著しい経済成長が続くベトナム
進出にあたり、企業がおさえるべき人事・労務のポイント

 

2021.03.10

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近年、日本企業の進出先として人気が高まっているベトナムですが、何の準備もなく現地の人材を採用するのはリスクを伴います。そこでこの記事では、ベトナムで事業を成功させるために知っておきたい人事・労務関係のポイントをご紹介します。

目次

ベトナムへの日系企業の進出状況

以下の図のように、ベトナムに進出する日系企業の数は2008年の950社から2017年は1816社と、約1.9倍に増えています。中国がほぼ横ばいの一方、インドやタイ、インドネシアとともに右肩上がりで伸びており、ベトナム市場への期待の高さが窺えます。

日系企業の拠点数の推移(上位12か国)

 

【出典】外務省「海外在留邦人数調査統計」(平成30年要約版)より作成

進出先としてのベトナム、4つの魅力

ではなぜ今、日系企業の進出先としてベトナムが選ばれているのでしょうか。その理由は4つあります。

(1)若い労働力

ベトナムは国民の年齢の中央値が32.5歳で、日本の48.4歳に比べてかなり若く、国全体に活気があります(2020年予測値)。

人口構成比率でみても20代〜40代のはたらき盛りの世代が多く、人口も2050年ごろまでは増加し続けると予想されており、はたらき手としてはもちろん、消費者としても魅力的です。

ベトナムの人口ピラミッド(2019年)

 

【出典】United Nations「Department of Economic and Social Affairs, Population Division. World Population Prospects: The 2019 Revision. (Medium variant)」

(2)安い人件費

ベトナムの最低賃金は年に一度のペースで引き上げられています。近年は5〜7%ずつ上昇しており、ハノイやホーチミンなど都心部では約2万774円(月給)となっていますが、それでも日本に比べれば格段に安い賃金で、人件費を抑えることができます。

(3)カントリー・リスクの低さ

ベトナムは社会主義国ですが、1986年の「ドイモイ政策」以降、経済では資本主義の思考を取り入れています。外資の力を生かそうと市場も積極的に開かれています。また、共産党の一党支配体制のもと政情・治安が安定しており、クーデターなどのリスクが低いことも進出する上での好材料です。

(4)コロナ禍でも続くプラス成長

ベトナムでの新型コロナウイルスの感染者は1433人、死亡者は35人となっており、現状では封じ込めに成功しているといえます(2020年12月25日時点)。

その結果、ロックダウンなどが実施された国と比べて経済への打撃が小さいとされており、世界銀行では2020年の世界経済の成長率をマイナス5.2%とする一方、ベトナムはプラス2.8%と予測。2021年には6.8%の成長率になるとしています。この数値はコロナ以前の成長率7%とほぼ同水準で、かなり早い段階でコロナショックから回復することが予想されています。

また「チャイナプラスワン」や米中貿易摩擦に伴うリスク分散の観点から、ベトナムへの生産拠点の移管が加速。さらに2020年に「EU・ベトナム貿易協定(EVFTA)」が発効されたことが、輸出拡大に寄与しています。こうした点も経済成長につながると期待されており、移管先・進出先として日本企業がベトナムに目を向ける意義は大きいと考えています。

日本と似ている?進出前に知っておきたいベトナムのはたらく人々、はたらく環境

はたらき方やはたらく環境について、日本との違いを挙げてみましょう。

(1)一緒にはたらきやすい

ベトナムの人々は日本人と近い性質を持った人が多く、日系企業でも馴染みやすいといえます。

<ベトナム人の特徴>
・フレンドリーでオープン
・勤勉で真面目
・日本に好感を持っている(親日家が多い)
・イベント好き
・手先が器用
・家族を大切にする

(2)ホウレンソウが浸透していない

日本では「ホウレンソウ(報告・連絡・相談)」は仕事の基本です。しかしベトナムでは、ホウレンソウという概念そのものがなく、また、管理業務が苦手な人が多い印象です。

たとえば、依頼した仕事の内容が忘れられたり、期限に遅れたりすることも珍しくありません。こうしたトラブルを未然に防ぐには、指示をする際に内容や期限を細かく指定し、進捗をしっかりと管理することが有効です。

(3)プライドが高い

ベトナム人はプライドが高く、人前で怒られることを嫌います。簡単な注意レベルであっても、個室によんで話をするといった配慮が必要です。

(4)20代で数度の転職は当たり前

ベトナムの離職率は3年連続で上昇しており、ある調査では24%にものぼるという結果が出ています。また、給与を上げるための手段として転職を選ぶ人が多く、20代のうちに転職を複数回している人もみられます。転職を防ぐ施策は必要ですが、若手の場合はある程度、許容せざるをえないでしょう。

(5)国のルールが不明確

労働関連の法律・制度は日本と似ています。しかし、運用上では大きな違いがあります。たとえば、日本では法律が制定・改正された場合、細則を定めた施行規則などが早期に公表されますが、ベトナムでは1年程度かかることも珍しくありません。その間は企業がそれぞれ独自に法律を解釈し、適用、実施していかなくてはなりません。

(6)残業時間の規制が厳しい

ベトナムでは企業は原則として労働者を1日8時間、1週間48時間を超えてはたらかせることを禁止しています。残業の上限は月40時間、年間200時間(特別な場合、最大300時間)です。日本と比べてかなり上限が低いため、特に製造ラインを長時間フル稼働させたい製造業にとっては、注意が必要です。

郷に入っては郷に従う ー優秀な人材を採用するにはベトナムの制度・ルールや状況に合わせた対応が必要

優秀なベトナム人材を採用できるかどうかが、ベトナムでの事業の成功を大きく左右します。進出する際は日本との違いを踏まえて、次のような対策を考えておきましょう。

日本語要件を緩和する

ビジネス会話レベルの日本語力を求めた上で、さらに「特定の機械を使える」などと「日本語+専門性」を要件にすると、採用はかなり厳しくなります。このような場合、要件を日本語から英語にするだけで、採用の難易度を大きく下げられます。

給与水準を外資系企業並みの水準に引き上げる

欧米や韓国の外資系企業は給与水準が高く、管理職クラスやハイレベル層の給与は青天井のこともあります。一方、日系企業は、給与額が低い、上限を設けているなど見劣りすることは否めず、人材採用競争では不利になりがちです。外資系企業と同程度の給与水準にすることを検討してみてください。

福利厚生の充実

経済成長が続いているとはいえ、ベトナムは日本や欧米、韓国と比べ、まだまだ豊かとはいえない状況です。そのため、就職先として福利厚生が充実している企業が選ばれる傾向にあります。

たとえば、民間保険への加入は福利厚生の一つとして、よく取り入れられています。本人だけでなく家族も加入できるなどプラスアルファの補償があると、さらに喜ばれます。また、前述の通り、イベントが好きという国民性から社員旅行や忘年会、誕生日会があるかどうかを重視している人も多いようです。ぜひ取り入れてみてください。

時間に厳しくしすぎない

ベトナムでは日本に比べて時間にルーズな傾向があり、遅刻も少なくありません。また、交通渋滞が日常化しているというベトナム固有の事情もあります。このため、出社時間に幅を持たせる、30分以内の遅刻であれば注意しないなど、柔軟なルールを設けておくといいでしょう。

ベトナム人をキーポジションに置く

日系企業だからといって、上司がすべて日本人というのは歓迎されません。現地で採用した優秀な人材をマネジャーやリーダーなど重要なポジションに配置しましょう。気心の知れたベトナム人同士でマネジメントやコミュニケーションを図るだけでなく、経営側と従業員の間を取り持ってくれるなど、人材の流出を防ぐと同時に、ベトナム人従業員の良いロールモデルにもなってくれると思います。

ベトナム人のモチベーションを高めるマネジメントのコツ

長く会社で活躍してもらうためには、制度やルールを整えるだけでなく、コミュニケーションやマネジメントにも配慮が必要です。パーソル総合研究所が行ったアジア太平洋地域の国・地域の意識調査の中から、ベトナム人が上司との関係で重視することとして挙げた3つの要素をご紹介します。

(1)良い仕事に対してはみんなの前で称賛する

先述したようにベトナム人は人前で怒られることを嫌います。他方で、人前で褒められることを誇りに感じます。ベトナム人の部下が良い仕事をした際には、積極的に人前で褒めるようにするとモチベーションアップにつながります。

(2)スキルや能力が身に付く仕事やポジションを任せる

ベトナム人はキャリアアップ志向が強く、スキルアップできる仕事や環境を選ぶ傾向にあります。そこで、特に30代以上で成長意欲がある、管理職クラスの従業員に責任ある仕事を任せることが、人材流出の防止に効果的です。また、評価や昇給についても日本の制度をそのまま適用するのではなく、現地に合わせて変更します。

(3)会社の目標を共有する

目上の人には敬意を持って接し、与えられたミッションには真面目に向き合い、実行する人が多いです。そのため、会社としての目標や方向性をしっかりと共有し、どんな仕事をしてほしいのか期待を伝えておくことで、従業員の意欲が高まり、積極的に仕事に取り組んでくれるようになります。

とある日系企業さまが取り組まれたモチベーション向上施策に関するエピソードをご紹介します。

【課題】
事業の急成長に伴い、従業員が増加ことで従業員同士のコミュニケーションが希薄化。さらにコロナの影響で売上が落ち、「働くモチベーションが下がった」という若手社員の退職が続いた。

【解決に向けた取り組み】
限られた予算内でモチベーションを向上させる施策を検討。「お金をかけない取り組み」「お金をかける取り組み」に分けて、濃淡をつけた施策を実施。

<お金をかけない取り組み>
・総務担当が全社員に「今月の誕生日メンバー」を通知
・有志のベトナム人リーダーによる悩み相談イベントの開催
・希望者で外部のランニングイベントに参加
・部署別のクリスマスデコレーションコンテストの実施

<お金をかける取り組み>
・ベトナム人リーダーの外部研修への参加

【結果】
ベトナム人が好むイベント要素が強い取り組みを行ったことで、若手社員のモチベーションがアップ。研修は学習意欲の高いベトナム人にマッチし、参加後はより積極的に仕事の提案をしてくれるようになった。また社内コミュニケーションが改善され、退職前に相談をしてもらえるようになった。研修は評判が良くほかの社員からも参加希望があったため、参加対象の拡大を検討している。

ベトナム進出を成功させるために ー人材・人事に関する課題解決をサポートします

海外で事業を行う場合、現地での採用がメインになります。しかし、優秀な人材を採用するには日本国内よりもハードルが高いという現状があります。

また、人材に能力を発揮してもらうには、制度やルールづくりはもちろんのこと、コミュニケーションやマネジメントも対日本人とは異なる場合があります。

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インタビュー・監修

品田 知美

品田 知美

パーソルベトナム ジャパンデスク シニアアドバイザー
2013年テンプスタッフ株式会社(現:パーソルテンプスタッフ株式会社入社)人材派遣サービスの法人営業を経て、2018年より ベトナム駐在開始。在ベトナム日系企業向けリクルートメントアドバイザー及び日本人求職者向けキャリアコンサルタント。