女性活躍推進法とは? 公布された背景や企業の義務、成功事例を解説

 

2021.04.07

  • 働き方改革
  • 経営戦略
  • 人事・総務
  • ダイバーシティ

女性活躍推進法とは、企業が雇用している、または将来雇用する女性の活躍を推進する法律です。2016年にスタートし、2019年6月に改正されました。女性活躍推進法が定められた背景や、企業に課せられる義務、改正法の詳細についてやさしく解説します。

目次

女性活躍推進法とは

法改正を経てより広い企業が対象に

女性活躍推進法は、正式名称を「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。その名のとおり、企業において女性が活躍しやすい環境をつくることを目的とした法律です。

女性活躍推進法が施行されたのは2016年4月。2019年6月には改正法が施行されました。なお、この法律は10年間の時限立法となっています。女性活躍推進法の内容は、厚生労働省によると、国・地方公共団体や一定規模以上の企業は(1)女性の活躍に関する状況把握・課題分析、(2)その課題を解決するのにふさわしい数値目標と取り組みを盛り込んだ行動計画の策定・届出・周知・公表、(3)女性の活躍に関する情報の公表の3つを義務として行わなければならない、というものです。

改正法により変更されたのは、対象となる事業主の規模です。当初、女性活躍推進法が義務付けられたのは「国・地方公共団体・常時雇用する労働者が301人以上の民間事業者」であり、従業員300人以下の中小企業については努力義務とされました。改正法ではこれを「国・地方公共団体・常時雇用する労働者が101人以上の民間事業主」を対象とするよう変更、より幅広い事業主に義務化したのです(施行は2022年4月1日)。

女性活躍法推進の背景

男女が等しくはたらきやすい社会をつくるために

女性活躍推進法が成立した背景には、日本における女性の地位向上の遅れがあります。

それは、世界経済フォーラムが発表している「ジェンダーギャップ指数2020」をみても明らかです。ジェンダーギャップ指数は、経済分野・教育分野・保健分野・政治分野の4分野における男女格差をはかるもの。日本は153カ国中121位と過去最低の順位を記録し、主要7カ国中でも最下位でした。分野別に見ても、経済分野(115位)、政治分野(144位)におけるジェンダー格差が目立ちます。

ジェンダーギャップ指数(2020年) 上位および主要7か国の順位

 

【出典】世界経済フォーラム「ジェンダーギャップ指数2020」※スコアの数字は、0が完全不平等、1が完全平等を意味している。つまり1に近いほど男女平等に近づく

また日本の男女協働参画推進本部は「2020年までに指導的地位に女性が占める割合を30%にする」との目標を設定していましたが、2021年現在、目標には遠く及びません。そのほか、女性の非正規雇用の割合が多いこと、出産・育児期の就業率が低下することなども、データで示されています。

各分野における「指導的地位」にある女性の割合

 

【出典】内閣府・男女協働参画推進連携会議「ひとりひとりが幸せな社会のために」より抜粋

非正規雇用比率の割合

 

【出典】内閣府・男女協働参画推進連携会議「ひとりひとりが幸せな社会のために」より抜粋

日本はこれまで、1986年の男女雇用機会均等法、1991年の育児休業法、2003年の次世代育成支援対策推進法など、女性の活躍を後押しする法律を整備してきました。前安倍内閣でも「すべての女性が輝く社会づくり」が推進され、「女性活躍加速のための重点方針2020」として、「あらゆる分野における女性の活躍」「女性活躍のための基盤整理」などが掲げられました。

しかし前述のとおり、女性がはたらく環境づくりは道半ばです。少子高齢化を背景に、今後も労働者人口が減少することを踏まえれば、女性の労働参加は国の将来のためにも欠かせないこと。こうして2016年、男女雇用機会均等法が施行されてから30年となる節目の年に、女性活躍推進法が制定されたというわけです。

女性活躍法推進が定める義務

大きく3つの義務がある

2016年に施行された女性活躍推進法では、大きく3つの内容が従業員301人以上の大企業に義務付けられ、従業員300人以下の中小企業には努力義務とされました。

(1)自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析
(2)状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表
(3)女性の活躍に関する情報公表

それぞれ具体的に見ていきましょう。

企業に課せられた3つの義務

 

【出典】「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律の概要」より抜粋

自社の女性の活躍に関する状況把握・課題分析

各種の項目にしたがい、女性の活躍に関する状況を把握し、自社の課題を分析します。なお、以下の4項目は必須とされます。

・女性採用比率(男性が優位になっていないか)
・勤続年数男女比(勤続年数に女性比率が反比例していないか)
・労働時間の状況(必要以上に長時間労働が行われていないか)
・女性管理職比率(女性比率が圧倒的に少なくなっていないか)

状況把握・課題分析を踏まえた行動計画の策定・届出・公表

状況把握・課題分析の結果を踏まえて、事業主は女性の活躍を推進するための「一般事業主行動計画」を策定・届出・公表します。この行動計画には「計画期間」「数値目標」「取組内容」「取組の実施期間」を盛り込みます。

なお、行動計画の策定・届出を行った企業のうち、女性の活躍推進に関する取り組みの実施状況などが優良な企業は、都道府県労働局への申請により、厚生労働大臣の認定を受けることができます。

認定を受けるには、「採用」「継続就業」「労働時間等の働き方」「管理職比率」の5項目において、一定の基準を満たす必要があります。認定を受けた企業は、厚生労働大臣が定める認定マーク「えるぼし」を商品などに印刷することが可能に。「えるぼし」はいわば「女性活躍が進んでいる企業」の証です。企業イメージの向上や、優秀な人材の確保などに役立てることができます。

女性の活躍に関する情報公表

策定した行動計画を実施した結果、得られた成果を公表します。具体的には、厚生労働省が運営する『女性の活躍推進企業データベース』や自社のホームページへ掲載します。

女性活躍法推進法の改正内容

より幅広い事業者に義務付け

2019年5月、女性活躍推進法等の一部を改正する法律が成立し、同年6月に公布されました。改正内容は以下の3点です。最も注意すべき点は、従来は義務付けられた企業規模は「常時雇用する労働者301人以上」であったのが、「101人以上」へと拡大した点だといえるでしょう。

(1)一般事業主行動計画策定義務の対象拡大
(2022年4月1日施行)

一般事業主行動計画の策定・届出義務及び自社の女性活躍に関する情報公表の義務の対象が、「常時雇用する労働者が301人以上の事業主」から「常時雇用する労働者が101人以上の事業主」へと拡大されます。

一般事業主行動計画の数値目標設定の仕方が変更
(2020円4月1日施行)

常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、2020年4月1日以降に一般事業主行動計画を策定する場合、
●女性労働者に対する職業生活に関する機会の提供(採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女別の採用における競争倍率など)
●職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備(男女の平均継続勤務年数の差異、男女別の育児休業取得率など)
の各区分からそれぞれ1項目以上を選択し、関連する数値目標を定める必要があります。

(2)女性活躍に関する情報公表の強化
(2020年6月1日施行)

常時雇用する労働者が301人以上の事業主は、情報公表項目について、
●職業生活に関する機会の提供に関する実績(採用した労働者に占める女性労働者の割合、男女別の採用における競争倍率など)
●職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績(男女の平均継続勤務年数の差異、男女別の育児休業取得率など)
の各区分から1項目以上、合計2項目以上を公表する必要があります。

(3)特例認定制度(プラチナえるぼし)の創設
(2020年6月1日施行)

女性の活躍推進に関する状況等が優良な事業主の方への認定(えるぼし認定)よりも水準の高い「プラチナえるぼし」認定を創設します。「プラチナえるぼし」に認定された事業主は、一般事業主行動計画の策定・届出が免除されます。

【出典】厚生労働省「女性活躍推進法特集ページ(えるぼし認定・プラチナえるぼし認定)」

対応した企業の成功事例

日本電算株式会社
女性の採用増・定着を目指してホームページを最大限に活用

東京都品川区に本拠地を構え、通信制御を中心としたシステム開発などを行う日本電算。女性の応募者が少なく、女性技術者が定着しないことが課題でした。目標を女性採用人数5人以上、採用者に占める女性の割合20%以上として、女性活躍推進のための取り組みを始めました。

女性の求職者に長くはたらける環境と思ってもらえるよう、子育て中の時短勤務は法が定めるよりも3年長く適用できるようにし、結婚・育児などのライフイベントがあっても女性がはたらき続けることができる職場づくりを進めました。

なおかつ、最大限にホームページを活用し、女性がはたらきやすい環境をアピールしました。女性エンジニアの活躍を目指す会社の姿勢を強い「こだわり」として宣言し、女性を意識したデザインにしてアクセスしやすいホームページづくりをしたところ、採用応募エントリー数が大幅にアップしたそうです。

総合埠頭株式会社
女性管理職の増加を目指し行政支援をフル活用

愛知県豊橋市にある、港湾運送・通関業などを行う総合埠頭。新社長の「これからは女性だ」という掛け声のもと、運送業には少ない女性管理職を増やすための取り組みを始めました。運送業は男性が多いイメージですが、実は女性管理職が少ない以外、あまり男女差はないそうです。

従来は社内で女性が管理職を目指すような雰囲気はありませんでした。しかし人事評価制度を見直し部署の目標に沿った「目標シート」を導入、女性管理職養成のための社外セミナーに参加させ、リーダーシップに必要な知識を習得してもらいました。

中小企業では、自前で研修を行って女性管理職を育てるのは難しい現状があります。そこで、国や自治体で開催されている研修などを活用し、経費をあまりかけずに女性管理職育成に努めました。現在は係長の女性割合は42.9%と、行動計画目標を達成した上、管理職を目指してはたらく女性が増えているそうです。

【出典】両社とも厚生労働省「中小企業における女性活躍推進の取組のための好事例集および改善取組事例集」より

女性の活躍で経営課題を解決

女性活躍推進法には罰則規定がありません。しかし、女性がはたらきやすい環境を整えることは、優秀な人材の獲得、従業員の定着率、企業のブランディングなど、企業が抱えるさまざまな経営課題の解決に寄与するもの。女性活躍推進法は、女性従業員のみならず、男性従業員や事業主にとっても良い影響をもたらします。組織体制を見直すきっかけとするためにも、女性活躍推進法の理解に努めましょう。