も3割を超えています。紙書類への対応が、テレワークを阻んだ大きな要因であったといえます。

テレワークができない要因

 

【出典】MF KESSAI株式会社「経理財務・会計担当者のテレワークの対応状況」に関する調査

東京都が行ったテレワーク導入実態調査によれば、テレワークを経験した結果、定着・拡大に必要と感じたこととして、「ペーパーレス、はんこレスなどの決裁の社内手続きの簡素化」が1位となりました。

契約書、請求書、領収書などの紙書類の処理が常に経理業務にはつきまといます。また、根強い押印文化も、テレワーク実施を難しくしています。感染拡大を止めるためにはテレワークが望ましいと分かっていても、結果的に、会社に常駐してしまいがちに……というのが、経理担当者の実情ではないでしょうか。

テレワークの定着・拡大のために必要なこと

 

【出典】「東京都 テレワーク導入実態調査」

テレワークを困難にする、主な経理業務3つ

 経理のテレワークを阻む大きな要因は、以下の3点といえます。

(1)紙の書類、ハンコ、現金などへの対応
(2)個人情報、機密情報の取り扱い
(3)電話やFAXなどの対応

それぞれについて解説します。

(1)紙の書類、ハンコ、現金などへの対応

契約書類、請求書や納品書のやりとり、経費の領収書と精算に伴う現金出金……。こうした紙の書類の処理、決済や契約のための押印、現金での精算業務などは、テレワークではできない仕事です。紙の書類が関係した業務が主だと、おのずと出社が前提のワークスタイルになってしまいます。

(2)個人情報、機密情報の取り扱い

経理業務で扱う社員の個人情報、自社や取引先の機密情報などは、セキュリティやコンプライアンスの面から、社外への持ち出しを禁じられていることがほとんどです。また、経理担当者にとっても、自宅にこれらの情報を持ち帰ることはリスクが高い行為であり、不安を感じることでしょう。

(3)電話やFAXなどの対応

社外とのやりとりは、主に電話やFAXであるという会社もまだまだ多いはず。やりとりをメールなどに切り替えてもらうことができればテレワークはしやすくなりますが、業種や取引先によってはすぐの対応が難しいこともあります。

電話の場合、テレワーク時に電話をかける際には自宅の電話や個人のスマートフォンを使うことになり、個人情報の観点からも望ましくありません。結果、出社した方が良いという状況に陥りがちです。

総務のテレワークお悩み解決! 鍵はデジタルツール

では、経理担当者のテレワーク実施はやはり難しいのでしょうか?

従来通りのアナログな体制・環境で経理業務を行う場合には、これまで見てきたような問題を避けて通ることはできません。しかし、さまざまなデジタルツールを活用することで、これらの課題の多くは解消できるようになってきています。

ただし、会計ソフトなどをすでに使っていても、それが経理用パソコンへインストールするソフトウェアで、出社しないと仕事ができないのであれば、テレワークの推進にはつながりません。ポイントは、どこにいても業務が可能な「クラウド型」のツールを使ってのデジタル化です。

クラウド型デジタルツールの上手な活用は、経理業務の効率化につながることも。ここでは、業務ごとに使えるデジタルツールを紹介します。

1. 日次業務

伝票の整理・記帳

紙の書類はスキャンニングなどでデジタル化しましょう。デジタル化と合わせて、記載情報をAIが自動で読み取るツールなどを使えば、記帳などの入力作業も軽減できます。データはクラウド上に保存しておくと、部署内、社内での情報共有も簡単です。

そもそも、紙書類の扱いを極力やめるということも重要です。社外の協力や理解を得ながら、書類は原則としてPDFなどのデジタルデータでやり取りすることにするなど、ペーパーレス化を進めましょう。日々集まってくる情報が都度データ化されることは、月次や年次の業務負担も軽減にも結びつきます。

経費の精算業務

経費精算のデジタル処理については、クラウドを使ったさまざまなサービスが登場しています。クラウド上から申請、不備があった場合の差し戻しや訂正ができるほか、電子印鑑を設定できるなど、サービスごとに機能はさまざまです。社内の申請・承認フローに即したものを選びましょう。

これらを利用することで、経理担当者だけでなく、申請者の出社も減らすことができます。

電話・FAXへの対応

フリーアドレス制を採用していない会社では、代表番号への電話をそれぞれのデスクで取り、保留して他部署などに回せるようにしていることがほとんどですが、個人のスマートフォンを利用して電話を回すことができるツールが登場しています。はたらく場所に関係なく会社の番号が使えるツールもあるので、テレワークでも出社時と変わらない電話対応ができます。

FAXも、近年はデジタルFAX/インターネットFAXとしてデジタルデータで送受信することが可能になっています。出社せずにFAXのやり取りができるのに加え、受け取ったPDFをクラウドに蓄積しておくなどの機能もあり、情報の取りまとめや共有という点でもメリットがあります。

2. 月次業務

取引先への請求・回収

請求書発行から入金確認までの一連の流れを、ワンストップで完結させることができるクラウド型会計ソフトが登場しています。デジタルデータによるやり取りで、郵送されてくる書類をチェックするための出社を減らすことができます。データ化、帳簿への転記などの効率化も図れます。

多くのソフトには権限管理機能がついており、閲覧できる情報や操作できる機能を人によって分けることもできます。経理担当者が複数人いる場合には、実際の運用を想定して比較し、必要な機能の備わったツールを選ぶと良いでしょう。

電子データでの請求書などのやり取りには、不安を感じる人もいると思います。この点で確認しておきたいのが、2020年の税制改正での電子帳簿等保存制度の見直しです。

改正以前は、データで請求書などを受領する際、受領者がすみやかにタイムスタンプを付与するか、事前に作成した改ざん防止などのための処理規程で運用する必要がありました。しかし、2020年10月1日以降はその要件が変更となり選択肢が増え、デジタルデータでの書類のやり取りがさらに行いやすくなりました。こうした情報も加味しながら運用ルールを決めていくことで、安心して請求・回収業務を行うことができます。

2020年10月からの税制改正について解説

 

【出典】財務省「令和2年度税制改正 5納税環境整備」

給料の支払い、取引先への支払業務、納税手続き

企業でも、各種支払いはインターネットバンキングから行うことができます。こうした業務も処理できるクラウド型会計ソフトがあります。

税金についてもインターネットバンキングでの電子納税が可能です。国税はe-Tax、地方税はeLTAXというシステムを利用して納付情報を確認し、ペイジーで手続きを行うことになります。税務署や金融機関へ足を運んだり、長時間順番を待ったりする必要がないので、ぜひ活用しましょう

3. 年次業務

決算、税務申告

2020年3月期、多くの企業が決算発表を延期しました。規模の大きな企業ほど受けた影響は大きく、その一因としてテレワークに伴う決算業務の遅延が挙げられました。

しかし一方では、テレワーク環境下でも、経理業務の自動化によって例年通りに決算を発表した企業もありました。

業務の棚卸作業など実査が必要な場合もあり、すべての業種・企業がすぐにテレワークで決算作業を完結できるわけではありません。ただし、前述のとおり、クラウド型会計ソフトを活用し、リモートで業務を遂行できる体制を整えておくことで、かなりの作業をテレワークでも進めることができると考えられます。

ツールの導入にあたっては、顧問税理士側のシステムとの連携なども考える必要があります。相談の上、ソフトやサービスの選定、導入を進めると良いでしょう。

会計監査対応

会計監査は監査法人の来社が必要になることもあり、テレワークのみで進めるのが難しい場合もあります。Web会議ツールやグループウェアなどのコミュニケーションツールで基本的なやりとりを行い、出社を行う業務は出社日に取りまとめるなどして、柔軟な対応をしながら効率よく進めると良いでしょう。

なお、テレワークを継続して行っていく場合、テレワークを前提にした内部統制システムの整備・運用が必要になります。これについては、公認会計士や監査法人と相談の上、体制構築を図ることが必要です。こちらも、各種コミュニケーションツールの活用で、テレワーク下でも打ち合わせなどを進めていくことができるでしょう。

決算短信や有価証券報告書などの開示資料作成

開示資料の作成には、他部署との連携が欠かせません。しかし、互いにテレワークという状況下で、データや情報の共有、資料に記載する文章の依頼、取りまとめなど、数々の作業を進めるのは、なかなか大変なことです。特に決算短信は決算後45日以内に開示しなくてはいけないため、時間との勝負になります。

経理も含めた社内のさまざまな情報をデータとして共有、閲覧できる体制が整っていれば、リモートでのやり取りもスムーズになります。グループウェアなどのコミュニケーションツールも役立つでしょう。

ツール導入の前に必ず行いたい。社内外の業務ルールづくり

多機能、高機能なツールを導入しても、それが実務の動きとかけ離れていては、導入の効果は見込めません。このため、ツール導入にあたっては、テレワークを前提とした業務ルールづくりが必須になります。

業務は、社外に関すること、社内に関することの2つに分けられます。社外に関してまず決めておきたいのは、請求書の発行と支払いに関するルールです。「請求書の形式」「送付・受領方法」「押印の有無」「支払方法、その処理」などを互いに決め、自社内、また取引先社内で周知してもらいましょう。社内に関する経理業務では、「経費精算の申請や支払い方法」「各種書類の提出方法」などのルール化から始めましょう。

経理業務は、日次業務から年次業務・決算までが地続きです。年間の動きを洗い出し、ルールを明確化してからツールを導入することが、デジタル化でパフォーマンスを上げる秘訣です。

業務効率化のためにも経理のテレワーク対応を進めよう

経理業務は紙とハンコによるアナログな処理が多いというイメージがありますが、さまざまなデジタルツールの登場で、テレワークのしやすさは増してきています。

日々の経理業務のデジタル化は、経理担当者のテレワーク実現のみならず、経営状況の迅速な可視化にも役立ちます。経営・業務改善の視点からも、デジタルツールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。